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前世の自分のこと


 目が覚めた。

 目の前には、俺の手を握り、幸せそうに眠っている銀髪美少女ーーセラがいる。

 そんな彼女の髪に手を伸ばす。


「んっ」


 手が髪に触れる瞬間、彼女が動いた。

 動いたことで、彼女の柔らかい感触が伝わり、剣が反応する。

 やばっ。セラの太ももに当たってるっ。

 今すぐ治って。お願いだから。


「します?」

「えっ?」


 視線を上げると、セラと目が合った。


「男の人って、出さないと治らないんですよね?

だから、した方がいいのかなって」

「放っておけば治るから、大丈夫。

だから、セラちゃんは体を休めて」


 そう俺が言うと、笑う彼女。


「ふふっ、お兄ちゃんは本当に優しいですね。

でも、大丈夫です。体、そんなに辛くないですから。

お兄ちゃんが抱きたくなってもできるくらい、元気です」


 ガッツポーズみたいなのをして、元気なことを伝えてくる彼女。


「そっか」

「はい。だから、我慢しなくてもいいんですよ」

「遠慮しとくよ。

ちゃんと夜の分、残しとかないと、

フィアちゃんに愛想尽かされちゃうから」

「大丈夫ですよ。

フィアお姉ちゃんはお兄ちゃんのこと、大好きですから」

「そうかもしれないけど、ちゃんとしとかないと」


 欲求不満の状態で男に襲われたら、終わりだし、五日に一回だし。


「ふふっ、お兄ちゃんは心配性ですね。

そういうところ、お兄ちゃんらしくて、好きです」

「ありがとう」

「はい」


「それじゃあ、シャワー浴びてきますね」


 そう言って、セラは体を起こした。

 俺も一緒に、体を起こす。


「お兄ちゃんも一緒に浴びます?」

「いや、いい。後で、浴びるから」

「分かりました。じゃあ、行ってきます」


 彼女はベッドから出て、致す前に着ていた紫色のネグリジェを着、部屋の入り口に向かっていった。


「あっ。セラちゃん」

「あっ。お兄ちゃん」


 俺たちは同時に、互いの名前を呼んだ。


「どうしたの?」

「いや、私のはそんな大事じゃないんで、

お兄ちゃん、先に言ってください」

「いや、レディファーストだから、

セラちゃんが先に言って。

すげえ気になるし」

「じゃあ、話します。

私たちもう夫婦ですよね?」


 確認してくるセラ。


「うん。そうだね。

契約もしたし、えっちしたし」

「お兄ちゃんは旦那さんなのに、

『お兄ちゃん』って、呼ぶのはおかしいから、

変えた方がいいかなって」

「そうだね。変えた方がいいかもね」


 家の中ならまだしも、外で呼んだら、『奥さんにお兄ちゃんって、呼ばせてるよ、あの人。きもい』って、思われるし。


「そうですよね。

じゃあ、今日から『リョウくん』って、呼びますね」

「外だけだよね?」

「家の中でもですよ」

「やめて!

家の中だけは『お兄ちゃん』で、お願いします!」


 そうじゃないと、セラちゃんをセラちゃんとしてじゃなくて、アクアさんの代用品として、愛してしまうから。


「わ、分かりました。外だけにします」

「ありがとう」

「は、はい。

それで、お兄ちゃんの話ってなんですか?」

「ああ。話したいことがあるから、

フィアちゃんたち三人とリビングで待ってて」

「分かりました。じゃあ、シャワー浴びてきます」

「うん。いってらっしゃい」

「はい」


 セラは微笑んで、部屋の外へ消えていった。




ーー




 朝食を済ませた俺は、ソファに腰掛けた(ユキを除く)四人の妻たちと低めのテーブルを挟んで、対峙している。


「それで、私たちに話したいことってなに?」


 俺に一番近いフィアーナが尋ねてきた。

 ソファはL字で、長い方の端からセラ、ティリル、クロネ、そして、短い方にフィアーナが腰掛けている。


「話したいことっていうのは、前の俺のこと」

「前のリョウちゃんのことって、

プロポーズするときに話してくれたことだよね?」

「うん」

「フィアだけに話したんだ」


 ティリルが少し寂しそうな声で呟いた。


「ごめん。

あんまり思い出したくないことだから、

セラちゃんが加わってから、話そうと思ってたんだ」

「そっか。私の方こそごめんね。

思い出したくないことを話したのに、嫉妬しちゃって。

フィアもごめんね」

「ううん。

私も嫉妬するタイプで、お姉ちゃんだけに話したって

聞いたら、嫉妬しちゃうと思うから」

「それで、思い出したくないことなのに、大丈夫なの?」


 クロネが心配してくれる。

 優しいな、クロネたん。

 流石(さすが)、フィアエルの親友。


「大丈夫だよ。今、幸せだから」

「そう。でも、無理はしないで」


 可愛いわ、爆乳でスタイル良いわ、優しすぎるわ。

 クロネたん、最高。


「うん。分かった。

じゃあ、話すね?」


 四人は頷いて、応えた。



「前の俺は体が不自由だったんだ」

「生まれたときから?」


 ティリルが質問してきた。


「あっ。聞いちゃダメだよね。

ごめんね、リョウタ」

「いや、いい。全部知っててもらいたいから。

だから、四人ともどんどん質問していいからね」


「それで、生まれたときからって質問だよね?」

「うん」

「生まれたときからじゃなくて、九歳くらいからかな。

もうちょっと前から、歩き難くなってたけどね」

「どうやって、生活してたんですか?」


 セラが聞いてくる。

 やっぱりフィアーナとクロネは優しすぎて、遠慮してるな。


「親に身の回りのことしてもらいながら、

車椅子で生活してたんだ」


 四人とも頭の上にクエスチョンマークが浮かべたような表情をしている。


「分からない単語は後で説明するね」


 そう四人に告げて、テーブルの上に置いたノートを開き、『車椅子』とメモした。

 絵で見てもらった方が分かりやすいと思って、持ってきた。


「それで、俺は体が不自由だったけど、

普通に勉強したり、友達と話したりできたから、

あんまり辛いとは、思わなかったんだ。

それから……」

「それから……なに?」


 クロネが聞いてくる。


「ここからみんなが嫌がる話なんだけど、いいかな?」

「いいよ。話して?」


 フィアーナが言った。


「三人もいいかな?」


 三人は頷いて、応えた。


「じゃあ、話すね。

それから、十三歳になる年の春に

好きな()ができたんだ。

その娘と仲良くなって、楽しい日々を送ってた。

でも、そんな日々は続かなかったんだ。

ある日、クラスメイトの男子に

『あの娘は俺の方が好きなんだって』って言われた。

俺はそれを信じちゃったんだ」

「信じちゃったってことは嘘だったんだ?」


 ティリルが聞いてくる。


「ううん。嘘じゃなくて、勘違いしてたんだ」

「どうして、勘違いだって分かったの?」

「十五歳のときに彼女本人から聞いたんだ。

俺のことが好きなこととその男子には相談しただけってことを」

「その相談ってなんですか?」


 今度はセラが尋ねてくる。


「相談っていうのは、俺とのこと」

「お兄ちゃんとのこと?」

「俺と結婚したいって思ってくれたらしくて、

でも、お父さんに反対されたんだって。

『二人とも自分のことさえもろくにできないのに、

どうするんだ』って」

「その娘もリョウタと一緒で、くるまいす? だったんだ?」


 ティリルが聞いてくる。

 さっきからティリルとセラにばかり質問されるんだけど。


「うん。

それで、彼女は男子の名前を呼ぶのが苦手だったからーー」

「主語が抜けて、その男子が勘違いしちゃったってことだね」


 話さずとも理解してくれるティリル。嬉しいな。


「多分ね。このときに『俺が身体障がい者じゃなかったらな』って思ったんだ」

「そっか。それで、その娘とはどうなったの?」

「それから少しして、彼女とは離れ離れになったんだ。

離れ離れになった直後から少しの間、

連絡を取り合ってたけど、

だんだんとそれもなくなっていって、それっきり」

「そっか」

「うん」


 一旦、ティリルが淹れてくれたお茶で喉を潤す。


「それから、十六歳のとき、大きな病気になったんだ。

病気での死因第三位の大きな病気。

病気はちゃんと治ったんだけど、

気を失うくらいひどかったから、

ずっと体調が悪い状態になっちゃったんだ。

体が不自由で、少しの間しか座ってられないくらい

体調が悪い。

こんなやつ、だれも付き合ってくれないな。

俺は結婚も恋人もできずに死んでいくんだ。

そう思って、辛かった」

「フィア、通して」

「セラ、ちょっと通らせて」


 俺が言った瞬間、クロネがフィアーナに、ティリルがセラに、同時に言った。

 フィアーナとセラは言われるがまま、二人が通れるようにした。

 すると、クロネとティリルが二人の前を通り、駆け寄ってきて、俺を抱きしめた。

 頭の右側と左腕におっぱいが押し付けられてる。


「これからは私のこと気にせず、

フィアとクロネとエッチしていいかんね。

後、したいときにしたい娘とするんだよ。

精力回復魔術(エルフの秘術)使ったげるから。

あっ。もちろん私たち五人のだれかだよ」

「う、うん。分かった」

「私にしてほしいことがあったら言って?

できる範囲のことなら、いやらしいことでもしてあげるから」


 クロネは頰を赤くして、言った。

 リル姉とクロネたん、いい娘すぎ。





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