38話 合同訓練
俺が《奇跡》で生還してから、一週間が経過した。
生死をさまよっている間に季節は流れ、すっかり空気は冷たくなっている。
この国は大陸の最南端にある、っつってたが四季はがっつりあるらしい。
ちょっとだけ、この国は年中南国気候で、凍死なんてあり得ない! ってことを期待していたが、冬は問答無用で来るんだろうな。
まあ、《永久機関》のおかげで、魔力さえあれば生きれる体になっちゃいる。恒温動物ほ乳類人間、舐めんじゃねぇよ。
とまあ、それはさておいて。
この一週間でしたことと言えば、ずっと疎かになってた古書解読と、《世理完解》の確認くらいだ。
何せ、あれからメイドはおろか、誰一人この牢屋を訪ねにくる奴がいねぇんだもんよ。
俺に餓死しろってか? いや、《永久機関》のおかげで餓えで死にはしねぇんだが。
というわけで、やることが一気に狭まった俺がまともにできたのは、脳内での情報整理くらい。《神術思考》で思考を二分割し、同時進行でやっていたんだが、驚きの事実があった。
まず、《神術思考》の説明にあった1世界っつう謎単位。これがマジでこの世界の広さと同じかもしんねぇ、ってこと。
なんたって、『禁書庫』にあった古書を、作業後数時間で解読できたんだからな。全く読めていなかった言語を完全に解読するのに、数時間とかありえねぇだろ。自分でやっといてアホかと思ったわ。
そして、それ以上の衝撃だったのが《世理完解》の知識が膨大すぎる、っつうこと。
確認していって気づいたが、どうやら現代の世界の情報を主とした知識が大ざっぱにまとめられてんのが、《世理完解LV1》の内容らしい。
古書解読が終わってからは、この一週間ほとんどの思考領域を《世理完解》の把握に努めたが、未だに底が見えねぇ。《神術思考》を使ってこれなんだから、レベル上げが可能かどうかも怪しくなっている。
ついでに、《神術思考》もレベルは上がらん。ずっとフル稼働させてきた、っつうのに。経験値の蓄積率とかどうなってんだ、マジで?
これが特殊上級スキル、ってもんなのか? 怖くて手をつけられねぇ他のスキルも、レベル上げは相当苦労しそうだな。
後は、食って消化したり、掃除道具として消えちまった、五ヶ月分の記録の復元もやっていた。
無事な紙はほとんどなく、メイドもこねぇから補充も出来ねぇ。よって、残せる情報はかなり限られてくる。
一晩ゆっくり寝てから生き残った羊皮紙もどきを調べてみると、日記のほとんどがなくなっていた。どうやら、俺が食い散らかした紙のほとんどが日記だったようだ。
あん時は極限状態だったし、やらなきゃ死んでたからな。それ自体に後悔はねぇ。
が、《神術思考》にある記憶を漁って書き残してくの、結構面倒くせぇんだよな。じゃあやらなきゃいいじゃん、と思うかもしれんが、やることねぇから暇なんだよ。
他にも、汚れまくった学生服は洗濯してぇが水がねぇし、俺の精神暗示とかは解き方が結局わからなかったし。
それに、あん時の精神系スキルは《奇跡》と《限界超越》によって、アホなことになっていたはずだ。LV1の威力しかない今の状態じゃ、多分戻せねぇんじゃねぇかと思う。やり方がわかったところで、どうしようもねぇ。
とはいえ暇っつっても、外にはいつでも出れただろう。やったことはねぇが、スキルの知識を使えば、今ある道具だけでピッキングとか余裕で出来そうだし。
なのにそうしなかったのは、クソ王たちが全く動きを見せねぇのが怪しくて、迂闊に行動できなかったからだ。
もうずっと密偵らしき視線がなく、【普通】でも《生体感知》でも、別の牢屋にいる奴らの反応しかねぇ。
俺が《同調》で密偵を遠隔殺害したのを、相当警戒してるようだ。安易に新たな密偵を送れば、また殺されるかもしれねぇって思ってんだろうな。
ってことは、暗にクソ王は俺が『何かした』ってのはわかってても、俺が『何をしたか』ってのはわかってねぇな。
ついでに、俺をずっと監視していた密偵は、この国本来の戦力じゃなく、イガルト王国に仕えていたイガルト人だった可能性も高まった。使い捨てにしていいんだったら、今もまだ俺に監視がついているはずだしな。
クソ王だったら、元々の国の戦力を奴隷化させて、馬車馬のごとく働かせると思ってたんだが、密偵に関しては事情があるらしい。
推測として挙げるとするなら、情報を取り扱う部隊は信頼の置く配下で固めたかったのか、そもそもこの国に密偵という概念がなく、使えそうな人材がいなかったのか。この二つの内どっちかになるのか、あるいは両方ってとこだな。
そう判断した理由は、古書を集めた部屋の『禁書庫』の古代文字が、獣人が主に使う言語の流れを汲んでたからだ。
つまり、この国は元々獣人の国らしい。
んで、それがどうして密偵のいない証明に繋がるかというと、今まで調べた資料によると、獣人はぶっちゃけ頭が悪い。獣人の著書は全部、文章から脳筋なのが伝わってくんだよ。
獣人一の頭脳の持ち主、って自称してた奴の本を読んでみたけど、『この時代のこの戦争は勇猛果敢な英雄による独壇場だった!』とかほぼ感情論で書かれてたからな。俺が知りたかったのは戦争に勝利した戦術の方だったんだが。
《世理完解》で調べたところ、獣人の中にゃちゃんと密偵に向いた種族もいる。
が、ほぼ全種族がステータスによる真っ向勝負を好む傾向にあり、情報戦は卑怯以外の何物でもねぇらしい。戦闘系スキルの任意使用すら、獣人にとっちゃ邪道で軽蔑される行いだそうだ。
そんな種族じゃ、【魔王】迎撃の捨て駒には出来ても、情報収集は確かに難しいだろうな。情報の価値を理解できない奴に情報収集させても、ピント外れの報告しかしなさそうだし。
それなのに蔵書量が豊富だったのは、歴代王族の誰かに蒐集癖でもあったんじゃねぇかな? ジャンルがすっげぇ雑多だったし、本が好きで集めるだけ集めた、って感じだったしな。
ってわけだから、少なくとも俺が殺した5人の密偵は、イガルト人だったと予想できる。やったぜ。
そんで、あちらさんが動かねぇから、俺もまた不審な動きに出るわけにはいかねぇ、と。下手な動きをして、揚げ足を取られちゃたまったもんじゃねぇからな。
《世理完解》でクソ王の思考や戦力なんかもわかればよかったんだが、あくまで『世界の記録』が《世理完解》の範囲なわけで、『個人の記憶』は専門外らしい。
同じ理由で、完全に『個人の技能』であるユニークスキルの情報も、《世理完解》にゃ載ってねぇらしい。これで【普通】の謎も全部わかると思ってたが、甘かったようだ。
この国の詳しい地理とか、都市の情報なんかはあっさり出てきたんだけどな~。
ま、無い物ねだりなんてしてもしょうがねぇ。こっちにゃ《世理完解》っつう膨大な知識がある。大抵のことは、どうとでもなるだろ。
「…………ん?」
全裸のまま、日記の復元作業を進めながら《世理完解》を読み進めていたら、不意に《生体感知》に反応があった。
俺からの距離を考えりゃ、牢屋の外からだな。足取りに迷いがなく、真っ直ぐこちらに向かってきている。
ようやくお呼びか。はてさて、俺を殺したい奴らが、俺に一体何の用なのかねぇ?
「……うっ!? げほっ! ごほっ! ……おえっ!?」
すると、《生体感知》で感じた気配は俺の牢屋の前に来ると、突然噎せだした。
最後なんて嘔吐しかけやがったな?
何か? 俺の牢屋はそんなに臭ぇってのか?
…………否定できる余地がねぇ。
「あ~、大丈夫か?」
あまりにも咳き込む声が長引いていたので、俺は思わず相手を案じる声をかけた。
俺はずっと《神経支配》で嗅覚を遮断してっから気にならねぇだけで、常人にはきつかったのかもしれない。
また、相手を気遣ったのは主に《精神支配》の常時『冷徹』のおかげだ。誰が相手でも感情が波立つことがねぇし。今の俺なら、クソ王相手でも平静に会話できる自信がある。
「う、ぐぅ、で、でろ……」
牢屋の扉の外ですっげぇ苦しそうなおっさんの声がしたかと思うと、扉が解錠される音が響いた。
俺は仕方なく、唯一の着衣である汚物悪臭兵器の学生服を着て、牢屋を出る。
「とりあえず、外に出ようぜ。辛いだろ、アンタ?」
「…………」
扉の外に出ると、鼻を押さえて俺に背を向けうずくまった、兵士っぽい影のおっさんがいた。
めちゃくちゃ苦しそうだったし、俺はおっさんの肩に手を置いて出口へ促す。
暗がりで振り返ったおっさんは、俺が平気そうな様子をしていたことに目を丸くしていたが、特に返答もなく俺を先導しだした。
すっげぇ早足で。
あ、俺を置いて自分だけ出て行きやがった。
俺の服のせいでもあんのか?
「っと。改めて、大丈夫か?」
二ヶ月と三週間ぶりの外の光に目を細めつつ、俺は壁に手をついて臭いと格闘しているおっさんに声をかけた。なるべく配慮して、ちょっと距離は取ったままな。
日差し的に、今は朝方らしい。
最近は《世理完解》で時間を確認してただけだったから、朝とか夜とかどうでもよくなりつつある。《永久機関》のおかげで眠気がねぇのも要因だろうがな。
「……よぐ、あ゛んなへやに、い゛られる゛な? あぎれをどおりごしで、ぞんげいにあ゛だいずるぞ」
すると、まだ鼻を押さえたまま、涙目になっていたおっさんが振り返った。
鎧はイガルト人の兵士が着てた一般兵と同じで、イガルト人よりも二回りは体がでかい。そして、それ以上に首から上が犬か狼っぽい頭だった。
毛の色は灰色、いや銀色っつった方がいいな。全力で鼻を手で包み、ボロボロ涙を流す姿は、凶悪な顔に反して愛嬌がある。
おぉう、このおっさん、獣人だったのか。
しかも、嗅覚が鋭い犬型。
何となく、俺だけじゃなくて獣人のおっさんへの嫌がらせにも思えるな。
あの部屋と俺の服、人間の嗅覚でもかなりの悪臭だからな。
むしろ、このおっさんはよく堪えてたもんだよ。
ちなみに、人ベースの獣人と動物ベースの獣人の二種類いて、親が片方に寄ってても遺伝的には半々で生まれてくるらしい。
ついでに、鋭い嗅覚などの種族特有能力も、人ベースでもばっちり備わっているそうな。個体差はあるそうだが。
う~ん、ファンタジー。生命の神秘だな。
「そりゃどうも。で、アンタは俺をどうしたかったわけ?」
「…………おばえは、お゛れをみでも、どうじないのだな?」
「顔が犬っぽいだけの『人』だろ? なんだ? 驚いてほしかったのか?」
まだ鼻がイカレてまともに話せないおっさんが、訝しそうな視線を俺に送る。
確かに、スキルもなんもねぇ状態の俺だったら、驚いて腰抜かしてたかもしんねぇ。
が、俺の《精神支配》は年中無休で仕事をしている。次の瞬間後ろから心臓を刺されたとしても、動揺しねぇくらいには『冷徹』の効果も絶好調だ。10%だけだが。
ともあれ、おっさんが獣人だったくらいで驚いてやるほど、俺の驚きハードルは低くねぇよ。
「……ふん゛。なばいぎなにんげんだ。づいでごい」
鼻声が治らねぇおっさんに先導され、俺も歩き出す。服の臭いでおっさんが卒倒しないよう、かなり距離を置いたままな。
その間もおっさんは鼻を頻りに気にしていて、頭の上についている犬耳もピコピコ動いていた。
あー、癒されるわぁ。アニマルセラピー、パネェ。
「…………お゛い、ぞのうっどおじいじぜんをやべろ」
ちっ、気づいてやがったか。
いいじゃねぇか、暗所閉所激臭の殺人三連コンボ空間にどんだけいたと思ってんだ? ガチムチワンコの反応を楽しむくらい、罰は当たんねぇだろ?
だがまぁ、さすがにおっさんの犬耳に癒されてましたなんて言えねぇし、無難な返答をしておくか。
「俺を連れ出す目的を聞いてねぇ」
「……いぜがいじんの、ごうどうぐんれんだ。おまえもぞれにざんがするのが、ディプスのめいれいだ」
合同訓練? 『異世界人』の?
雰囲気からして、俺抜きで何度かやってたっぽいな。
で、今回は俺も参加しろと。
命令した奴の名が、ディプス。クソ王だな。
仮にも国王を呼び捨てとは、獣人からはえらく嫌われてんな、クソ王の奴。
まあ、獣人にとっちゃイガルト人は侵略者だからな。毛嫌いされて当然だわな。
「『おいおい、今はこの国の君主だろ? いくら鼻声だっつっても、国王の呼び捨てはマズいだろ?』」
「っ!?」
ちょっとしたからかい半分で、俺が肩をすくめたところ、犬顔のおっさん……、面倒だな、ワンコでいいか。ワンコは勢いよくこっちを振り向いた。
……臭いに配慮したから、ちょっと距離が遠い。
「『貴様、どうして我が種族の言葉を!?』」
「『本で覚えた。独特だよな、獣人の喉語って。喉の鳴らし方で意味を持たせてんだろ?
他の人種には通じねぇのに、獣人同士なら他種族でもある程度わかるし、共通認識が出来上がってる隠密性の高い暗号言語だ。イガルト人の悪口にゃ、こっちのがピッタリじゃねぇの?』」
俺が流暢に喉語を話す様子に、ワンコは足も止めて凝視してくる。鼻を押さえたままなのがかわいい。
喉語ってのは、簡単に言えば獣人の唸り声で、獣人特有の言語だ。音の強弱や長短、高低なんかで意味が変わる、恐ろしく複雑で発音が曖昧な言語として知られている。
本で覚えた、ってのは嘘で、実際は《世理完解》に載ってた知識の一つだ。
獣人が書いた本も読んだが、さすがに発音記号まで載ってた訳じゃねぇからな。意味が分かっても、発音なんざ普通は出来ねぇ。
余談だが、獣人の文字は喉語がベースらしく、五線譜と点字を足して二で割ったような文字だ。一節の中に点をどこにどれだけの大きさで打つかで、意味が全く異なる。言語としても、かなり難解な部類だな。『禁書庫』って書かれてた文字も、この喉語がベースだ。
だが、《世理完解》で確認した知識は、こうして獣人以外が覚えられないとされている喉語の扱いも可能としている。
話し相手なんていなかったし、ぶっつけ本番だったが、案外簡単だったな。喉がすっげぇ震えてかゆくなるくらいで、同族以外にはわからず、長文の発音も人語より短いとくれば、排他的な言語だが中々優秀だ。
なんでこんな便利な言語を使える種族が、密偵嫌いなのか不思議でならねぇ。
「『いくら国を乗っ取られたからっつっても、表だって堂々と非難すりゃ、ただ粛清されるだけだぜ? クソ王に一泡吹かせてぇなら、陰で同士を集めて反撃の牙を磨く方が、余程効率的だ』」
「『……貴様も、そうだと言いたいのか?』」
「『さてな。少なくとも、プライドを捨てられず犬死にするより、卑怯でも邪道でも軽蔑されても生き足掻く方が、俺の性には合ってるよ。実際、こうして生きてるんだからな』」
「…………」
感情の起伏なく、強い死臭を身に纏い、淡々と述べる俺の姿に、何を見たのか。
ワンコはそれきり黙り込み、再び俺に背を向け歩き出した。
俺も特に話したいこともなかったから、無言で犬耳について行く。
……距離が離れてんのもあるけど、鎧のせいで尻尾が見えねぇ。感情に合わせて動くっつうモフモフ、見たかったなぁ。
実は俺、動物好きなんだよね。人間と違って、餌付けすりゃ懐いてくれっからな。
よく野良犬とか野良猫とかに餌やったり、ペットショップの動物を見て癒されてたりしたもんだ。
野良で仲良くなってた一に二に三に四に五に六に七に八に九に十、みんな元気かなぁ?
目の前のワンコみてぇな野犬感バリバリの野良犬はいなかったが、犬に変わりはねぇよな。
あ~、人間より癒されるわ~。
「……ごごだ」
まだ鼻がイカレてんのか。早く治ると良いな、ワンコ。
で、ワンコが指さしたのは、兵士の訓練場の一つ。
確か、城内で広さが一番の野外訓練場じゃなかったか?
まさか、『異世界人』の合同訓練って、千人弱が全員集まってんじゃねぇだろうな?
え~、面倒くせぇ。フケてぇなぁ。
「ざっざどいげ。おれば、ごごがらざぎにはいげんがらな」
「あいよ、案内ご苦労さん」
俺はなるべくワンコを遠回りするように、訓練場の入り口に歩いていく。
人間には厳しくても、動物には優しく。
それが俺のポリシーだ。
「『あ、そうだ。最後に一つ、お節介だ』」
が、途中で足を止め、喉語に切り替えてワンコに振り返る。
「『命を賭ける場所は間違えんなよ? ディプスに、俺に近づくと死ぬ、って聞かされてたんじゃねぇか?』」
「『なっ!?』」
図星か、ワンコは大いに狼狽え俺を見返す。
やっぱりな。変だと思ったんだよ。
今までずっと俺を呼びにきてたのは、イガルト人のメイドだった。
それが、いきなり獣人のワンコに変わったんだぞ?
俺が密偵を殺した件が原因なのは明らかだ。
推測じゃ、ワンコは『死んでも構わねぇ伝令』として俺に寄越された、って思ってたんだが、反応からしてビンゴらしい。
「『どうせなら、クソ野郎の命令で死ぬより、テメェの意思で死んでみせろ。それが、生まれた瞬間から生粋の武人たる獣人の誇りだと、俺は思うがね』」
が、俺は言いたいことを言い終えると、さっさと背を向けて歩き出す。
言葉そのものは本音だが、わざわざそれをワンコに伝えたのは完全なお節介だ。
それをどう捉えるかは、ワンコ次第だな。
「『じゃあな。せめて、アンタの行く末をノイルに祈っててやるよ』」
手をひらひらと振り、ワンコとお別れする。
ちなみに、ノイルってのは獣人が崇める大英雄の名だ。獣人の歴史の中で、獣人なら誰もが認める最強で最高の戦士だったらしい。
ノイルに祈るってのは、ノイルにそいつの命運を頼むって意味。
まあ、わかりやすく言えば『武運を祈る』ってことだ。
「『ま、まてっ! 貴様、何故そこまでっ!?』」
背後じゃワンコが吠えて引き留めてきたが、これからは俺の戦場が待ってんだ。
俺の脳内では、お座りしたまま悲しそうな目で「クゥーン……」って、切なげに鳴く大型犬の姿が見える。
構ってやれねぇんだよ。ごめんな、ワンコ。
ああ、俺の癒しよ、さらばだ。
心の中で未練を断ち切り、久しぶりのモフモフ成分を補給した俺は、『異世界人』が集まる死地に足を踏み入れた。
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名前:平渚
LV:1【固定】
種族:日本人▼
適正職業:なし
状態:【普通】
生命力:1/1【固定】
魔力:0/0【固定】
筋力:1【固定】
耐久力:1【固定】
知力:1【固定】
俊敏:1【固定】
運:1【固定】
保有スキル【固定】
【普通】
《限界超越LV10》《機構干渉LV1》《奇跡LV10》《明鏡止水LV1》《神術思考LV1》《世理完解LV1》《魂蝕欺瞞LV1》《神経支配LV1》《精神支配LV1》《永久機関LV1》《生体感知LV1》《同調LV1》
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