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嫁とセラ

執筆中。


 〈ゲート〉を使い、『スカーレット』にセラちゃんを連れて帰ってきた。


「私も妻になったら、お兄ちゃんフラれませんよね?」


 家の前にたどり着いた瞬間、不安そうに尋ねてくる。


「多分、大丈夫」


 大丈夫だよね?

 フィアーナは会えるの楽しみにしてたし、ティリルもまた妹が増えるって喜んでたし、ユキもアクアさん(お母様)に似てたらいいですねって言ってたし、クロネは……なにも言ってなかった〜。

 でも、ユキを奥さんにしたとき、普通だったから大丈夫か。

 いや、そう見えただけで、フィアーナに泣きついてるかもしれない。


「大丈夫じゃないんですね。

お嫁さんは諦めて、近くで家を借ります」

「いや、諦めなくていいよ。

大丈夫だから」


 やだなー。クロネたんとずっと一緒にいたいなー。

 そう思いながら、玄関の鍵を開けて、セラちゃんと家の中に入った。




「ただいまー」


 いつもならティリルが駆けてくるのに、こない。

 忙しいんだな。

 そう思って、靴を脱ぎ、セラちゃんと家の奥に進んだ。




ーー




「ただいま」

「おかえり」


 クロネはそう返事して、手に持った本をテーブルに置き、ソファから立ち上がった。

 可愛いな、ブラウス姿のクロネたん。


「ごめん。

小説がいいところだったから、出迎えられなくて」

「いや、いいよ。

それで、二人は?」

「フィアとリルは食材の買い出しに行った」

「そっか」

「うん。その娘がセラ?」


 俺の隣に立っているセラちゃんを見て、クロネが尋ねてくる。


「うん」

「私はクロネ。よろしく」

「えっと、セラです。よ、よろしくお願いします」

「緊張しないでいいから」


 そう言って、クロネはセラちゃんの頭をポンポンした。


「あ、あの」

「なに?」

「姉様って呼んでいいですか?」

「構わないけど」

「ありがとうございます、クロ姉様」


 セラちゃんはクロネの手を両手で包み、お礼を言った。


「う、うん」


 少し驚いたみたいだけど、嬉しそうなクロネ。

 よかった。


「あっ、ごめんなさい。

いきなり手を握っちゃって」


 セラちゃんはそう謝って、クロネの手を離した。


「大丈夫。少し驚いたけど、嫌じゃなかったから」

「よかった。あの、姉様」

「なに?」

「お話しませんか?」

「いいよ。来て」


 クロネはセラちゃんの手を引き、さっきまで腰掛けていたソファに近づく。


「座って」

「はい」


 そう返事して、ソファの奥(こっちからして)に腰掛けるセラちゃん。

 その隣にクロネが腰掛ける。


「あっ。お茶淹れてくるから、少し待ってて」

「クロネちゃんは座ってればいいよ。

俺が淹れてくるから」

「分かった」


 テーブルに置かれたクロネのコップを手に取り、繋がっているキッチンに向かう。





「二人仲良くなれそうでよかったですね、リョウタ様」


 仲良さげに話してるクロネとセラちゃんをチラチラ見ながら、お茶を淹れているとユキが現れて、言ってきた。


「マジでよかったよ。

クロネちゃんいなくなったら、生きていけないし」


 そう言うと、彼女が笑う。


「ふふっ、リョウタ様、クロネ大好きですもんね」

「ユキちゃんも好きだよ」


 水色の髪を優しく撫でて、告げると、頰を赤らめるユキ。


「わ、私もリョウタ様が好きです」

「ありがとう」

「はい」




「お待たせ」


 お茶を淹れて、クロネたちの前にあるテーブルに持ってきた。


「リョウタ、ありがとう」

「ありがとうございます、お兄ちゃん」

「うん」


 バンッ!

 リビングの入り口から大きい音がして、そっちに視線を向けると、肩で息してるティリルが立っていた。


「セラは?」

「セラは私ですけど……?」


 そう答えたセラちゃんを見るや否や彼女に駆け寄り、抱きつくティリル。


「思ってた以上に可愛いー。

リョウタが心配になるのも分かるねー」


 そう言いながら、彼女はセラちゃんに頰ずりしている。


「リル。セラが困ってるから」

「あっ。ごめんね、セラ」


 クロネに注意されて、頰ずりだけやめ、謝るティリル。


「大丈夫です。ちょっとびっくりしただけですから」

「リョウタの妹だけあって、優しいんだねー」

「そんなことないですよ。

あの、名前教えてくれませんか?」

「ティリルだよ。

呼び方は、リルでもお姉ちゃんでも、

セラの好きにしていいかんね」


 ティリルをなんて呼ぶのか、お兄ちゃん、気になります。


「リルお姉ちゃんって、呼んでもいいですか?」


 フィアーナと一緒なんかい!


「リル姉。フィアちゃんは?」

「フィア? あっ。

セラ、ちょっとごめんね」


 セラちゃんにそう謝って、ティリルは入ってきた扉に走っていき、扉の向こうに消えていった。




 数秒もしない内に、話しながら、彼女がフィアーナと戻ってきた。

 フィアーナは両手に荷物を持っていて、その彼女のそばに紙袋が浮遊している。

 風魔術、使ってるのかな?


「『マナ』も使えるからって、

『マナ』だって無限にあるわけじゃないんだよ?」


 フィアーナは魔力がなくなると、瞬時に『マナ』を吸収して、魔力を回復するらしい。


「ごめん、フィア。吸血させたげるから、許して?」


 フィアーナの副眷属になってから、許してほしいとき、そればっかりだな。


「怒ってないし、

リョウちゃんとクロネちゃんたちの方が美味しいから

お姉ちゃんのはいらないよ」


「フィアお姉ちゃん!」


 フィアーナが荷物を下ろした瞬間、いつの間にか近寄っていたセラちゃんが彼女に抱きついた。


「セラちゃん。いきなり抱きついたら、

びっくりしちゃうでしょ?」

「よかったっ。お姉ちゃんも生きてたっ」


 抱きついているセラちゃんの声は涙まじりだ。

 そんな彼女を抱きしめ、銀色の髪を撫でるフィアーナ。


「心配かけちゃったね。ごめんね、セラちゃん」

「お姉ちゃんたちが意図的にいなくなったわけじゃないから、いいです」

「そっか」


 それから、フィアーナは少しの間、セラちゃんを抱きしめ、彼女の髪を撫でていた。




ーー




 あの後、セラちゃんはティリルにフィアーナと連れられ、服を買いに行った。

 三人がいなくなったから、クロネにセラちゃんを妻にするのは嫌じゃないかと聞くと、


「セラみたいな可愛い妹がほしかったから、

嫌じゃない」


 と答えた。

 それから、帰ってきたセラちゃんと婚姻契約をした。


 今は歓迎会を終え、浴室に一人でいる。

 今日はセラちゃんとするのに、他の妻とお風呂に入るのはダメだからと、一人で入ることにした。




「一人で風呂は心細いな。

フィアーナにタオル巻いて、入って……って、

お願いすればよかった」


 後悔しながら、体を洗う。


「はぁ。だれか来てくれないかな」


 そう呟いた瞬間、浴室の扉が開く音がして、そっちに視線を向ける。

 すると、そこには、銀髪美少女が立っていた。


 彼女は、手ぬぐいほどのタオルで、大きな胸と大事な場所を隠してるだけの格好をしている。

 おっぱい、大きいね。

 巨乳と爆乳の間(ティリル)くらいじゃないかな……って、やばっ。

 タオルの横幅が若干短くて、頂きの桜が見えてるっ。


 血液が一点に集まるのが分かる。

 銀髪美少女とは逆の方に体を向け、戦闘態勢になった剣を隠す。


「せ、セラちゃん、なに入ってきてんの!?」

「背中、流そうと思って」

「いいから。 自分で洗えるから。

セラちゃんはフィアちゃんたちと入って」

「嫌です。お兄ちゃんと一緒にいたいから、嫌です」

「はぁ、分かったよ」


 俺がそう返事すると、足音が近づいてくる。


「ありがとうございます、お兄ちゃん」


 セラちゃんの声がした瞬間、後ろから抱きしめられた。

 お、おっぱいが当たってるよ!


「う、うん」

「それじゃあ、背中洗いますね」


 そう言って、体を離すセラちゃん。

 助かった。




ーー




「入りますね」

 

 セラちゃんがいる方向を背中にして、湯船に浸かっていると、彼女が告げてきた。


「う、うん」


 お湯に足? を入れる音がして、気配が近づいてくる。

 気配っていうか、セラちゃんだけど。

 またくっついてくるのかな?

 そう思った瞬間、背中に手が触れ、柔らかいものが二つ、押し付けられた。


「せ、セラちゃん?」

「なんですか? お兄ちゃん」

「あの、くっつきすぎじゃないかなって」

「私にくっつかれるの嫌ですか?」

「嫌じゃない」


 死んだかもしれないって、思いながらも頑張ってきたセラちゃんに、あんまりくっつかれると困るって、言えねえ。

 

「お兄ちゃん」

「な、なに?」


 耳に顔を近づけてくるセラちゃん。


「大好きです」


 耳元で囁くなよ。

 ただでさえ、おっぱい当たって、心臓が高鳴ってるのに、そんなの囁かれたら、死んでまうわ!


「お兄ちゃんは私のこと、好きですか?」

「好きだよ。好きじゃなかったら、契約しないよ」

「ふふっ、そうですね」

「でしょ?」

「はい。それじゃあ、先あがりますね?」

「もういいの?」

「はい。準備しないといけませんから」


 そう言って、体を離すセラちゃん。

 そして、彼女の気配が遠のき、湯船から出る音がして、濡れた足音がし始めた。

 そのまま、脱衣所に消えていくのかと思ったら、途中で足音が止まった。


「お兄ちゃん。寝室で待ってますね」

「う、うん」


 また足音がし始め、脱衣所に消えていった。





用語おさらい


『マナ』

空気中や水中などの自然に存在する魔力。


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