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転生した世界のため、チートな亜人嫁たちと悪神倒します  作者: 雪ノ町 リョウ
第十一章 青年期前半 鬼王編 〜義妹争奪戦と剣姫覚醒〜
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お礼はクッキーで


「フィア。私たちをうちに送ったあとのこと、話して」


 俺の隣に座っているクロネがテーブルを挟んで、向かい合っているフィアーナに言った。


 俺、フィアーナ、クロネ、ユキたち四人は、テーブルに座っている。

 セラは台所で、お菓子作りをしていて、ティリルは台所の入り口で、不安そうにその様子を見ている。


「うん。まずは王様のことね。

ライコウはクロネちゃんが倒したでしょ?」

「どうして知ってるの? 私が斬った後に来たのに」


 クロネがフィアーナに尋ねる。


「シュカさんとシロちゃんと戦ってる最中に、

クロネちゃんが戦ってる映像と気持ちが伝わってきたの。

直感で、クロネちゃんが眷属になったんだなって思ったの」

「そう」


 納得したみたい。

 フィアちゃんの直感ってあたるもんね?


「じゃあ、続きね。

ライコウはクロネちゃんに倒されて、

死んじゃったけど、あんまり影響はないんだって」

「どうしてですか?」


 クロネの隣に座っているユキがフィアーナに尋ねる。


「ライコウには、甥っ子がいるの。

その甥っ子が王座に就くらしいよ。

ライコウは鬼族の人たちに嫌われてたから、

死ななくても甥っ子が王座に就く予定だったらしいの。

だから、影響がないんだって」


 じゃあ、クロネちゃんは恨まれることはないのか。

 よかった。


「次はシュカさんたち四天姫の四人のことね。

彼女たちは魔術で洗脳されてたらしいの。

セラちゃんがライコウの妻にならないと、

鬼族の未来はないって」

「だから、シュカはあんな姑息な手段まで使ってきた」

「うん。

シュカさん、セイランちゃんはクロネちゃんに、

シロちゃんはユキちゃんに謝っておいてって言われたよ」


 やっぱりあの娘たちはいい娘なんだな。


「次は謝礼のことね。

謝礼には、鬼族の宝物をくれたの」

「宝物? それって神槍のこと?」

「うん。王家の人たちしか使えないから、

宝物庫に厳重に保管されてたの。

セラちゃんになら使えるかもしれないからって、

セラちゃんにくれたの」

「そうなんだ」

「まだ終わりじゃないよ、リョウちゃん。

ここからが大事なところだから」


 大事? あれか。神槍は幻想武具でしたってやつ?


「セラちゃんが神槍を受け取ったら、

神槍が光ったの。

その瞬間、槍の情報と槍と契約したことを頭の中で、女の人の声で言われたんだって」

「それって……?」

「うん。神槍は幻想武具『サクヤ』だったの」


 やっぱりそうだ。

 じゃあ、セラちゃんがサクヤの適合者ってことか。


「じゃあ、セラも戦わなきゃいけないの?」

「うん」

「そう」


 落ち込むフィアーナとクロネ。

 いやだよな。

 あんな可愛いセラちゃんを戦いに巻き込むなんて。


「だ、大丈夫ですよ。

『自然治癒』ですぐに治るんですから」


 ユキが二人をなぐさめの言葉をかける。


「『自然治癒』は体内の魔力を使うの。

だから、魔力が空っぽになったら、

発動しなくなっちゃうの」

「そうなんですか」


 ユキちゃんまで落ち込んじゃった。


「うん。でも、『自然治癒』を手に入れると同時に、

魔力量も増えるの。

私と同じくらいまでね。

だから、魔力が空っぽになるなんてことは、

めったに起きないから、

ユキちゃんの言うとおり大丈夫なんだよ」


 フィアーナがそう言うと、クロネとユキの表情が戻った。

 空っぽになることはめったにないか。

 俺と魔術の練習してたからかな?




「セラ。味見した?」

「してませんけど、大丈夫です」


 不穏な会話をしながら、ティリルとセラが台所から出てきた。

 二人は茶色いものを乗せた皿を持っている。

 多いな。三層くらい積み上がってる。


「はい。お兄ちゃん、姉様。

たくさん食べてくださいね」


 セラが俺とクロネの前に皿を置いて、笑顔で言ってくる。

 皿に乗っている茶色いものはクッキーだった。


「たくさんはやめといた方がいいよ」

「もう。大丈夫ですよ。

この間は初めてだったから、失敗しただけです。

今回はきっとおいしいです」


 セラがティリルに言う。

 聞き捨てならないんだけど。


「失敗したの?」


 クロネがセラに聞く。


「ちょっとだけ」

「あれがちょっとなの!?

あんなにおいしくなかったのに」

「そんなにおいしくないの?」


 ティリルの話を聞いて、クロネが不安そうに尋ねる。

 あんな言われたら、不安だよな。俺も不安だもん。


「うん。すっごいまーー」

「この間は見た目がまずダメだったんです。

今回は見た目は大丈夫なので、きっとおいしいですよ」


 ティリルの話をさえぎって、セラが必死に言ってくる。

 一回目ですっごいまずかったら、見た目よくても無理だと思うな。


「一回、食べてみてください」


 やだ。俺の顔を見て、すすめて来ないでよ。


「わ、分かった」


 皿のクッキーに手を伸ばし、一枚取って、口もとに持っていく。

 怖いよ。めっちゃ怖い。

 でも、セラちゃんが一生懸命作ってくれたクッキー。

 食べないと、お兄ちゃん失格だ。


「い、いただきます」


 覚悟を決めて、そう言って、クッキーを食べた。


 うっ! くそまずい。

 クッキーなのに甘いどころか、苦いし、辛い気もする。


「お兄ちゃん、どうですか?」

「お、おいしいかにゃ?」


 なんとか飲み込み、セラに答えた。

 あまりにもまずすぎて、声は震えてるし、かんでる。


「おいしいらしいですよ、姉様」


 やめて。俺のクロネたんに食べさせないで。


「う、うん」


 クロネはそう返事して、自分の前にある皿のクッキーに手を伸ばした。

 クロネたん、ダメ。

 まだ間に合うから、手を引っ込めて。


 俺の心の叫びは届かず、彼女はクッキーを一枚手に取り、口もとに持っていく。


「いただきます」


 そう言って、クロネはクッキーを食べた。


 サクッ。

 いい音がした瞬間、クロネがビクッと震えた。

 それと同時に、頭の上にある猫耳と腰から伸びた尻尾がピンッと上を向いた。


「姉様、どうですか?」

「お、おいしい気がする?」


 セラに涙目で答えるクロネ。


「泣いちゃうくらいおいしいんですね」


 セラちゃん、ポジティブだね。


「セラっ! 私も食べていいですかっ?」


 ユキが早く食べたいと言わんばかりに、セラに尋ねる。


「はい、どうぞ」

「やったっ」


 許しを得たユキはクロネの前にある皿から、クッキーを一枚取り、食べた。


「うっ。すごくまじゅいです」


 言っちゃった。


「おいしくないんですか!?」


 セラが驚いて、クッキーを取り、食べた。


「うっ。すごくまずい」

「ほら! だから、言ったんだよ。

お菓子作りはやめた方がいいって。

リョウタ、クロネ。もう食べなくていいかんね」

「そんなになの? うわぁ、すごいね」


 クッキーを食べたフィアーナがまずそうに言った。


「これは破棄するね」


 そう言って、皿を取ろうとするティリル。

 その瞬間、ユキが二枚の皿を手に取った。



「ユキ? 私の代わりに破棄してくれるんだ?」

「クロネ。ここ、開けてもらえますか?」


 ユキはティリルに答えず、ベランダの前に移動して、クロネに頼む。


「うん」


 クロネが開け放つと、ユキはベランダに出た。

 すると、水色の光がベランダから放たれた。

 どうした!?


 みんなでベランダをのぞくと、『竜化』したユキがいた。

 彼女は地面に置いた皿に顔を近づけていき、皿に乗ったクッキーを食べた。

 ドラゴンになっているから、一口で平らげてしまう。


『うぅっ。まじゅいぃ』


 泣きながら、そしゃくしていくユキ。


「ユキちゃん! 無理しなくていいから!」


 俺が言うと、彼女は首を横に振る。

 そして、もう一枚の皿に乗ったクッキーを食べた。


『うっ!』


 すべてのクッキーを飲み込んだユキは声を出し、もとの姿に戻った。


「おえっ」


 女の子の姿に戻ると、彼女はえづいて、吐いた。


「ユキ!」

「ユキちゃん!」

「ユキ!」

「ユキ!」

「ユキさん!」


 みんなでユキに駆け寄った。




 この日はユキの介抱をみんなでした。

 この日から、セラは料理禁止になった。




第十一章 青年期前半 鬼王編 ー終ー


次章 青年期前半 覚醒編

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