2-1 Boy meets kawaii girl.
ヒロイン登場。
王竜暦2976年、四月。
「母さん、出かけてくるね」
今は春、春は出会いの季節だ。
ていうことは幼馴染ができるかもしれない。
だから俺は外に出ることにした。
「外になにしに行くの?」
アクアさんが聞いてくる。
「友達づくりしに」
「お友達欲しくなったんだね〜。
いいよ」
よっしゃ。
「だけど、危ない場所には行っちゃダメだし、
暗くなる前に帰って来なきゃダメだよ」
「分かった」
「よし。じゃあ、いってらっしゃい」
「いってきます」
アクアさんとセラちゃんが笑顔で送り出してくれる。
始めようか、ヒロインちゃん探しを。
ーー
「誰にも会わずに森着いちゃったんですけど。
ヒロインちゃぁーん! どこにいるのぉー!」
森に俺の叫びがこだまする。
「はぁ、仕方ない。
魔術の練習でもしよ」
「よし、まずはあれ行ってみるか」
一本の木に右手を向ける。
そして、魔力を右手に集める。
イメージは先端を尖らせ、回転をかけた大きめの氷の砲弾。
「〈氷砲〉!」
キュン。
イメージ通りの氷の塊が回転しながら放たれる。
氷の塊は木に直撃して、直撃した部分を抉り、倒した。
「土属性の〈岩砲〉の方がいいかもだけど、
やっぱ氷の方がかっこいいよな」
右手を隣の木に向けながら独りごちる。
魔力をまた集め、イメージする。
「氷系ならこういうこともできるからな。
〈フロストブレス〉!」
右手から銀色の冷気が放たれて、数本の木と地面を凍らせた。
「〈フロストブレス〉、やっぱかっけえわ」
ーー
俺はキリのいいところで魔術鍛錬を終え、森を抜けた。
「あっ、女の子」
歩いていると、肩につくくらいの白い髪をした幼い少女が地面に絵を描いていた。
白髪?
白髪の人に会ったらよろしくって言われてなかったっけ?
ちょっと違った。
真っ白な髪と肌で赤い瞳の人に会ったらだ。
見ていると、女の子が振り向いた。
か、可愛い。
俺は目の前にいる幼女に惚れてしまった。
雪のように白い髪、白い肌、ルビーのような赤い瞳。
この娘、絶対美少女になるわ。
「こ、こんにちは」
アルビノ幼女は警戒してこちらを見ている。
どうしますか?
謝って逃げる。
→会話を続ける。
「僕はリョウタって言うんだ。
この村に住んでいる騎士の息子で、
怪しいもんじゃないよ」
人語を話すスライムだな。
「こ、怖くないの?」
女の子が上目遣いで聞いてくる。
この子、可愛しゅぎだろ。
心の声なのにかんじゃうほどの可愛さが怖いわ。
「えっと、どうして?」
「髪と瞳が真祖と一緒だから」
「怖がられたの?」
「うん。
みんなっ、怖がってっ、逃げてっちゃうのっ」
涙を袖で拭う女の子。
頭を撫でて、慰める。
「全然怖くないのにね」
「ほんろ?」
「うん。
むしろ、お嫁さんにしたいくらい可愛いよ」
頰を赤らめる女の子。
可愛い。
まさか、可愛さという名の凶器で俺を殺す気か?
ていうか、出会ってすぐの女の子に向かって、なに言ってんだよ。
「名前、なんていうの?」
「フィアーナ」
フィアーナ。
名前まで可愛いじゃん。
「なんて呼べばいいかな?」
「お父さんたちにはフィアって呼ばれてる」
「じゃあ、フィアちゃんって呼ぶね」
「うん」
「フィアちゃん。
お願いしたいことがあるんだ」
「お願い?
えっと、名前教えて?」
怖がらずに話しかけてきたのに驚いて聞いてなかったんだね。
「リョウタだよ。
母さんにはリョウくんって呼ばれてる」
「お願いって、リョウちゃんのお嫁さんになるの?」
リョウちゃんって。
美少女に成長しそうで、その呼び方。
フィアーナちゃん、最高です。
「そうじゃなくて、友達になってほしいんだ」
そう言った瞬間、フィアちゃんの瞳から涙が溢れた。
お嫁さんにしたいくらいとか言うやつとは嫌だよな。
「ごめん。嫌ならいいから」
首を横に振るフィアちゃん。
「違うの。
このままずっと友達なんてできないと思ってたから、
嬉しくて」
「じゃあ、友達になってくれるの?」
「うん」
よっしゃ。
「それじゃあ、手出して?」
「う、うん。はい」
フィアちゃんは左手を差し出した。
その手を左手で掴む。
「握手?」
「うん。友達になったから。
これからよろしくね、フィアちゃん」
「うん。よろしくね」
フィアちゃんは笑顔で答えた。
可愛い幼馴染、ゲットだぜ。
ピカーッ!