セラとの夜
「セラちゃん、入るよ」
寝室の扉を開けて、中に入る。
「暗っ」
「あっ。ごめんなさい。
今、灯りつけますから」
そうセラちゃんが言うと、足音がし始める。
足音が窓際からベッドの枕元に移動し、ベッドライトが灯った。
ベッドライトが灯ったことで、セラちゃんの姿が視界に入る。
彼女は銀色の長い髪を下ろし、肩の部分が紐で、瞳と同じ紫色のネグリジェを着ている。
可愛い。
「お兄ちゃん、大丈夫ですか?」
ネグリジェ姿のセラちゃんに見惚れていると、いつの間にか、彼女が目の前にいた。
「な、なにが?」
「ぼうっとしてたから」
「大丈夫だよ。
そのネグリジェ、セラちゃんによく似合ってて、
可愛くて、見惚れてただけだから」
「私に、ですか?」
頰を赤らめて、確かめてくるセラちゃん。
「う、うん。セラちゃん、美少女だから」
「美少女っていうのは、私じゃなくて、
フィアお姉ちゃんたちのことですよ。
私は普通です」
「そんなことないよ。
セラちゃんはフィアちゃんたちと同じくらい可愛いよ」
銀色の髪を撫でながら、言った。
「あ、ありがとうございます」
嬉しそう。
「うん。じゃあ、ベッド行こっか?」
「はい」
セラちゃんと手を繋いで、ベッドにむかう。
「どうする? 腰掛ける?
ベッドの上で向かい合って、座る?」
「えっと、昔みたいに並んで、横になりたいです」
「分かった」
「これでいい?」
ベッドの上で、俺と向かい合って、横になっているセラちゃんに確認する。
「はい。後、頭撫でてほしいです」
頷いて、彼女の長い銀髪を優しく撫でる。
すごく幸せそうな表情をする彼女。可愛い。
しばらくすると、セラちゃんが口を開いた。
「私、お兄ちゃんがいなくなってから、
ずっと泣いてたんです。
死んじゃったかもしれないって」
レオンさんが言ってたな。
「そんな私をずっとお母さんが慰めてくれてました。
お兄ちゃんは魔術の腕がすごいから、大丈夫だって。
それを信じて、私は、お兄ちゃんを迎えに行かなきゃって
思いました。
でも、お父さんがお兄ちゃんのいる魔族領は危ないから、
修道院で戦えるようになった方がいいと教えてくれて、
十歳のときに修道院に入ったんです」
ナイス、レオンさん。
まぁ、血は繋がってないけど、可愛い娘。
危ない目に遭わないようにするのは、当然だよな。
「それから、毎日、朝昼は魔術と槍術の鍛錬を頑張って、
夜はお兄ちゃんたちが無事で、また会えますようにって、
星に願ってました」
心が痛むな。
「少しずつ戦えるようになってるし、
星にも願ってるから、きっとまた会えると思ってたんです。
でも、ベッドに入ると、不安がこみ上げてきて、
涙が溢れてました。
魔族領で戦えるレベルになれるかとか、
もう死んじゃってるかもって」
そう言うと、セラちゃんが抱きついてきた。
「もう嫌ですっ。
あんな辛い思いをするのも、ひとりぼっちになるのも、
嫌なんですっ。
だから……」
話を止めて、体を離す彼女。
そして、涙を流しながら、見つめてくる。
「もう私の前からいなくなったりしないでください。
もう離れないでください。
もう……私をひとりにしないでください」
セラを抱きしめる。
「分かった。
もうセラの前からいなくならない。
セラから離れない。ううん、離さない。
もうひとりにしない。死ぬまで一緒にいる」
そう言うと、彼女は俺の胸で声を出しながら、泣き出した。
銀色の髪を撫でて、落ち着くのを待った。
しばらくすると、寝息が聞こえ始めた。
寝ちゃった?
セラを起こさないように、仰向けに寝かせる。
「今日は疲れたよね。
男に絡まれたし、いっぱい泣いたし。
俺のことは気にせず、ゆっくり休んでね」
そう言いながら、彼女に布をかける。
そして、その中に自分も入る。
改めて、見ると、やっぱり綺麗な顔してるし、アクアさんに似てるな。
なんでだろうな。
セラとアクアさんは親子だけど、血繋がってないのに。
ずっと一緒にいたから?
セラを産んだレオンさんの元カノがアクアさんに似てるのかな?
理由がどうであれ、恋してた女性に似てる女の子とこれからずっと一緒で、えっちできるんだから、それでいいじゃん。
キスしたいな。
してもいいよな? もう夫婦なんだし。
片手をセラの向こう、顔の横に突き立て、覆い被さるようにし、顔を近づける。
「んぅ、お兄ちゃん?」
もう少しで唇が触れ合うという瞬間に、セラが起きた。
「ち、違うんだ。えっと、その……んっ!?」
首に手を回されて、顔を近づけさせられ、彼女の唇が俺のに重ねられた。
「せ、セラちゃん、なんで?」
「これからお兄ちゃんとするのに、眠っちゃったから、
お詫びにキスしました」
「そ、そっか」
「お兄ちゃん」
「なに?」
「私、物心ついたときからずっと好きだったんです。
助けてくれたし、かっこよくなってたから、
惚れたし、今までよりももっとずっと好きになりました」
「そ、そっか」
「だから、お兄ちゃんと二人きりになると、
ドキドキしちゃうんです。
今だって……」
そう言って、俺の片方の手首を掴んで、自分の胸に移動させるセラ。
力あるんだね。身体強化発動させてるのかな。
彼女の柔らかく、大きな膨らみに手が押し付けられる。
「分かりますか? 胸がドキドキしてるの」
「う、うん」
「お兄ちゃんもドキドキしてますね」
セラは俺の胸に手をあてて、嬉しそうに言った。
「仕方ないでしょ?
美少女が目の前にいて、
その娘に『ずっと好きだった。
今日会って、もっとずっと好きになった』って、言われて、
お、おっぱいまで触らされてるんだよ?
そんなのドキドキするに決まってるよ」
そう言うと、腕をもとの場所に戻され、また唇を重ねられた。
「リョウタお兄ちゃん、好きです。
離れ離れだった分もたくさん愛して、
お兄ちゃんのこと、たくさん感じさせてください。
そして、私をお兄ちゃんのお嫁さんにしてください」
アメジストのように綺麗な紫色の瞳を潤ませたセラにそう言われて、理性がもつわけがない。
彼女の唇に自分のを重ねて、口内に舌を入れ、絡めた。
それから、俺とセラは(血は繋がっていない)兄妹から夫婦になった。