31話 スキル調査その10
「…………」
どれくらい、経っただろう?
ひざまずき、両手で顔を覆って、泣き疲れるまで、泣いた。
涙は涸れた。
声も嗄れた。
でも、気持ちは妙にすっきりする。
胸のつかえが解きほぐされた、開放感。
『冷徹』とは違う、自然と頭がはっきりした感覚が心地いい。
何も考えず、独りで大泣きしたことで、ずっと溜まっていた鬱憤が消えたのが原因だろう。
今まで、泣くことは、情けない姿をさらすことは、弱みだと思っていた。
四六時中監視されているさなかに、敵に隙を見せる行為だと、思っていたんだ。
でも、ずっと張りつめすぎてたら、いずれ自爆する。
俺のように。
加えて、俺の場合は環境も最悪だった。
外に出られるとはいえ、ストレスが何倍にもなる暗所閉所に半日閉じこめられ続け、満足な栄養も休息も得られず、他人と接する時間がほとんどない、孤独と過ごす毎日。
最初は、独りの方が気楽だと思っていた。
他を気にせず、自分のやりたいようにできるから。
日本にいた時と同じだと、軽く考えていた。
だが、俺は『独り』って言葉の本当の意味を、理解していなかった。
『独り』は、刺激がない。
外からの刺激は、日々の生活に起伏をもたらす。
家族や同級生にバカにされるのも、罵られるのも、殴られるのも。
テレビのバラエティで笑うのも、ゲームで平面の女の子相手にニヤニヤするのも、音楽で気を紛らわせるのも。
それらが『他人から与えられる刺激』だっつうことは共通している。
俺に与える影響は真逆でも、それだけは変わらねぇ。
それら一切を排除した状態が、『独り』なんだ。
俺は、『独り』が長すぎた。
それか、ほぼ一ヶ月ごとにあった『異世界人』との邂逅で、気づくのが遅れてたんだろう。
変化のない日々。
喜怒哀楽が抜け落ちた、無味乾燥な規則行動。
報われないことばかりで、気力がどんどん削られていくだけの時間。
そうして削り落とされて残ったのが、さっきまでの俺だった。
心身ともにボロボロになって。
『生』に求める水準がどんどん低くなって。
ついには何のために生きたかったのか、生き甲斐さえ見失って。
生きることだけにとりつかれた亡者になっていた。
それでもなお、俺が自分の状態に気づけていなかったら、マジでぶっ壊れてただろう。
感情をなくし、理性をなくし、心をなくして、狂ってた。
そんな最悪を教えて防いでくれたのが、新しく覚えたスキルだったんだ。
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『慟哭』
どんな状況でも号泣する。レベルにより密度が増加する。LV1につき1分加算される。効果中は他の干渉による解消を妨害する。ただし、『冷徹』以上の鎮静効果を持つスキルの使用で上書きされる。感情が一方向に定められ、効果中は自然には反転しない。類似の効果を持つスキルは併存する。効果中、あらゆる刺激が涙を誘発させる。効果の程度は認知の有無に問わず、所有者の精神状態に依存する。効果終了後、精神状態はリセットされる。
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『怠惰』
どんな状況でも無気力となる。レベルにより密度が増加する。LV1につき1分加算される。効果中は他の干渉による解消を妨害する。ただし、『冷徹』以上の鎮静効果を持つスキルの使用で上書きされる。精神状態が固定され、効果中は自然には反転しない。類似の効果を持つスキルは併存する。効果中、あらゆる刺激に無頓着になる。効果の程度は認知の有無に問わず、所有者の精神状態に依存する。効果終了後、精神状態はリセットされる。
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『沈鬱』
どんな状況でも感情を鬱で満たす。レベルにより密度が増加する。LV1につき1分加算される。効果中は他の干渉による解消を妨害する。ただし、『冷徹』以上の鎮静効果を持つスキルの使用で上書きされる。感情が一方向に定められ、効果中は自然には反転しない。類似の効果を持つスキルは併存する。効果中、あらゆる刺激が否定的な認識に偏重する。効果の程度は認知の有無に問わず、所有者の精神状態に依存する。効果終了後、精神状態はリセットされる。
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『共感』
他の生物の心理状態を理解する。レベルにより親和性が上昇する。LV1につき10%の補正がかかる。任意で発動。対象の数が少ないほど、より深い理解を得られる。効果の内容に善悪正否を問わない。他の生物の心理を理解しても、所有者の精神構造に影響は与えない。長期間同一対象に使用すると、より深く対象を理解できる。ただし、長期間同一対象に使用すると、対象の精神と融合する可能性がある。『不屈』以上の精神固定効果を持つスキルにより、精神融合の危険を回避できる。
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『慟哭』は俺の悲しみの度合いに応じて、泣き喚くスキルだ。
俺の中にある悲哀の感情を一気に放出する、って感じだな。
「落涙」からの『慟哭』って、泣きのレベルがかなり離れてる気はするけど。
で、度が過ぎるとさっきの俺みたいになって、何もかもがどうでもよくなるくらいに号泣するんだろう。
どっかの県議会議員も真っ青だぜ。
『怠惰』は強制的にやる気がゼロになるスキルだな。
取得条件は、今日一日の行動だろう。
今までの行動からしたら考えられないほど、俺は今日という日を無為に過ごした。
そのギャップで、「無気力」から一気に『怠惰』へジャンプアップしたんだろう。
逆にいえば、たった一日のサボリで『怠惰』の条件に合致し、さらにレベルが最大になるくらい、俺はずっと無理をし続けていたってことだ。
少しくらい気を抜く余裕を持て、って叱られた気分だよ。
『沈鬱』は超ネガティブになるスキルなんだろう。
下級が「憂鬱」だし、ニュアンス的にもそれ以上の鬱っぽい状態になっちまうんだろうな。
ここ最近の精神状態を考えりゃ、頷くしかねぇスキルだな。
とまあ、これら三つの感情系スキルは、例によって戦闘にゃ使えねぇスキルばっかだった。
が、今回の『解析』さんの説明が増えたおかげで、気づけた部分もある。
それが、『効果の程度は認知の有無を問わない』って表記だ。
つまり、これらのスキルは俺が認識している感情だけでなく、無意識にたまった感情をも引き出す効果があんだろう。
そして、『慟哭』、『怠惰』、『沈鬱』に共通した説明であるからして、他の感情系スキルも同じ効果があると考えられる。
この推測が正しければ、今まで俺がスキルのせいだと思っていた感情由来の奇行は、全部感情を抑圧してた俺に原因があった可能性が高い。
他に何もできなくなるくらい深く強い感情を作って、スキル取得だけをきっかけにすべて吐き出す。
それを繰り返していたからこそ、感情系スキルはずっと取得と同時にレベルが最大になっていた。
それくらい、俺は理性を優先し、感情を殺しすぎていたんだ。
本来、恐怖や羞恥や笑いだけで、正気を失い異常行動に支配されるまで、感情をためるバカはいないだろう。
が、俺には【普通】と『冷徹』があった。
【普通】は波だった精神状態を【固定】し、『冷徹』は他の感情を押し込めて強制的に正気に戻す。
この二つの組み合わせがあったからこそ、俺の感情の行き場は俺の中にしかなくなり、スキル取得のきっかけを与えられて、ようやく爆発できていたんだ。
いわば、自業自得。
中には【普通】の反動もあったんだろうが、大元は俺が無理をしすぎていたことに気づかなかったことが原因だ。
それを、散々こき下ろしてきた感情系スキルに教えられた。
バカだよな、俺。
最後の『共感』は、他人の気持ちを自分の感情のように理解できるスキルだ。
下級の「共鳴」がどこまでできたかは知らねぇが、少なくとも俺は貞子の恐怖をほぼほぼ理解できていた。
そんな泣きじゃくる貞子に同情し、感情移入したのが原因だな。
同時に、『慟哭』の取得条件を満たした原因でもありそうだ。
つまり、俺は貞子のもらい泣きで『慟哭』を取得した、かもしれねぇ。
ついでに、貞子きっかけの『慟哭』で泣き続けることで『共感』の経験値もたまり、一気にレベルが最大になったんだろう。
そう考えると、今までで一番情けねぇスキル取得かもしんねぇ。
ため息しか出ねぇな、はぁ。
何にせよ、今回のスキル取得により、俺のためすぎた感情の膿はほぼ完全に排出したと考えて良さそうだ。
崩壊寸前だった精神も、感情系スキルによる状態リセットで持ち直すこともできた。
一ヶ月前の『歓喜』と『抱腹絶倒』の凶悪コンボは、そういう意味じゃ、俺の精神を延命させてくれてたのかもしれない。
死にスキルだと思いこんでいたそれらが、俺を救ってくれた。
今までずっと、救ってくれていたんだ。
「…………ははは」
そこから俺が気づいたことは、小さなことで、綺麗事で、ガラじゃねぇけど、大事なこと。
この世には、完璧な『役立たず』なんて、ないんだ。
無駄なものなんてない。
いらない存在なんてない。
『いらない』と決めつけた誰かがいても、『必要』と求めてくれる誰かがいる。
『不必要』だと吐き捨てた裏に、『不可欠』な何かがそこにはある。
スキルにも。
俺にも。
ドジでノロマで意気地なしで臆病だと自称した貞子に、理不尽なまでの『守護魔法師』と『空間魔法師』があったように。
クズでカスで底辺でぼっちな俺にも、他人にはない『武器』がある。
そう、信じることができた。
認めることができた。
俺自身が、『俺』という価値を。
まだ、『武器』が何かは、見つけられてはいないけど。
『武器』があるってことだけは、疑わなくなった。
俺はまだまだ独りで、貞子のように頼れる何かから『力』をもらえない。
でも、独りでも俺は、ようやく、立ち上がるくらいの『力』が、湧いてきた。
俺を苛んでいた『死』が迫る空想の中で、地べたを這っていた俺の目線が、高く上がる。
それだけで、世界が変わる。
脆弱な身体が悲鳴を上げ、足が震える。
立つことだけが精一杯。
それでも、俺は一歩を踏み出す。
背後の奈落に唾でも吐いて、絶望の先を進んでやる。
バカにされてもいい。
みっともなくてもいい。
得られた結果が他人にとってはクズ以下にしか見えなくても、構わない。
それが俺にとって『意味あるもの』なら。
俺が『無意味』じゃないって、胸を張れるんだから。
「うっ、ぐっ……」
泣き疲れて疲弊した身体にむち打ち、俺は石のベッドに倒れ込んだ。
さすがに今日は、もう何もできないだろう。
だったら、少しでも休んでおくべきだ。
今までの自分を演じれられるように。
これからの自分を隠せるように。
イガルト人や『異世界人』に気づかれないように。
生きる気力が戻ったんだ。
次に体力を取り戻さねぇと、話にならねぇからな。
「…………」
そう考えて、『不眠』や『覚醒睡眠』で誤魔化してきたおかげか、随分久しぶりに思える自然な睡魔に身を任せようとした時だった。
気力と体力という言葉に、わずかに引っかかりを覚えた俺は、『並列思考』の一つにある疑問が浮かんだ。
(気力と、体力……、二つの、力…………、『二つ』?
そういや、貞子の『適正職業』も、『二つ』あったな…………?)
意識が朦朧とする微睡みの中、取り留めのない思考がたどり着いたのは、貞子の『適正職業』だ。
会長、チビ、残念先生は一つしかなかったそれを、貞子は二つも背負っていた。
それは【結界】のスキルが持つ攻防一体の特性故だ。
俺の推測は、間違っちゃいないだろう。
でも、何かが引っかかる。
何だ?
俺は、何かを、見落としている?
(力、二つ、『適正職業』、【結界】、ユニークスキル、…………っ!!)
半分ほど眠りから覚めた思考で、違和感の原因を探る。
気になった単語を改めて言葉にし、間連した内容を自分に言い聞かせるようにして、俺の意識は一気に覚醒した。
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名前:平渚
LV:1
種族:日本人▼
適正職業:なし
状態:空腹、悪臭、過労、賢者
生命力:1/1
魔力:0/0
筋力:1
耐久力:1
知力:1
俊敏:1
運:1
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真っ先に気になった状態に追記された『賢者』がかなり気になるが、今はいい。
本当はよくないが、今は些細なことだ。
俺は『解析』さんで開いた、スキル以外のステータスを確認して、すぐさま【普通】を起動させた。
カチリ。
そして、間髪入れずにもう一度『解析』さんを発動させた。
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名前:平渚
LV:1【固定】
種族:日本人▼
適正職業:なし
状態:【普通】▼
生命力:1/1【固定】
魔力:0/0【固定】
筋力:1【固定】
耐久力:1【固定】
知力:1【固定】
俊敏:1【固定】
運:1【固定】
====================
……まさか。
まさかまさかまさかまさか!?
言いようのない焦りと、大きな期待を抱きつつ、俺はもう一度『解析』さんを起動させた。
最初から効果がわかっていたから、ずっと見落としていた、『解析』さんを対象にして。
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『解析』
認識した対象の詳細を把握する。レベルにより情報開示量が増加する。LV1につき1文が追記される。生物、物質、スキルなど、認識できたものはすべて対象となる。ただし、隠蔽系のスキルが施された対象には効果がない。また、所有者以上の能力、上級以上のスキル情報の調査は不可能。詳細はすべて文字情報として提示される。発動条件は対象を見ること。視覚以外の手段で対象の情報を読みとることはできない。認識が可能であれば、一度に複数の対象を同時に調べることも可能。
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ざっと説明を見れば、特に不審な点はない。
俺が想像していた内容に近い『解析』さんの特性が書かれていた。
が、俺は『解析』さんの説明を読み進めて、頭に『過負荷』以上の衝撃をガツンと受けていた。
俺が注目したのは、『認識した対象の詳細を把握する』という部分と、『発動条件は対象を見ること』という部分だ。
何故、この二つは分けて表記されているのか?
答えは、おそらくこうだ。
『解析』さんの発動条件である『見る』ことと、詳細を閲覧したい対象を『認識する』ことは、別物だってこと。
つまり、『解析』さんの効果で情報を得る時、対象がどういった性質のものかを『認識』した上で『見る』必要があり、『認識』が正しくなければ『見る』ことができない。
対象が人であれ、物であれ、ステータスであれ、スキルであれ。
俺が『認識できない』、『理解できない』ものに対して、『解析』さんは正しく発動できねぇんだ。
『解析』さんがミスる条件は、他にもある。
生物なら俺より能力が高い、スキルなら『解析』さんの中級よりも上のランクであること、そもそも対象に隠蔽系とかいうスキルが使用されているとかだ。
が、それらはどうでもいい。
俺が読みとった『解析』さんの説明が正しいならば。
いけるはずだ。
(『解析』、起動!!)
そう確信し、俺は再びステータスを開示した。
『種族』と『状態』だけに、意識を集中させて。
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種族:日本人(【日本人】 異世界人)
状態:【普通】(空腹、悪臭、過労、賢者)
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……やっぱり、そうだ。
ずっと不可解だった▼。
あれは、ステータス項目に『複数の情報がある』ってことを示す記号だったんだ。
ずっと『解析』さんでも詳細不明だったのは、俺の▼への『認識』が不十分だったから。
しかし、ようやくその意味に気づけたからこそ、情報開示が可能となった。
結果、俺の種族が二種類だと判明したんだ。
逆に、何で今まで気づかなかったんだ、俺?
体調不良が重なって『状態』の内容が増え、【普通】を起動する度に▼がついてたのを知っていたのに。
逆に【普通】が解除される度に、『状態』が【普通】から複数表記に変更されていたことも気づいていたのに。
どうして『種族』の▼が、『状態』の▼と同じ意味だって考えられなかったんだ?
もっと早くに気づけていたら、俺が精神的に病むことはなかったかもしんねぇのに。
だって、そうだろ?
おそらく、『状態』の▼は二つ以上の併存を示しているのに対し、『種族』の▼は二つ以上の選択肢があることを示している。
つまり、俺は『種族』を『日本人』か『異世界人』かを選ぶことができるんだ。
これは、俺にとって大きなプラスだ。
何せ、俺のユニークスキルである【普通】の推定効果は、『平均の強制』だ。
『種族』が『日本人』だった時は、この世界に一人しかいねぇ俺のステータスを適用するしかなかった。
が、俺の『種族』が『異世界人』になれるとすれば。
俺のステータスは『異世界人』の『平均』にまで引き上げられる。
それは単純に俺のステータスが上がるだけじゃねぇ。
俺が知りたかった『異世界人』の大まかな実力を、リアルタイムで知ることができる、ってことだ。
前者は俺の生存確率を大幅に引き上げることになり。
後者はイガルト王国脱出の材料にとても有益だ。
何より、今まで最悪だと思っていた【普通】に、これほどのメリットがあったという事実。
それが、【普通】が強力なユニークスキルだという期待を生んだ。
俺が出会った『異世界人』たちのユニークスキル、【幻覚】や【再生】や【結界】と同じか、それ以上の力を持つかもしれないという、期待を。
「…………くくくっ」
俺は身体を壁に向け、表情を監視の目から隠した。
ダメだとは思っても、抑えきれない笑みが漏れる。
ようやくだ。
ようやく、俺の未来に希望が見えた。
この国から逃げられるかもしれない。
この国の庇護から外れても、生き延びることができるかもしれない。
それだけで、俺のモチベーションは人生最大級にまで高まった。
明日から忙しくなる。
今日みてぇに腑抜けてる暇なんてねぇんだ。
『異世界人』の俺にできること、【普通】ができること、王城から追い出された後でやるべきこと。
また、逃亡先の選定、逃亡ルートの模索、国外へ脱出した後の目的。
これ以外にも、まだまだ調べなきゃならねぇこと、シミュレーションしなけりゃならねぇことは山ほどある。
見てろよ、クソ王。
ついでに『異世界人』ども。
俺をバカにしてきた奴らの鼻、漏れなく全員明かしてやらぁ!!
「…………っし」
いつもの調子を取り戻した俺は、最後にステータスの確認をすることにした。
『異世界人』としての俺に、どれくらいの能力があるのか?
それが基準になるんだから、すぐにでも把握しといた方がいいだろう。
そう思って、俺はステータスを【固定】させる【普通】を解除する。
カチリ。
そして、『解析』さんで認識した『種族』を、『異世界人』に変更する。
(さぁ、どうなる!?)
俺は上がりに上がったテンションのまま、『解析』さんでステータスを開こうとした。
「…………っ!!」
瞬間。
俺は雷にでも打たれたような衝撃を受け、全身を大きく痙攣させた。
同時に、『並列思考』も『不眠』も『覚醒睡眠』も無視して、意識が一斉にブラックアウトした。
「個体名『平渚』の『種族』変更の要請を確認しました。…………、エラーが発生しました。原因を調査しています…………」
「…………、原因を特定しました。個体名『平渚』の『種族』項目中の『異世界人』は仮登録です。正式な『種族』データがデータベースに存在しません。これより『種族』・『異世界人』の正式登録シークエンスに移行します」
「個体名『平渚』の『種族』項目に『異世界人』を定義します。…………、完了しました」
「個体名『平渚』を『異世界人』に適した身体構造へ改変します。…………、完了しました」
「個体名『平渚』における『種族』・『異世界人』のデータ保存を行います。…………、完了しました」
「個体名『平渚』の『種族』項目に『異世界人』を新規登録します。…………、完了しました」
「『種族』データベースに、個体名『平渚』の『異世界人』データを正式に登録しました」
「『種族』は重複できません。個体名『平渚』に登録されている『絶対種族』・【日本人】のデータを強制削除します。…………、エラーが発生しました」
「すでに存在している『絶対種族』・【日本人】のデータは『絶対スキル』・【普通】によりプロテクトがかかっています。世界の修正力による干渉が妨害されました」
「…………、エラーが発生しました。1,000,000回目の世界の修正力による干渉が妨害されました。『絶対種族』・【日本人】の削除が不可能と判断。別のアプローチにおける世界法則の修正を検討しています……」
「…………、検討終了。個体名『平渚』の『種族』項目の拡張作業を開始します。…………、完了しました」
「個体名『平渚』の『種族』項目が正式に二つに拡張されました。個体名『平渚』は『種族』項目から【日本人】・『異世界人』のいずれかを選択可能となります」
「個体名『平渚』の『種族』変更の要請を確認しました。『種族』を『異世界人』に変更します。…………、失敗しました。原因を調査しています…………」
「…………、原因を特定しました。『状態』に気絶が認められました。ステータス変更は各個体の任意で行われます。意識覚醒後、再要請を推奨します」
「『種族』変更を中断。『種族』項目を【日本人】に選択します」
「完了しました」
スキル取得時に聞く、奇妙なアナウンスを耳にしながら。
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名前:平渚
LV:1
種族:日本人▼
適正職業:なし
状態:空腹、悪臭、過労、有頂天、気絶
生命力:1/1
魔力:0/0
筋力:1
耐久力:1
知力:1
俊敏:1
運:1
保有スキル
【普通(OFF)】
『冷徹LV10』『高速思考LV10』『並列思考LV10』『解析LV10』『詐術LV10』『不屈LV10』『未来予知LV10』『激昂LV10』『恐慌LV10』『完全記憶LV10』『究理LV10』『限界突破LV10』『失神LV10』『憎悪LV10』『悪食LV10』『省活力LV10』『不眠LV10』『覚醒睡眠LV10』『嫉妬LV10』『羞恥LV10』『傲慢LV10』『無謀LV10』『麻痺LV10』『過負荷LV10』『失望LV10』『弁駁LV10』『気配察知LV6』『魔力察知LV6』『歓喜LV10』『抱腹絶倒LV10』『安堵LV10』『教授LV10』『慟哭LV10』『怠惰LV10』『沈鬱LV10』『共感LV10』
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