知らない所で君と
バスから降りると生ぬるい風にくらりときて、それと同時にああ、やっと着いたんだと実感した。
僕はケータイをポケットから取り出しメールを打ちながら、知らない土地の空気を吸い込む。焼けたアスファルトと排気ガスの混ざった匂い。都会だ。
「着いたよ、今から駅に向かう」
すぐには返事はこないだろう。疲れのせいかズッシリと重いリュックを僕は背負い直して、辺りを見渡した。
ビルだらけの中の知らない土地の字が書かれた青看板に目をやると、駅は少しここから離れているようだった。〇〇駅前通り。どうやら僕はそこにいるらしい。
土地勘は全くないけれど、まあ大きな駅だ、迷う事はないだろう。なるべく日陰を探して、ゆっくりと都会の街並みや道行く人を見ながら歩くことにした。
案の定道が分からなくなり、少し焦っていた時だった。ポケットの中から着信音がした。僕は慌ててメール画面を開く。
「私ももうすぐ着くよ」
周りの景色が見えなくなる、重かったはずのリュックが軽くなる。君は慌てた姿の僕を見て笑うかもしれない。でもそんなことはどうでも良かった。早く駅を見つけないと。
写真で何度も見た、大きなアーチ状の建物が見えてきた。汗だくになりながら、僕は走り出す。
早く君に逢いたい。
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