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転生した世界のため、チートな亜人嫁たちと悪神倒します  作者: 雪ノ町 リョウ
第十一章 青年期前半 鬼王編 〜義妹争奪戦と剣姫覚醒〜
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クロネ対ライコウ

前回に続き、三人称視点で描いています。



「まだ生きているのか。

息の根を止めたと思ったのだがな。

まぁいい。もう一度、刺し殺せばいい話だからな」

「ふざけないで!」


 クロネが声を荒げた。


「リョウタは私の旦那さんで、大切で、宝物なの!

貴方のわがままで、リョウタの命を奪わないで!」

「わがままではない。

セラは鬼族の未来のために必要だから、

そいつを殺してまで、手に入れようとしているんだぞ?」

「それは部下を動かすための嘘!

本当は、セラを抱きたいだけ!」


 そうクロネが言うと、ライコウは笑った。


「そうだ。

俺はエリーゼを手に入れられなかった代わりに、

エリーゼの娘ーーセラを手に入れたい、抱きたい」

「セラがだれにも恋してないんなら、構わない。

だけど、セラはリョウタの妻で、すごく幸せなの。

幸せを壊してまで、セラを手に入れたいの?」

「ああ。手に入れたい」


 クロネの質問に彼は即答した。


「セラの幸せを壊してまで、

彼女を手に入れようとするなんて、許せない。

なにより私のリョウタを殺そうとしたことが

一番許せない。

絶対、斬り殺す!」


 そう言い放つと、クロネは落ち着いていた青いオーラを出した。

 そして、地面を蹴り、ライコウとの距離を縮める。


 速すぎて、ほぼ一瞬で彼の目の前にたどり着いたクロネは突きを放った。


 ライコウがギリギリ太刀を盾にできたことで、彼女の突きは防がれてしまった。


 だが、突きが強すぎて、ライコウは平行移動するように、後方に吹き飛ばされた。




「闘技『弓ツバメ』」


 クロネが呟くと、青いオーラが二点に集まり、小鳥ーーツバメの形になった。

 二羽のツバメは矢のように飛んでいく。

 向かうは、ひざをつき、隙だらけのライコウの元。


「くっ!」


 ツバメたちが刺さり、ライコウが痛みに顔を歪める。

 


(これで終わり)


 彼の目の前まで来たクロネがそう心の中で呟き、ジャンプする。

 そして、上段に構えたツクヨミを振り下ろした。


 だが、ツクヨミの刃は届かなかった。

 ライコウに刀身を掴まれてしまったからだ。


「調子にのるなよ、小娘」


 そう言って、ライコウがツクヨミを掴んでいる腕を振り上げ、クロネを投げた。



 彼女は綺麗に着地して、攻撃を防げるようにツクヨミを構え、ライコウに目を向けた。

 

(なんか遠い気がする)


 クロネが振り向くと、後ろにはユキとリョウタがいた。


(ここまで、片手で投げ飛ばすなんて、

なんていう腕力なの……!?

一度でも拳か蹴りを受けたら、ひとたまりもない。

ちゃんと動きを見ておかないと)


 ライコウに目を向けなおすクロネ。

 すると、彼はふところから円柱形の容器を取り出していた。

 サプリメントが入っていそうな容器だ。


 ライコウはその容器のふたを親指で弾くように開けた。

 そして、顔を少し上に向けて、容器を口もとに持っていき、逆さにした。

 すると、容器の中から小さいカプセル剤がライコウの口に流れていく。


 流れきると、ライコウは口に含んだ大量のカプセル剤をそしゃくして、飲み込んだ。

 

 カプセル剤の効果で、彼の傷が癒えていく。


 傷が完全に癒えると、ライコウの体からゴキゴキという音が鳴り出した。

 痛みが走るのか、彼は顔を歪めている。


「うっ、ウガアアァーーッ!」


 音が激しくなっていき、痛みに耐えられなくなったのか、ライコウは叫んだ。

 すると、彼の体に変化が訪れた。

 



(百鬼……?)


 変化が終わったライコウの姿を見て、クロネが心の中で呟く。


 長い白髪、立派なツノ、鋭い歯、人間の二、三倍くらい太い腕や足、二メートル以上の背丈。

 クロネからすれば、今の彼は山奥に住む魔物ーー『百鬼』そのもの。

 彼の目は血走っているが。


『獣族の娘、覚悟しろ』


 そう言って、ライコウは地面を蹴り、クロネとの距離を一瞬で詰めた。

 そして、目の前にいる彼女に向かって、太刀を振り下ろした。


 ザシュッ!

 クロネがライコウの攻撃をかわして、彼のわきを横切りながら、彼の横腹を斬った。


 それを気にも止めず、ライコウが振り向きざまに、太刀を横薙ぎに振るう。

 クロネはかわそうと後ろに跳ぶが、太刀のほうが速く、あたりそうになる。


 キンッ!

 クロネはツクヨミでなんとか一閃を防ぐ。

 だが、彼女は足が地面に着いてないため、後方に吹き飛ばされてしまう。


 


 起き上がろうとするクロネのいる場所が突然、日陰になった。


 クロネが見上げると、目の前にライコウが立っていた。

 彼は太刀を上段に構え、振り下ろそうとしている。


(やられる……!)


「『加速』!」


 とっさにクロネは地面に突き立てたツクヨミに魔力を流し、ツクヨミの第一スキルを発動させた。


 すると、太刀を振り下ろす速度が格段に遅くなった。

 いや、本当はクロネがそう感じているだけだ。




「『光ツバメ』!』


 ひじを曲げ、胸の前に寄せた左腕に、クロネは青いオーラをまとわせ、ライコウの腕めがけ、振るった。


 すると、クロネの左腕から青い光の斬撃が放たれる。

 そして、ライコウの両手首を斬り裂き、太刀ごと宙に舞い上げた。


 それらが宙に舞い上がった瞬間、『加速』の効果が切れた。




『グガアアァーーッ!』


 両手首を斬り裂かれた痛みで、ライコウが叫ぶ。

 それを無視して、クロネはまたツクヨミに魔力を流す。


「海水よ。宙に舞うライコウの手を吹き飛ばして!

『水操作』!」


 彼女がそう叫ぶと、橋の左わきから海水がすごい勢いで、噴き上がる。

 そして、宙を舞うライコウの手と太刀を吹き飛ばし、海に落とした。


 クロネは海水が吹き飛ばすのを見ずに、後ろに跳び退き、ライコウとの距離を広げる。


『グラアアァーーッ!』

 

 ライコウは雄叫びを上げ、クロネに向かってくる。

 いや、突進してくる。


 クロネはそれを飛び越え、ライコウの背中を斬って、背後に着地した。


 着地してすぐに、クロネはツクヨミを腰だめに構え、刀身に青いオーラをまとわせる。


「奥義……」


 技の準備が整ったと同時に、ライコウが頭を上げた。


(今!)


「『光ツバメ』!」


 クロネはそう叫び、ツクヨミを振るう。

 刀身から青い光の斬撃が放たれ、振り向こうとしているライコウの首をはねた。


(すごい!

普通の『光ツバメ』よりもずっと速いし、横幅も広かった)


 首をはねられたライコウの頭は地面に落ち、頭を失った体は前に倒れた。

 

「倒せた」


 ライコウの首から血が溢れているのを見て、クロネが呟いた。




「クロネっ!」


 ユキが呼ぶ。

 クロネが振り返ると、彼女はリョウタに膝枕しながら、泣いていた。


「どうしたの?」


 クロネはすぐに駆け寄り、尋ねる。


「血が足りないんですっ。

このままじゃリョウタ様がっ」

「ユキ、落ち着いて。

治癒魔術じゃ血を元の状態にできないの?」

「できませんっ。

治癒魔術は怪我を治すだけなんですっ。

だから、リョウタ様はーー」

「血が足りないの?」


 だれかがユキの話をさえぎって、聞いてきた。

 二人がそっちに向くと、フィアーナがいた。


「うん。ライコウにたくさん刺されて……」

「そっか。大丈夫だよ、ユキちゃん。

私がリョウちゃんの血、元に戻すから」


 ユキの隣に移動したフィアーナはそう告げて、魔術で金属のナイフを作り出した。

 そして、そのナイフを握り、右の手のひらを切った。


 右の手のひらに一筋の傷ができ、血が出てくる。


「まだ治らないでね」


 そう言って、フィアーナはその手を握った。


「ユキちゃん。リョウちゃんの口、開けてくれる?」

「はいっ」


 そう返し、ユキはリョウタの口を開ける。

 開けられた口にフィアーナが自分の血を数滴落とす。


「よし。もう大丈夫だよ」


 リョウタののどが動いたのを見て、フィアーナは二人に言った。


「今ので、血が戻るの?」


 クロネがフィアーナに尋ねる。


「うん、そうだよ。

真祖の血は怪我の治癒と血の量を戻す効果があるからね」

「リョウタ、寝てるけど、どったの?」


 三人が声のしたほうに顔を向けると、ティリルがフィアーナとクロネの間からリョウタを見ていた。


「ライコウにたくさん刺されたんだって」

「死んでないよね!?」


 フィアーナの言葉に焦って、聞くティリル。


「大丈夫だよ。ユキちゃんが治癒したし、

血の量も戻したから」

「そっか。よかったー」

「それじゃあ、お姉ちゃん。

私は三人を家に送るから、ここでまってて」


 立ち上がったフィアーナがティリルに言った。


「うん」

「いいの?」


 クロネがフィアーナに尋ねる。


「いいよ。

クロネちゃんはリョウちゃんのそばにいてあげて。

あとのーー」

「あとのことは私たちがやっとくから」


 フィアーナの肩から顔を出したティリルが彼女の代わりに言った。


「わかった」


 クロネが返事すると、フィアーナはリョウタに近寄り、姫抱きした。


「二人とも捕まって」

「うん」

「はい」


 フィアーナに従い、クロネとユキが彼女の肩に手を置く。


「それじゃあ、待っててね」

「うん」


 ティリルがそう返すと、フィアーナは『瞬間転移(テレポート)』を発動させる。

 すると、フィアーナと彼女に触れている三人の姿が消えた。






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