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転生した世界のため、チートな亜人嫁たちと悪神倒します  作者: 雪ノ町 リョウ
第十章 青年期前半 青年エルフの復讐編
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ルシル戦後

「お姉ちゃん」


 俺の胸に倒れ込んできたティリルを支えていると、リーネちゃんがこっちに駆け寄ってくる。


「お姉ちゃん? 眠ってる。

ルシル(あいつ)がそばにいたから、

精神的に疲れたんだね」

「多分ね」

「それで、あいつは死んだの?」

「うん」

「そっか。あんたが倒したのよね?」

「あー、うん。一応、俺がね」


 本当は、ティリルに憑依したクシナダがやったけどね。


「その、ありがとう、お、お兄ちゃん……」


 恥ずかしそうにお礼を言うリーネちゃん。


『ありがとう、お兄ちゃん』


 セラちゃんの顔が脳裏をよぎった。

 会いたいな、セラちゃんに。


「なによ、それ! 私がお礼言ってるのに。

ていうか、セラって、だれよ!」


 声に出てたか。


「セラちゃんは、リョウちゃんの妹だよ」


 クロネと話していたフィアーナがリーネちゃんに教える。


「あんた、まさか、妹にまで手を出す気じゃないでしょうね?」

「血が繋がってないから、大丈夫だし」

「きもっ」

「シスコンのリーネちゃんに言われたくない」

「しすこん? なによ、それ?」

「お姉ちゃんのことが、結婚したいくらい

好きなやつのことをシスコンって言うんだよ」

「なっ!? そんなこと思ってないわよ!」


 顔を真っ赤にして、否定するリーネちゃん。


「そんなこと言って、頭の中じゃ、姉妹で

あんなことやこんなことしてるんだろ?」

「ば、バカじゃないの?

キスしたり、互いの指で……なんて、

これっぽっちも考えてないんだから!」


 すっげえ考えてるじゃねえか。


「本当にお前たちは相性が悪いな」


 ルル様が俺とリーネちゃんに言った。


「だって、こいつが……」

「みなまで言うな。

リョウタ。精霊の力を借りたいのだが?」

「なにをすればいいですか?」


 現れたユキがルル様に尋ねる。


「塔の中にいた娘たちをさっきの小屋まで運んでほしい」


 フィアーナのそばにいるエルフの女性たちに視線をやって答える彼女。


「分かりました」




ーー




「んぅ、リョウタ?」


 ティリルを膝枕で寝かせ、エルフの女性たちを運び終わるのを待っていると、ティリルが目を覚ました。


「うん。おはよう、リル姉」

「おはよー。あ、あれ?」

「どうかした?」

「体が重くて、起きられない」

「多分、魔力切れだよ。

俺が背負って移動するから大丈夫」

「おんぶしてくれるんだ?」


 嬉しそうなティリル。

 おんぶ、好きだもんね。

 

「うん。家までね」

「やった」

「あっ」

「どうしたのー?」

「リル姉に聞きたいことを思い出したんだ」

「聞きたいこと?」

「すごく大きい蛇の魔物と戦ったんだけど、

そのとき、リーネちゃん怖がりまくってたんだ」

「ああ。昔ね……」



ー十四年前ー


「リーネっ!」


 家に帰ると、お母さんが出迎えてくれる。


「リル」


 お母さんの顔が暗くなる。


「リーネがどうしたの?」

「居なくなったんだ。

今、みんなで探してる」

「私も探してくる」


 お母さんにそう告げて、家を後にした。




 里の中を探しながら、移動していると、お父さんの姿が目に入った。


「お父さん」

「リル」

「リーネは見つかった?」


 首を横に振るお父さん。


「結界の外に出たのかもしれない。

だから、僕と何人かで探しに向かうところなんだ」

「私も連れていって」

「連れていけない」

「どうして?」

「里の決まりで、十五歳以下の者は

里から出てはならないんだ。

知ってるだろ?」

「だけど、今は非常事態なんだよ?

リーネがお姉ちゃん、助けて……って泣いてるよ!

私は一人でも外に出るかんね!」

「分かった。ただし、僕と一緒だからね」

「お父さん。あんがと」


 そして、私はお父さんと男の人たち数人と結界の外に出た。




 しばらくすると、リーネの声が聞こえた。


「リーネっ?」


 私は声がした方に走った。

 少しすると、蛇型の魔物が視界に入る。

 魔物のすぐそばに、顔が涙と鼻水でびちゃびちゃのリーネが見えた。


 リーネが魔物に襲われているんだ。

 そう思って、魔物に〈風刃〉を放つ。

 風の刃は魔物を切り裂いた。


「リーネ。もう大丈夫だよ」

「お姉ちゃんっ」


 私が声をかけた瞬間、抱きついてくるリーネ。

 リーネの頭を優しく撫でて、(なぐさ)める。


「怖かったね」

「うん」


ーー



「……って、ことがあったんだ」


 なるほどな。

 蛇の魔物に襲われて、蛇嫌いに。

 そして、ティリルが助けてくれたから、シスコンになったんだ。


「でも、なんで結界の外に出たの?」

「結界の近くに私の好きな実がなってるのを見つけて、

揺らして、落としたら、結界の外に転がっていっちゃったんだって」


 前言撤回。

 リーネちゃんはずっと、お姉ちゃん大好き娘です。



「あっ、ユキだ」


 ティリルの視線を辿ると、竜化状態のユキがこっちに戻ってきていた。

 あれっ? だれか背中に乗ってないか?



「ルル様? なにしに戻ってきたんですか?」


 着地したユキから飛び降りるルル様に尋ねる。


「大事なことを伝えにきた。

後、これもな」


 魔力回復薬(マジックポーション)の小瓶を見せる彼女。


「ルル様。私に魔力回復薬なんてもったいないですよ」

「もうほとんどエルフはいない。

だから、もったいなくはない」


 そう言って、ルル様は、ティリルの体を起こし、魔力回復薬を飲ませた。



「あんがと、ルル様」


 立ち上がったティリルが彼女にお礼を言った。


「ああ。リョウタ、少しついてきてくれるか?」

「はい。いいですけど」




 塔があった場所からもう少し進んだ場所に連れてこられた。


「ここなら、聴こえる心配はないな」


 そう呟いた瞬間、ルル様が俺の後ろに回りこみ、背中を押した。


「うおっ。危なっ」


 前方の木になんとか掴まり、ことなきを得た。


「いきなりなにするんですかッーー」


 振り向いた瞬間、ルル様に『壁ドン』された。

 近っ。すげえ綺麗だし、いい匂いだし、やばい。


「ティリルの言った通り、お前は可愛いな」


 これ、襲われちゃうんじゃね?

 男エルフがみんな死んじゃって、このままじゃ絶滅しちゃうからって。

 

「あの、俺にはフィアちゃんたちがいるので、ごめんなさい」

「なんの話をしている?」

「えっ? 男のエルフが死んじゃって、

このままじゃ絶滅しちゃうから……」

「あはは。そうか。

種馬にされると思ったのか」

「はい……」

「安心しろ。娘から旦那を奪うようなことはしない」

「えっ?」


 耳元に、顔を近づけるルル様。


「ティリルは私の娘だ」

「リル姉って、リーンさんの娘じゃないんですか?」

「育てたのはリーンだが、産んだのは私だ」

「そうなんですか?」

「ああ。ある人族の男と私の娘だ」


 無理やり……?


「そんな顔をするな。

ティリルはちゃんと愛し合ってできた娘だ」

「どうやって、出会ったんですか?」

「気になるか?」

「はい」

「聞かせてやろう。あれは昔のことだ……」


 ルル様は懐かしそうに話し始めた。




ーー


「それじゃあ、帰ります」


 〈ゲート〉を発動させ、ルル様に告げる。


「ああ。ティリル」


 俺に背負われたティリルを呼んだ。


「なに?」

「幸せか?」

「うん。大事にしてくれるし、

ちゃんと相手してくれるから、すっごく幸せ」

「そうか。リョウタ」

「はい」

「ティリルをよろしくな」

「はい」

「後、お前とティリルの子どもが産まれたら、

見せに来てくれ」

「は、はい。早く見せられるように、頑張ります」

「ああ。達者でな」

「うん」

「それじゃあ、失礼します」


 ルル様が頷いたのを見て、〈ゲート〉をくぐった。






第十章 青年期前半 青年エルフの復讐編 ー終ー


次章 青年期前半 鬼王編

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