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転生した世界のため、チートな亜人嫁たちと悪神倒します  作者: 雪ノ町 リョウ
第十一章 青年期前半 鬼王編 〜義妹争奪戦と剣姫覚醒〜
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鬼ヶ島へ


「着いた〜」


 受けた複数の依頼を終え、冒険者ギルドに戻ってきた。




「じゃあ、ここで待ってて」

「うん。二人で待ってるね」


 フィアーナに頷き返し、彼女とクロネの二人を残して受付に向かう。



「お願いします」


 討伐した魔物のツノやツメなどの素材とダンジョンに行って入手した魔石を受付の机の上に広げる。


「お疲れ様です」


 受付嬢のマロンさんが労いの言葉をかけてくれる。


「今日もダンジョン入ったんですね」


 そう言いながら、換金や報酬の準備をする彼女。


「うち、家族多いんで

少しでも稼がないといけませんから」

「この間、五人になりましたもんね? 奥さん」

「な、なぜそれを?」

「先週の土曜、フィアさんとリルさんを見かけて

声をかけたときにセラさんもいて、

リョウタさんの新しい奥さんだって紹介されたんです」


 くっ、絶対リル姉が言ったんだ。


「ま、マロンさんは彼氏いるんですか?」


 無理やり話を変える。


「ふふふ。よくぞ、聞いてくれましたね」


 やった。話を変えることに成功した。


「ついに、私にも彼氏ができました」

「おめでとうございます」

「どんな男性(ひと)か気になります?

気になりますよね?」

「は、はい」


 マロンさんの圧力がすごくて、『はい』って返事しちゃった。


「幼馴染の狼獣族で、

私のことをずっと想っててくれたんですよ。

奥さんを五人にまで増やしたどこかの魔術師さんとは大違いですね」


 そこでも俺をディスるのかよ。

 いや、俺が悪いんだけど。

 

「ていうか、狼獣族の男って生きてるんですね」

「はい。クノハ……でしたっけ? 

彼が出した村への被害は一つ。

お姫様ーーカリンさんを連れ去ったこと。

みんな、カリンさんが大好きだったので、

彼女はいい男性(ひと)に出会って、

今すごく幸せだって伝えたら、みんな泣いて喜んでました」


 そっか。ヴァンを紹介してよかったな。

 紹介っていうか、偶々俺の家で出会った……。


「ひゃあっ!」

「あははっ。どっから声出してんだよっ」


 聞き覚えのある声がして振り返ると、グレンが涙目になりながら笑っていた。


「はぁ、グレンか。びっくりしたぁ」

「女の子みたいな声出たもんな」

「いきなり肩掴まれたんだよ?

そりゃ女の子みたいな声も出るわ」

「くしゃみが可愛いお前しか出ねえよ」

「どんなくしゃみするんですか?」


 マロンさんがグレンに聞く。


「ちょっと待ってくれ」


 ズボンのポケットからティッシュを取り出し、こよりを作るグレン。


「よし、できた。動くなよ」


 なにをしようとしてるの?

 まさかくしゃみさせるつもり?

 グレンがこよりを俺の鼻に近づけてくる。

 そして、こよりが鼻の穴に入った。


「は、は、はっちゅんっ!」

「ほら、可愛いだろ?」

「はい。リョウタさん、可愛いですよ」


 うっさいな。


「それでグレン、何の用?

ただびっくりさせに来たの?」

「ああ。彼女ができたんだ」

「えっ? だれ?」

「長い金髪に青色の瞳をした同い年の娘。

お金持ちで黒猫を飼ってる。

だれでしょう?」


 は? なに、そのクイズ方式?


「教えてくれないの?」

「普通に教えたら面白くないじゃん」


 はぁ、金髪碧眼で同い年、お金持ち、黒猫。


「あっ、分かった。クリスせ……クリスちゃん」


 あぶなっ。先生って呼ぶところだった。

 百合を小説でもイラストでも上質な作品を生み出せる彼女に、俺は尊敬の念を込めて先生呼びしている。


「おおっ、正解。さすがクリスの友達の旦那」

「どうやって出会ったの?」

「サファイアが俺のところへ走ってきたのが出会いだよ」


 やっぱりサファイアか。

 

「そっか。グレン、おめでとう。

用はそんだけ?」

「ああ。そうだ」


 もう疲れたから帰ろ。

 受付の上に置かれた報酬と魔石を換金したお金を奪うように手に取り、フィアーナたちの元へ戻……れない。

 肩を掴まれて、引き止められたから。


「どこ行くんだよ?」

「もう疲れたから帰るの」

「そうか」

「うん。じゃあ、またね」


 グレンにそう告げ、フィアーナたちの元へ戻った。




「それじゃあ、帰ろっか?」

「うん」

「リョウタ、大丈夫?」


 クロネが心配そうに尋ねてくる。


「なにが?」

「なんか疲れてる顔をしてるから」

「大丈夫。だから心配しないでいいよ」

「そう」

「リョウちゃん」


 フィアーナの方に顔を向けた。

 すると、彼女は両手を広げていた。


「フィアちゃん、なにしてるの?」

「癒してあげようと思って。

ほら、リョウちゃん。おいで」


 そう言って、優しく微笑む彼女。

 

「フィアたんっ!」


 俺は我慢できず、フィアーナの胸に飛び込んだ。

 すると、彼女が頭を優しく撫でてくれる。


「よしよし。今日も頑張ったね」


 バンッ!

 大きな音が俺の邪魔をした。

 邪魔すんなよ。

 今、フィアエルに癒してもらってるのに。


「リル?」


 クロネが呟く。

 顔を上げて、大きな音がした方に顔を向けた。

 すると、ギルドの入り口にティリルが立っていた。

 彼女ははぁはぁと肩で息をしている。


 どうしたんだろ?

 ていうか、この状況見られたら恥ずかしい。

 すぐにフィアーナから体を離した。


「リョウタ!」


 俺を見つけて、こっちに駆け寄ってくる彼女。


「リル、どうしたの?」


 駆け寄ってきた彼女にクロネが尋ねる。


「セラが、セラが……」

「一旦、水飲んで」


 魔術で作った氷(冷たくない)のコップにこれまた魔術で作った水を注ぎ、ティリルに渡す。


「あんがと」


 彼女はお礼を言って、コップを受け取り、水を一気に飲み干した。


「それで、お姉ちゃん。セラちゃんがどうしたの?」


 フィアーナが改めて尋ねる。


「鬼族のしのびに連れてかれちゃったんだ」


 忍って……。


「どこに連れてかれたの?」

「『鬼ヶ島』ってところ。場所は分かんないけど」

「場所は大丈夫だよ。私、分かるから」


 真祖だから分かるんだ?


「どこ?」


 クロネがフィアーナに聞く。


「街の東側に海があるでしょ?

沖に出て、東に進んでいくとあるの」

「そう。でも、どうやって海を渡るの?」

「私が運びますよ」


 姿を現したユキがクロネに答えて、微笑んだ。




ーー




 『スカーレット』の近くにある浜辺にやってきた。

 この浜辺で、ユキにプロポーズしたんだよな。


「四人とも海だよっ、海っ」


 リル姉、テンション上がりすぎだろ。

 いや、いつものことだけど。

 ティリルは海が好きで、海を視界に入れるとハイテンションになる。


「リル!」


 クロネに大きい声で呼ばれ、ティリルが波打ち際から俺たちの元へ戻ってきた。


「クロネ、どったの?」

「セラを助けにいくのに、なにしてるの?」

「あっ」

「海に憧れるのは分かる。

だけど、今は緊急事態なの! ちゃんとして!」

「ごめん。ちゃんとする」

「ユキ、お願い」

「は、はい」


 そうクロネに返事して俺らから離れるユキ。

 ある程度離れると、彼女の周りに水色の光が現れ、彼女の体を包んでいき、(まばゆ)く光った。

 光が収まると、水色の瞳と銀色の体をしたドラゴンが現れた。


「ユキってほんとにドラゴンになっちゃうんだね」

『皇竜族の血が流れてますからね』

「皇竜族ってみんなドラゴンになれるんだ?」

『そうですね。実際には見たことはありませんけど』

「そうなんだー。

それにしてもユキは綺麗なドラゴンだね」

『ありがとうございます』

「ユキ。乗れないからしゃがんで」

『あっ、すみません』


 クロネに言われた通り、俺たちが背中に乗れるようにしゃがむユキ。



「ユキちゃん、大丈夫? 重くない?」


 最後にユキの背中に乗ったフィアーナが彼女に尋ねる。


「大丈夫ですよ、フィア。

まだ二人くらい乗っても飛べるくらいですから」

「そっか。ユキちゃんは力持ちだね」

「皇竜族のハーフですから。

それじゃあ、浮揚します」


 そう告げて、ユキは銀色に輝く翼を使って浮き上がる。


「行きます」

「お願い」

「はい」


 そうクロネに返事し、ユキは飛行を開始した。


 セラ。今行くから、待ってて。





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