50話 【普通】
「がはっ! ぐっ……!? な、なに、が…………!?」
おー、すげぇすげぇ。
土手っ腹に穴が空いてんのに、結構元気じゃねぇの?
さすが魔族。
生命力も人間よりかなり高いってことだろうな。
「き、きさま、いったい、なにをした?」
魔族のしぶとさに感心していると、俺の隣にいたワンコが信じられないものを見るような目で、俺を見上げてきた。
…………あ、何かこう、おやつを目の前にぶら下げたのに、食べる寸前で引っ込められた時の四の顔にそっくり。
か~わ~い~い~。
「別に? スキルを使って撃退しただけだけど?」
が、内心のモフモフ萌えなどおくびにも出さず、俺はしれっと答えてやった。
嘘は言ってねぇ。
俺がこうして魔族を倒せたのは、全部スキルの力だ。
俺が今まで外れスキルだと思っていた、【普通】の、な。
今までの生活の中で発見した【普通】のメリット・デメリットは、【普通】の本質からズレた効果であり、メインじゃなかった。
本当の【普通】の力は、『普通を強制させる』という『理不尽』にあった。
突然だが、『普通』って何だ?
ユニークスキルとか関係ねぇ、自分が思う『普通』だ。
そう聞かれれば、誰もが自分の思う『普通』を思い浮かべるだろう。
もし仮に『普通』に対する自分の認識を、余すことなく説明できる奴らが何人もいるとして、それを大勢の前で説明させれば、どうなるのか?
答えは、『集まった人間の数だけ『普通』の定義が生まれる』、だ。
だってそうだろ?
『普通』ってのは、言い換えれば『常識』であり、価値観の『基準』だ。
国や文化や時代で簡単に変わるし、もしそれらが同じ条件でも人間の生まれ育った環境で、そいつの『普通』は大きく異なる。
誰一人として全てが共通する『普通』なんて、持ち得るはずがないんだ。
例えば双子、それも一卵性双生児を思い浮かべて欲しい。
彼らはほとんど同じ環境で育つが、将来的に分離不可能なほどそっくりなクローン人間のようになるか、と聞かれれば『否』だろう。
遺伝子も同じ、両親も同じ、幼少期の行動範囲も同じだが、わずかずつ環境に『ズレ』が生じる。
共通の人間関係があっても、その知り合いが双子と接する時、全員が一言一句同じことを同じ場所の同じタイミングで言えば、価値観にズレが生じないかもしれない。
が、そんなことは不可能だ。
どちらも独立した自己を持つ人間であるからして、片方が右へ行けばもう片方は左へ、といった事態は一生の内に必ず一度は生じる。
そんな、ほんのわずかな『差』が、双子でさえも『普通』の基準をほんの少しズレさせる。
結果、性格が違ったり、得意なことが違ったり、好きなもの・嫌いなものが違ったりしてくる。本人が気づかなくとも、そうした違いは必ず見つけられるはずだ。
故に、『普通』とは本来、絶対不変な概念ではなく、むしろ絶対不定でとても曖昧な概念と言える。
それを踏まえた上で、ユニークスキルの【普通】について考察する。
そもそも、【普通】とはどういう効果だったか?
====================
【普通】
何もかもを【普通】にする。
====================
『解析』さんによる説明は、これだった。
『何もかもを【普通】にする』。
『何もかもが【普通】になる』んじゃなく、『何もかもを【普通】にする』。
そう。
自然と変化するという意味の『なる』ではなく。
強制的に変化させるという意味の『する』。
つまり、【普通】ってスキルは。
『スキル保持者』の中にある『普通』って概念を、『あらゆる対象に押しつける』ってのが本来の効果だったんだ。
それが、俺が吸血鬼の魔法を受けても平気であり、簡単に倒せた理由に繋がる。
俺はずっと、地球の日本で生まれ育ってきた。
『普通』の両親の元に生まれ、『普通』にネグレクトをくらい、『普通』に学校でいじめられ、『普通』に孤独な時間をゲームで埋めてきた。
……字面にすると、なんて寂しい奴なんだ。
…………ま、まあ、それはそれとして。
そんな俺が日本で生まれ育ち、形成された『普通』の価値観の中に、『魔力』なんてものは『存在しない』。
そりゃそうだ。『魔力』なんて、ファンタジーの中にしかない架空の概念であり、地球の『普通』じゃ存在を本気で信じる奴の方が少ない。
それに何より、『魔力』を客観的に『観測』し、『存在する』と証明できた奴は、地球にゃいない。
つまり、現代日本にとって『魔力』は『存在しないもの』だ。
それは誰に指摘されるでもなく理解している『常識』であり、俺にとっては『普通』のこと。
すなわち。
俺のユニークスキル【普通】は、俺の『普通』を強制させる。
そして俺の、『日本人』としての俺の『普通』の中には、『魔力』という物質・概念は『存在しない』。
よって、【普通】を発動した俺にとって、『魔力』は『実在しないもの』として扱われる。
しかも、派生して『魔力』に関連したもの全ても、俺にとって『実在しないもの』と見なされる。
『魔力』で構築される『魔法』も。
『魔力』が必要不可欠な『この世界の生物』も。
『この世界の生物』とは質が異なる『魔力』を有しているという『魔族』も。
俺にとっては、みんな等しく『実在しないもの』なんだ。
だからこそ、『実在しないもの』であるが故に、『実在するもの』に対しては無力となる。
貞子と出会った時に指摘された【結界】。さっきのゴブリン。そして、吸血鬼。
無意識か意識してかは別にして、全部【普通】を纏った俺に、簡単に破られたという事実。
それが、何よりの証拠になる。
要するに、『日本人』の『種族』で【普通】を発動した俺にとって、『魔力』で構成されたこの世界のほぼ全ての存在は、『質量0』として扱われる、ってことだ。
まあ、俺が【普通】の他に取得したスキルは、大気中から得た『魔力』で問題なく発現してることから、何もかもを排除してる、ってわけじゃなさそうだ。
チビと戦闘になった時に【幻覚】を無効化できなかったのも、同じ理屈かもしんねぇ。
俺が『魔法を認識したい』=『魔法は存在する』と強く思い込んでたから、【普通】の効果が弱まった可能性がある。
それか、ユニークスキルだけは、無条件の無効化ができないのかもしれねぇ。貞子の【結界】を壊しただろう時も、きちんと『箱型の何か』を蹴っ飛ばした感触があったからな。
よって、【普通】と同格のスキル相手だと、チビん時とは逆に、スキルが『実在しない』ことを強く認識する必要があんのかもしれねぇな。
また、最初にワンコの肩に触れた時も【普通】を使っていたはずだが、『この世界の生物』であるワンコは無傷だった。
これは、当時俺が【普通】の効果を知らず、『日本人』と同じような感覚でワンコに触れたから、ギリセーフだったんだろう。
会長に手を払われた時の、ステータス判定の有無みたいな判定が働いたと考えられる。もし、俺が【普通】の効果を知って触れてれば、ワンコの肩を消滅させてたかもしんねぇな。
他に、『この世界の生物』の中で言えば、『異世界人』も【普通】の例外に入ることが予想される。
俺は過去、『異世界人』である会長に背中をさすられたり、チビの腕を極めたり、残念先生の腕を掴んだり、貞子を撫でたり抱きしめてあやしたりした時も【普通】を纏ってたはずだが、アイツらは吸血鬼みたいにやられたりはしなかった。
『種族』は『異世界人』で魔力を持っていても、俺にとっちゃアイツらは『日本人』だと認識されていた。
よって、『実在してるもの』と【普通】に認定されたため、無事だったんだろうぜ。
このように、【普通】が俺の『普通』に合致するかの『選別』が判定に影響しているとすれば、【普通】は思った以上に曖昧で複雑なスキルだと言える。
さらにややこしいことに、『種族』が『異世界人』で【普通】を発動した場合、【普通】の効果は『別の効果』になるだろうことも推測される。
『普通』の基準が『日本人の俺』から『異世界人の俺』に移るんだから、効果変動はむしろ当然だ。そん時の効果は、『異世界人』になって確認する必要があるだろう。
な?
とんでもない『屁理屈』の『理不尽』だろ?
だがまあ、俺らしいっちゃ、俺らしいスキルだ。
特に、『屁理屈』こねまくった『ややこしい』内容、ってところが、実に俺らしい。
【普通】がユニークスキルなのも、納得だよ。
他の奴らと同じくらい『理不尽』で、他の奴らにゃ理解できない異次元の『性質』で出来てんだからな。
「ば、かな……、あんな、…………化け物、を?」
しかし、ワンコは相当信じられないようだ。
俺と動けない吸血鬼に視線を何度も往復させて、今起きていることが現実かどうか確認しようと必死だ。
うわ~、なにこれ~?
マジかわいいんですけど~?
本当にも~、か~わ~い~い~。
「ふ、ざけ、るなぁ!!」
俺がすました顔のまま、困ったワンコのキョロキョロ顔に理性がぶっ飛んでいると、吸血鬼が腹を押さえて立ち上がった。
血が口や腹から止め処なくあふれ、苦痛に歪んだ表情からかなりのダメージがあると表情からわかる。
それでもなお戦意が衰えない姿に、俺はおふざけを引っ込めて称賛した。
「すげぇな。その傷でまだ動けんのか」
「わた、しはぁ!! ここ、でぇ、しぬわけ、にはぁっ!! いかんのだぁっ!!!!」
すると、吸血鬼は先ほどの魔剣の雨で発生させたよりも多い魔力を、余力も残さない勢いで放出した。
「ぐっ!! あぁっ!!」
途端に重くなった空気に耐えきれず、とうとうワンコは地面に倒れ込んでしまった。
魔法やスキルにさえなっていない純粋な魔力が、物理的な圧力を伴ってワンコを上から押しつぶしてんだろう。
だが、俺には全く影響がない。
平然と立ったまま、次の吸血鬼の行動を見据え、予測する。
「あああああっ!!!!」
一際大声で吠えたかと思うと、吸血鬼は大きな翼を広げ、膝を大きく曲げた。
ああ、やっぱり。
逃げる気か。
「させっか、よぉ!!」
だが、残念。
逃げるのがちょっとばかし遅かったようだな。
膝を曲げ、翼を広げ、大声を出す前に。
俺はテメェの行動を読んでたぞ?
「あああ、あぐあぁっ!?!?」
吸血鬼が飛び立とうとする直前、俺は小走りで吸血鬼に近づいて、地面を思いっきり蹴った。
野営地は木々が切り倒されただけで、細かな整地はほとんど行われていない。俺が拾い、武器にした小石なんかは腐るほどある。
それらを、上履きで思いっきり蹴りつけ、吸血鬼に小石や砂利を浴びせる。
もちろん、蹴飛ばした瞬間に全部の小石や砂利に【普通】をかけるのも忘れねぇ。
【普通】は『する』って言葉通り、《同調》なしでも他の物体に付与出来る性質を元々持っていた。
【普通】の性質に気づいてすぐ、こっそり俺の服一式に《同調》なしで【普通】をかけ直して確認したから、間違いねぇ。
さっき吸血鬼がただの小石でぶっ倒れたのも、小石に【普通】を付与したからだ。
ま、【普通】が元々有する付与の性質は《同調》と違い、俺が直接触れなきゃいけないらしい。小石を蹴った瞬間に【普通】を付与してやったんだな。
一応、上履き越しじゃ【普通】をかけられなかったとしても、蹴った小石に《同調》かけて【普通】を付与出来たから、問題はねぇ。
そして、同じように【普通】の凶器となった小石を食らった吸血鬼は、広げた翼に、腕や足に、極小の穴を無数に穿たれる。
常識的に考えて、小石や砂利を浴びただけで肉体に穴が空くとか頭おかしいとしか言いようがねぇが、それが【普通】の『理不尽』だ。
そいつが地球に存在しねぇ『魔力』を持つ限り、そいつがどれだけ『化け物』だったとしても【普通】の前じゃ『実在しないもの』に過ぎない。
極小の砂粒でも質量が『1』のと、存在自体が『0』とされたものじゃ、後者が蹂躙されるのは『自然の摂理』だ。
「ぐ……、あ…………」
翼と四肢に激痛が走ったらしい吸血鬼は、結局飛び立てずに再び崩れ落ちる。
俺がやったこととはいえ、なんか惨いな。
こんなことになるなんて、やった本人が一番びっくりだ。
「た、たおした、のか?」
「いや。まだ生きてるだろうよ」
魔力の圧力がなくなり、おそるおそる膝立ちになったワンコに、俺は吸血鬼の生存を告げてそちらへ歩み寄る。
「よぉ?」
「ぐっ、ふぅぅ」
そして、吸血鬼の顔がある場所にしゃがみ込み、髪の毛を掴んで顔を無理矢理上げさせる。あ、手の【普通】は切ってっぞ? ハゲさせるだけじゃ意味ねぇし。
バカ男四人衆と比べても美形だった顔が、今じゃ血と砂でぐっちゃぐちゃ。情けねぇ死に体になってやがる。
それでも、目だけは死んでいなかった。
肉体だけじゃなく、精神力も人間よりはるかに強いらしい。
「気分はどうだ?」
「さ、いあ、く、だ」
「だろうな。テメェの体にゃ、今微細な穴が貫通し、そこから血が流れ落ちている。このまま行くと、死ぬだろう」
「な、……に、を?」
俺はにっこり笑ってやると、吸血鬼は青紫だった顔をさらに青ざめさせ、血の気が引いた表情になる。
う~ん、そこまで恐怖を煽った覚えはねぇんだがな?
とはいえ、コイツにとっちゃ俺は、意味不明な防御能力と攻撃手段を持った『化け物』だからな。さらに意味不明な行動をとられちゃ、恐怖を覚えても仕方ねぇか。
「いや? 死ぬ前に少し、俺に付き合ってくれねぇか、と思ってね」
「っ!?」
めっちゃビビってた吸血鬼に対し、俺はまず掴んだ髪から《同調》を発動。これで吸血鬼も、俺の《同調》に取り込まれた。
そして、他人にゃ使ったことのない《機構干渉》を使用する。
====================
名前:レプス・レバス
LV:89
種族:魔族
適正職業:魔法剣士
状態:瀕死(《同調》)
生命力:200/7400
魔力:100/8800
筋力:680
耐久力:640
知力:720
俊敏:630
運:20
保有スキル
《魔力具象LV10》《詠唱破棄LV10》《連鎖魔法LV10》《広範魔法LV10》
『強化LV8』『剣術LV7』
====================
《機構干渉》は名の通り、ステータスをいじくることができるスキルだ。それで見た吸血鬼のステータスがこれになる。()内は、いわゆる隠しステータスって奴だろう。一般的な方法じゃ見れねぇ記述だな。
にしても、能力値高すぎじゃね? 魔族でこれなら、【魔王】はどんだけ? って話だ。そりゃ他の奴らは絶望するわけだ。
それはさておき。
《機構干渉》のLV1じゃほとんど出来ることは限られてて、今いじれるのはデフォルトである▼の複数項目と、スキル項目くらい。
ってわけで、ちょちょいのちょい、っと。
====================
名前:レプス・レバス
LV:89
種族:魔族
適正職業:魔法剣士
状態:瀕死(《同調》)
生命力:200/7400
魔力:100/8800
筋力:680
耐久力:640
知力:720
俊敏:630
運:20
保有スキル
《永久機関LV5》
====================
ほい、これで俺とお揃いだな。
あ、何をしたかというと、《機構干渉》で取得済みスキルを『破棄』し、代わりに別のスキルを『取得』させたんだよ。
スキル項目の変更には法則があって、すでに取得済みのスキルと等価値のスキルしか『取得』出来ない、っつう制限がある。
イメージは、スキルポイントを『破棄』で増やして、スキルポイントを消費して『取得』、って感じだ。
後、『取得』可能スキルは俺が知ってる範囲だけ。まだ《世理完解》じゃスキル情報が開示されてねぇから、強制的に『取得』させるスキルは限られてくる。
が、最低《永久機関》が取得できれば、俺の目的としては達成だからそれでいい。
いくつかあったレベル最大の上級スキルが、《永久機関》の『取得』とレベル上げで全部ぶっ飛ぶとは思わなかったがな。特殊上級スキル、ヤベェ。
《機構干渉》のスキルは普通、自分のみに効果があるもんだから、使われるとしたらステータスの向上を目的に使われる。
しかし、《同調》などのスキルにより、他人のステータスをいじれるようになった場合は、逆にステータスをそいつにとって不利なもんにする事が出来る。
一応、やろうと思えば俺が《機構干渉》を使うことで元のステータスにも戻すことは出来るが、今回は完全に俺の『敵』だ。
容赦する必要は全くねぇし、心置きなく『利用できる』。
ちなみに、《機構干渉》はスキル適正を無視して『取得』でき、代わりに性能が10%になるっつう制約があった。
が、《永久機関》はスキル適正による制限がそもそも存在しないらしく、《機構干渉》による『取得』でも100%の効果が発揮できるっぽい。《永久機関》、マジ奇病。
「あ、ワンコは寝とけ」
「な……? ぐっ!?!?」
と、その前に。
俺は《同調》を使ってワンコに干渉し、一瞬で気絶させた。
その時のステータスが、これになる。
====================
名前:フロウェルゥ
LV:45
種族:狼人
適正職業:闘士
状態:【普通】(【魔力枯渇】、『気絶』、(《同調》))
生命力:1800/2100
魔力:0/0【固定】
筋力:240
耐久力:180
知力:10
俊敏:290
運:55
保有スキル
《獣化LV5》《不撓不屈LV3》
====================
《同調》に《精神支配》を乗せて『失神』の効果を流し、『魔力』項目のみを【普通】の効果対象にして流したのが、このステータスだ。
『状態』の表記は【普通】になっちまったが、まあすぐには死なねぇだろ。
ワンコとは距離が離れていたが、さっきも言ったように、《同調》を通せば任意のステータスに【普通】をかけることもできる。
生物にやったのは初めてだったが、ワンコにかけられたため可能であると証明出来た。これで戦術の幅は大きく広がる。
で、ワンコに眠ってもらったのは他でもない。
これからちょっと、よい子とモフモフには見せられないことをするからだ。
「さぁて、そろそろ呼吸も楽になってきただろ? その代わり、脱力感や倦怠感は半端ねぇだろうけどな?」
「きさま、いったい、わたしを、どうする、つもりだ……?」
うんうん、さっきより言葉がはっきりし出したな。
だが、吸血鬼の疲労感は相当のようで、喋ることすら億劫そうにしている。目もトロンとして、今にも眠っちまいそうな勢いだ。
そりゃそうか。
何せ、現在進行形で、《永久機関》が魔力を吸って生命力を回復させてんだから。
====================
名前:レプス・レバス
LV:89
種族:魔族
適正職業:魔法剣士
状態:瀕死、魔力枯渇(《同調》)
生命力:1000/7400
魔力:0/8800
筋力:680
耐久力:640
知力:720
俊敏:630
運:20
保有スキル
《永久機関LV5》
====================
ふむふむ、LV5にもなると、回復速度も早まるのか。その分、消費魔力量もでかくなりそうだな。
「きいて、いるのか、きさま…………」
「聞いてるよ。ったく、『実験体』のくせにうるせぇなぁ」
疲弊している中でも気丈だった吸血鬼だが、俺の不穏な言葉に息を呑む。
「じ、じっけん、たい?」
「ああ、そうだ。どうせお前、ここで死ぬんだろ? っつうか、見逃せばまた襲ってきそうだから、遺恨を絶つために殺すのは確定してるし。
でも、そのまま死ぬのも、もったいねぇだろ? どうせ消える命だ、俺のスキルのレベル上げと、俺のスキルで何がどこまでできるか、お前で試させてもらおうと思ってな?」
ついでに、【魔王】や魔族の情報も漏らしてくれるとありがたいが、それはついでで構わねぇ。
何せ、【魔王】側の理由は今聞かずとも《世理完解》のレベルを上げ、閲覧可能範囲が広がれば得られそうな感じがするからだ。
それに、吸血鬼の【魔王】に対する信頼というか、忠誠というか、結構強いみたいだし、簡単に口を割るとも限らない。
後は、口を割る前に発狂して死ぬ方が、確率高ぇだろうしな。
せいぜい、俺の検証が終わるまで、壊れないでくれよ?
「それじゃあまず、《魂蝕欺瞞》からいってみようか? なぁに、安心しろ。実際に狂い死ぬほどの苦痛は、最後の検証に回してやっから、な?」
「ふざ、けるな……、わたしは、きさまなどに、くっしたり、しない……っ!」
「へぇ? じゃあ、最後まで耐えてみな。魔族さんよ?」
俺は口角だけを上げる、自分でもキショいだろうなと思う笑みを浮かべた。
吸血鬼は《永久機関》による魔力枯渇で顔色を悪くしつつも、強気に俺を睨み上げてきた。
その強気、どこまで保つかも、調べてみるか。
なかなかゲスいことを考えながら、俺はようやく試せる特殊上級スキルの効果に、胸を躍らせた。
====================
名前:平渚
LV:1【固定】
種族:日本人▼
適正職業:なし
状態:【普通】
生命力:1/1【固定】
魔力:0/0【固定】
筋力:1【固定】
耐久力:1【固定】
知力:1【固定】
俊敏:1【固定】
運:1【固定】
保有スキル【固定】
【普通】
《限界超越LV10》《機構干渉LV1》《奇跡LV10》《明鏡止水LV1》《神術思考LV1》《世理完解LV1》《魂蝕欺瞞LV1》《神経支配LV1》《精神支配LV1》《永久機関LV1》《生体感知LV1》《同調LV1》
====================