ティリルの待つ場所へ
「それじゃあ、龍化するので、少し離れていてくださいね」
ティリルを助けに行く俺、クロネ、リーネちゃんはユキから少し離れた。
すると、ユキの周りに水色の光の粒が現れた。
光の粒がどんどん増えていき、彼女の体を包みこんだ。
その瞬間、まばゆい光がここら一体を包んだ。
光が止み、目を開けると、視界にドラゴンが映りこむ。
ドラゴンは瞳、ツノ、翼の内側、ツメが水色で、銀色の鱗をしていて、美しい。
美少女なユキがこのドラゴンなんだから、美しいに決まってる。
『は、早く乗ってください』
この姿のユキを見るのはまだ二回目だから、表情は分からない。
だけど、声の感じで照れてるのが分かる。
美少女って言われて、照れるユキ、マジ可愛い。
「なにがマジ可愛いよ。
今はお姉ちゃんを助けに行かなきゃいけないのに」
今言ったこと、なんでリーネちゃんが分かるんだよ?
『思いきり声に出てたからですよぉ』
「ごめん」
ーー
「本当に風を感じない」
離陸して少しすると、隣に腰を下ろすクロネが呟いた。
「風を纏ってるからね。
後、飛行中は落ちないようになってるらしいよ」
「そう」
あんまり元気ないな。
「クロネちゃん」
「なに?」
「可愛いよ」
俺が言った瞬間、頰を赤らめ、下を向くクロネ。
「今はリルを助けにいくんじゃないの?」
「そうだけど。
クロネちゃん、元気なさそうだったから。
なんで、元気ないの?」
「リルに悪いことしたから」
そっちか。
ユキにだけ褒めたからかと思った。
「クロネちゃんは悪くないよ。
俺が二人に偏るからだよ」
「私たちが悪いの。
休みの日にフィアと一緒にリョウタと勉強してるから」
勉強とは数学のことだ。
休みの日に俺がフィアーナとクロネに教えている。
教え始めたきっかけは一年くらい前のこと。
ーー
「楽しい?」
暇だからと数学の勉強をしていると、クロネに聞かれる。
可愛い奥さんがいるのに、いちゃつかないなんてもったいない。
そう思うけど、できない。
いちゃついていると、にゃんにゃんしたくなる。
そこでしちゃうと、夜ができなくなると思ってできない。
「うん」
「それって勉強すれば誰でもできるの?」
「えっと、できる人もいれば、できない人もいるよ」
「私はできる?」
「勉強してみないと分からないかな」
「リョウタ、教えられる?」
「まあ、うん」
「その、教えてくれる?」
「うん。いいけど。
なんで教わりたいの?」
「リョウタと楽しいって気持ちを共有したいから」
クロネは照れて理由を述べた。
その照れた表情と理由が可愛くて、クロネを抱きしめた。
ーー
「リョウタ様、着きました。着陸しますね」
ユキが到着を知らせて、地面に着陸した。
「塔?」
ユキの背中から降りると、目の前に塔が建っていた。
塔は五階建てで、木でできている。
前に来たときにはなかった。
あいつが建てたんだろうな。
「お姉ちゃん、待ってて。
今すぐ私が助けるからね」
リーネちゃんが塔の最上階を見て、呟いた。
この娘、ほんとお姉ちゃん思いだな。
ティリルと百合りたいとか思ってないよな?
「リーネ、待って!」
「リーネさん、待ってください!」
バカなことを考えていると、クロネとユキが同時に叫んだ。
俺の周りにいたはずの三人が知らない間に塔の入り口にいた。
「なんで待たないといけないのよ!
お姉ちゃんがあいつにひどいことされてるかもしれないのに」
「一人で動くのは危なすぎるからです」
「焦る気持ちは分かる。
だけど、単独で動くより四人で動いた方がいい」
「分かったわよ。
一人で行動しない」