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セラとの再会


「よし。それじゃあ、セラちゃんを迎えに行ってくる」

「「「行ってらっしゃい」」」


 フィアーナたちに見送られ、家を出た。

 向かうのは、魔王城。

 人族領北へ繋がっている転移魔法陣を使わせてもらいにいく。



ーー




「ユキちゃん」


 名前を呼ぶと、俺の隣に現れるユキ。

 いつ見ても、美少女だな。


「私の姿を見たくて、呼んだんですか?」


 頰を赤く染めて、彼女が尋ねてくる。


「相談しようと思って、呼んだんだよ」

「相談、ですか?」

「うん。修道院に向かうか、港に向かうか、

どっちがいいと思う?」

「港に向かった方がいいと思います。

修道院に向かってる間に、船に乗られてしまうかもしれませんから」

「そっか。ありがとう」

「あ、あの、お礼は、き、キスがいいです……」


 もじもじしながら、お願いしてくるユキ。

 キス、好きだもんね。


「はい……」


 彼女の体をギュッと抱きしめる。

 柔らかいものが胸に押し付けられる。


「ユキ、好きだよ」


 そう告げて、ユキの唇に自分のを触れ合わせた。


「これでいい?」

「はい。ありがとうございます」


 お礼を言うと、彼女は姿を消した。


「よし、行くか」


 ギルドにある多目的トイレから出た。




ーー




「やめてくださいっ」


 港町を歩いていると、女の子の嫌がる声が聞こえた。

 声の方に走って、向かう。


 薄暗い裏路地に出た。

 すると、そこには、高校生くらいの女の子、その彼女に絡むガラの悪い男三人がいた。


「嬢ちゃん、俺たちといいことしようぜ?」

「したくないです」

「ふぅん。そう言うんだ?

お兄さんたち、優しくしてあげようと思ってたのにな」


「やっと見つけた」


 俺が声を出した瞬間、男たちがこっちに向いた。


「お前、だれだ?」

「僕はその娘の彼氏です」

「えっ?」


 女の子が驚いた声を出した。

 助けるから、付き合って……と口パクで彼女に伝える。

 伝わったのか、頷く彼女。


「僕の彼女、返してもらえませんか?」

「返してほしいのか?」

「はい。お金ならあります」

「俺たち、今女に飢えてんだ。

金なんて要らねえよ」

「そうですか。

それじゃあ、力ずくで返してもらいます」

「お前ら、遊んでやれ」


 女の子を押さえつけている男が他の二人に言った。


「「へい、兄貴」」


 そう返事して、腰に携えた剣を抜き放ち、こっちに向かってくる男二人。


「〈フロストブレス〉」


 男たちの足に向かって、白銀の冷気を放つ。

 男たちの足は一瞬で凍りつき、地面に縫い付けられた。


 両手を男二人の頭に向けて、〈氷砲〉を尖らさず、回転なしで、放つ。

 氷の砲弾が額に直撃して、気を失う二人。


 残るは、女の子を押さえつけてる男だけ。

 そう思って、もう一人の男に視線を向ける。

 すると、路地の奥に男が女の子の手を引っ張り、逃げようとしていた。


「待……」


 追いかけようとした瞬間、半竜化したユキが男の真後ろに現れ、その背中をツメで切り裂いた。


「ぐはぁ!」


 男は血で、服を真っ赤に染めながら、倒れた。



「ユキちゃん、意識が戻らない程度に治癒して」

「ど、どうしてですか?

女の子を襲うようなやつは、絶滅すればいい……って、

言ってたじゃないですか」

「言ったし、今も思ってるよ。

でも、そいつが死んだら、ユキちゃんが人殺しになる。

大好きな奥さんの手汚したくないから、そいつ、治癒して」

「分かりました」


 しゃがんで、倒れている男の血に染まった背中に手をかざすユキ。

 かざした彼女の手から緑色の光が放たれ、男の傷を癒していく。


「治癒終わりました」

「助けてくれて、我儘(わがまま)まで聞いてくれて、

ありがとう。ユキちゃん」

「はい」


 そう返事して、ユキは姿を消した。


「消えた……?」

「今の娘は精霊だから、気にしないで」

「でも、ツノとか生えてましたよ?」

「俺の精霊はちょっと特殊だから」

「んぅ……」


 後ろから男の声がした。


「やばっ、走るよ」

「は、はい」


 女の子の手を掴み、走って、その場を後にした。




ーー




 港町の広場にたどり着いた。


「ここまで来れば、もう大丈夫だからね」


 そう言いながら、女の子の方に視線を向けた。


 向けた先には、美少女がいた。

 彼女は、後ろの上半分をアップにした、日光で輝く銀色の髪、アメジストを彷彿とさせる綺麗な紫色の瞳をしている。

 服装はブラウス、その上から皮の胸当てを付けていて、下は膝丈のスカート。


 アクアさんに似てるな、この娘。

 ちょっと待て。

 銀色の髪、紫色の瞳、アクアさんに似てる。

 もしかして、この娘……?



「助けていただき、ありがとうございました」


 美少女が頭を下げてくる。


「う、うん」

「名前、教えてもらえますか?」

「リョウタだよ」

「えっ? ちょ、ちょっと見てもらいたいものが」


 そう言って、彼女は腰に携えたマジックポーチ(容量が決まってる方)から、四つ折りにされた紙を取り出す。

 そして、紙を開いて、見せてくる。

 紙には、よく知っている生物が描かれている。


「この生き物、なにか分かりますか?」

「ピ○チュウだよね? セラちゃん」

「お兄ちゃんっ」


 紫色の瞳を潤ませ、抱きついてくる銀髪美少女ーーセラちゃん。



「よかったっ。生きてたっ」

「突然いなくなって、心配かけて、ごめん」


 抱きついている彼女の背中に手を回し、抱きしめて、謝る。


「ううん。

お兄ちゃんの意思でいなくなったわけじゃないから、

謝らなくていいです」

「そうだけど、でも……」


 俺から体を離し、目を合わせて、セラちゃんが口を開く。


「じゃあ、これからずっとそばにいてください。

お兄ちゃんとしてじゃなくて、旦那さんとして」


 分かったって答えたい。

 だけど、二つ、話さないといけないことがある。


「セラちゃん。

返事する前に、聞いてほしいことがあって、

いいかな?」

「いいですよ」

「ありがとう」


 一旦、呼吸を整える。


「俺、四人いるんだ」

「奥さんが、ですか?」


 鋭いね、セラちゃん。


「う、うん。

みんなには、セラちゃんのこと話してるし、

奥さんにすることも許してくれてる。

だから、セラちゃんがいーー」

「いいです。

お兄ちゃんのお嫁さんになれるだけで、

嬉しいですから」

「そっか。もう一つ、聞いてほしいことがあるんだ」

「なんですか?」

「ちょっとごめんね」


 セラちゃんを抱き寄せ、彼女の耳に口を近づける。


「今から話すことは、内緒にしてほしい。

だれにも言わないって、約束できる?」

「できます」

「じゃあ、話すね。

俺、転生者なんだ」

「えっ?」

「こことは違う世界で生きてたんだ。

死んで、神様に出会って、

記憶を持ったまま、生まれ変わらせてもらったんだ」


 そう言って、セラちゃんを体から離す。


「そうなんですか?」

「うん。幻滅したよね?」

「しませんよ。お兄ちゃんはお兄ちゃんですから」


 彼女をギュッと抱きしめる。


「セラ」

「はい」

「好きだ」

「私も好きです」


 またセラちゃんを体から離す。

 彼女は頰を赤らめている。


「ちゃんと愛するし、幸せにする。

だから、俺と結婚してください」


 そう告げた瞬間、彼女が顔を近づけて、俺の唇に自分のを重ねた。


「お願いします」


 彼女は微笑んで、言った。





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