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転生した世界のため、チートな亜人嫁たちと悪神倒します  作者: 雪ノ町 リョウ
第十一章 青年期前半 鬼王編 〜義妹争奪戦と剣姫覚醒〜
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クロネ、覚醒

この話は三人称視点で描いています。


「あっ、リョウタ」


 鬼ヶ島側に橋を渡ってくるリョウタに、橋の前に立っているクロネが気づいた。


「ほんとだ。リョウタ様ー」


 クロネの声で気づいたユキがリョウタに手を振る。

 クロネも彼女の真似をして、手を振る。


 リョウタは笑顔で手を振り返した。




 リョウタが橋の上を進んでいると、彼の背後にすごい速さでなにかが迫ってくる。


 そのなにかは体格のよい金髪の男ーーライコウで、彼は『鬼化』している。

 だが、セイランやシロとは違い、彼のツノは二本で、生え際の両端から生えている。


 ライコウはリョウタとの距離を詰めると、左腕に持った太刀を抜き放つと同時に、斜め上に振るった。


 ザシュッ!

 太刀がリョウタの背中を走り抜けたと同時に、彼の血が飛び散った。


「えっ!?」

「えっ!?」


 突然のことに驚き、声を出すクロネとユキ。

 少し離れているから、リョウタには聞こえない。




「鬼……?」


 痛みに耐えながら、振り返ったリョウタがライコウを見て、呟いた。

 彼には二本のツノ、サメのような鋭い歯、鋭い瞳以外が逆光で見えないため、ライコウを鬼としか判断できない。


「フンッ!」


 ライコウが引いた右腕を放ち、リョウタの左ほおを拳で撃ち抜いた。

 その衝撃が強すぎて、地面に倒れ込むリョウタ。


 追い討ちを仕掛けるように、ライコウが倒れたリョウタの横腹を蹴り、仰向けにさせる。

 そして、血のついた太刀をリョウタのお腹めがけ、突き下ろした。


 見事に太刀が彼のお腹に突き刺さったのを見ると、ライコウは太刀を引き抜いた。


 リョウタが着ているローブの太刀が刺さった部分は濡れている。

 ローブが黒色をしているから分かりにくいが、彼の血で濡れているのだろう。


 血で濡れたその部分に、ライコウがまた太刀を突き下ろす。

 リョウタのお腹に刺さると、また引き抜いた。


 ライコウはリョウタのお腹を突き刺していく。

 何度も、何度も。




「やめてっ。リョウタ様が死んじゃうっ」


 ユキが両手で口元をおおい、涙声で言う。


 この場には治癒魔術を使えるものは彼女しかいないというのに、彼女は動かない。

 いや、動いても意味がない。


 リョウタのすぐそばにはライコウがいる。

 きっと近づかせてもくれないし、仮に近づけたとしても邪魔をされるだろう。


 だから、ユキにはただリョウタが死んでいくのを見て、涙を流すしかできない。

 だが、クロネは別である。

 彼女は強い。

 鬼化しているライコウだって、きっと倒せるだろう。


 そのクロネはもうすでに駆け出している。

 二度目に太刀が引き抜かれたときから。

 



 意識が薄れ始めているリョウタが最後にクロネとユキの姿を収めようと、二人の方へ顔を向ける。


 二人の様子を確認すると、リョウタは走ってきているクロネに目線をやった。

 そして、彼女に手を伸ばす。

 無意識だから、リョウタは気づかない。


(ほんと理想の女の子だな、クロネは)


 リョウタが心の中で呟くと、彼のまぶたが落ち始めた。


「ダメッ! あと少しでいいから、起きてて!

お願いだから!」


 クロネが走りながら、リョウタに向かって、叫ぶ。

 クロネの願いは叶わず、彼のまぶたは落ちきり、そのまま動かなくなった。


「うそ……? 死んでしまったの……?」


 クロネが立ち止まって、だれかに尋ねるように呟く。


「やった。殺してやったぞ。

これで、セラは俺のものだ!」


 ライコウはそう言って、笑い出した。


「いやっ、イヤアアァーーッ!」


 動かなくなったリョウタとライコウの発言で、ユキが大きな声で悲鳴をあげた。




(リョウタが死んだ。

私のことを好きになって、愛してくれて、

クノハ(あの人)から守ろうとしてくれた

最愛のひとが殺された)


「許さない」


 クロネは怒りのこもった声色で言った。

 それと同時に、彼女の髪、猫耳、尻尾が黒から白に変わった。

 そして、青いオーラが現れ、彼女の体を包んだ。


「許さない! 絶対、斬り殺す!」


 そう言い放ち、クロネは再び駆け出した。

 言い放ったと同時に、彼女の愛刀ーーツクヨミのつばから刀身にかけて、青いエネルギーの鎖が現れた。

 だが、鎖はすぐに千切れて、消えた。


《幻想武具『ツクヨミ』の第二スキル『水系魔術』が

解放されました》


 走っているクロネの脳内で、女性の声が響く。


 クロネにとっては二度目である。

 一度目はツクヨミと契約したときだ。

 そのときは、契約したこととツクヨミのスキルについて、説明された。



「分かった」


 女性の声に返事するクロネ。

 彼女はキレているが、冷静でもあった。

 

(どんどん力がみなぎってくる。

今なら『光ツバメ』をいつもの半分くらいの力で、

放てる気がする)


 クロネはさやから抜いたツクヨミの刀身に魔力をまとわせていく。

 

(すごい。魔力をまだ半分しかまとわせてないのに、

『光ツバメ』を放つのに必要な魔力量になった)


 彼女は心の中でそう呟き、魔力を止めた。


「『光ツバメ』!」


 クロネはツクヨミを横薙ぎに振るった。

 すると、ツクヨミの刀身から光の斬撃が放たれた。


(ほんとうに、放てた。

いつもの魔力量と力で放ったら、どんな威力になるの?)


 光の斬撃がライコウに迫る。

 だが、ライコウにジャンプされて、かわされてしまった。


「『水操作ウォーターコントロール』」


 クロネがツクヨミに魔力を流し、切っ先をライコウに向けて、呟く。

 すると、橋の両わきから大量の海水がすごい勢いで、噴射された。

 リョウタが見たら、ポ○モンのハイドロポンプだなと思うだろう。

 

 海水は橋の両わき二ヶ所から放たれた。

 ライコウに向けて、放たれたため、彼のいる場所で、海水が交わるようになっている。


 ライコウは後ろに跳び退き、かわした。


「『氷砲弾』」


 彼がかわした瞬間、クロネがまたツクヨミに魔力を流し、彼の頭上に向けて、言った。


 ライコウが見上げると、そこには大きな氷のかたまりがあった。

 彼はすぐさま後ろに跳び退き、落ちてくる氷のかたまりをギリギリでかわした。



「ごめん、リョウタ」


 クロネはそう謝って、倒れているリョウタの体を跳び越えた。


「ユキ!」


 彼女はライコウに顔を向けながら、ユキを呼んだ。


「ユキ?」


 クロネが振り返ると、橋の前で泣き崩れてるユキが目に入った。

 彼女はユキにツクヨミを向けた。


「『水弾』」


 ツクヨミに魔力を流し、呟くクロネ。

 すると、ツクヨミの切っ先に水の球が現れ、ユキに向かっていく。


「うぅっ、リョウタ様っ」


 バシャッ。

 両手で顔をおおって泣いているユキに水球が直撃して、彼女をびしょ濡れにした。


「ユキ! 治癒して!」


 顔を上げたユキにクロネが言う。


「もう治癒しても遅いよ」

「遅くない!」


 ユキの呟きを否定するクロネ。

 今のクロネは聴覚と嗅覚がいつもよりも鋭くなっている。


「出血はギリギリ致死量に達してない!

今、治癒すれば、間に合う!」

「本当ですか?」

「うん! だから、リョウタを治癒して!

お願い!」


 ユキは涙を指で拭い、立ち上がった。

 そして、リョウタの元へ向かって、全速力で空中移動し始めた。


(これで、リョウタは大丈夫。

あとは、ライコウを斬り殺すだけ)


 クロネはそう心の中で呟き、ライコウをにらみつけた。





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