26話 スキル調査その8
疲れた……。いや、マジで。
度合いからしてゲロや激痛に勝るとも劣らない苦行だったぜ。
が、いつまでもそうしてはいられない。
とりあえず、目を閉じたまま、何となく想像できる新スキルの詳細を『解析』さんに解読してもらった。
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『歓喜』
どんな状況でも感情を歓喜で満たす。レベルにより密度が増加する。LV1につき1分加算される。効果中は他の干渉による解消を妨害する。ただし、『冷徹』以上の鎮静効果を持つスキルの使用で上書きされる。感情が一方向に定められ、効果中は自然には反転しない。類似の効果を持つスキルは併存する。効果中、あらゆる刺激が肯定的な認識に偏重する。
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『抱腹絶倒』
どんな状況でも笑い転げる。レベルにより密度が増加する。LV1につき1分加算される。効果中は他の干渉による解消を妨害する。ただし、『冷徹』以上の鎮静効果を持つスキルの使用で上書きされる。感情が一方向に定められ、効果中は自然には反転しない。類似の効果を持つスキルは併存する。効果中、あらゆる刺激が笑いを誘発する刺激に偏重する。
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『安堵』
どんな状況でも感情を安堵で満たす。レベルにより密度が増加する。LV1につき1分加算される。効果中は他の干渉による解消を妨害する。ただし、『冷徹』以上の鎮静効果を持つスキルの使用で上書きされる。感情が一方向に定められ、効果中は自然には反転しない。類似の効果を持つスキルは併存する。効果中、あらゆる刺激が不安の解消に繋がる認識に偏重する。
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『教授』
既知の知識を対象に深く理解させる。レベルにより対象の理解力が増加する。LV1につき20%の補正がかかる。効果は対象の数に影響されない。ただし、所有者の目の届く範囲、かつ声の聞こえる範囲にいないと効果はない。対象にとって既知であれば、より深い知識を与える。対象の知能に影響されない。所有者の弁舌の程度により、効果に補正がかかる。
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「…………」
『解説』さんの内容を見て、俺は絶句した。
な、なんつー幸せな感情系スキルなんだ……。
呆れて言葉を失ったのは初めてじゃねぇか?
『歓喜』は、他の日本人どもとは違った意味で、頭ん中がお花畑になるスキルだ。
どういうことかっつうと、スキル効果中はどんなことをされようが、何もかもポジティブに認識される。
たとえ暴言を吐かれようが褒め言葉に聞こえ、暴力を振るわれようが快楽に変わる、真正ドMを生み出すスキルと言い換えてもいい。
こんなお目出度いスキルはどこに需要があんだよ? いらねぇよこんなもん。
で、『抱腹絶倒』は文字通りだ。スキルを使えば、ところ構わず笑い転げてヒーヒー言うスキルだな。さっきの俺みてぇに。
これも使えば幸せになれるスキルだが、こんなもんメリットの欠片もねぇ。
自分に起こってる出来事の何もかもを忘れて笑いまくって、後に残るのは疲労感だけだぞ? 現実逃避以外の何だってんだ? アップ系の麻薬と変わんねぇだろ?
こんなお目出度いスキルは以下同文。
『安堵』は、感情が安心感に変わるだけで、ほぼ『歓喜』と同じと考えていい。
これも厄介なのは、どんな言葉でも『不安解消』の材料になる、って一文だ。
『歓喜』はドMを生み出すとすれば、『安堵』は超絶能天気を生み出す効果だといえる。
こんな以下同文。
しかも、三つのスキルに共通して厄介なのが、外部からの干渉を妨害する、って一文だ。つまり、『冷徹』以上の自発的な精神鎮静効果を持つスキルでないと、スキル効果から逃げられねぇ。
さらに、効果中は『歓喜』や『抱腹絶倒』以外に感情が変化せず、ネガティブにもならず、同系統のスキルは効果を重ね掛けできて、かつ使用者の認識までポジティブに偏らせるなんて、徹底しすぎだろこの嫌がらせ。
スキルを使えばおそらくハッピーにはなれるだろうが、完璧に隙だらけで無防備になるだけだよな?
結論。
どう考えてもバステですねありがとうございました。
どうしてこんな馬鹿げたスキルを取得したのかというと、十中八九、残念先生とのやりとりのせいだな。
俺はずっとイガルト王国に監視され、死を強く意識した緊張を強いられる生活を送ってきた。
正直、心の底から笑ったのは、召喚されて以来になるだろう。
日本にいたころも、こんな笑ったことなかったが、それは別にして。
何はともあれそうした環境のせいで、ちょっとの気の緩みでも笑いに変わっちまうほど、プラス感情における俺のハードルが下がってたんだろう。
【普通】で感情が固定されてたのもあって、積もりに積もった鬱憤が爆発した、って感じなんだろうな。
『歓喜』の取得要因は、俺の担任みたいなクソ野郎じゃない、残念先生みたいな大人がいたことが、嬉しかったんだろうな。残念先生がいう庇護の対象に、俺が含まれてなくても。
『抱腹絶倒』は、俺が残念先生とのやりとりや大喜利で、実はツボにはまっちまってたんだな。で、【普通】と『冷徹』が解けた瞬間の反動で条件達成、ってところか。
『安堵』は、日本人の中にもまともな大人がいたことに対して、だろうな。散々心中でこき下ろしてみても、根っこじゃ俺も大人に頼りたがってたんだろうな。
三ヶ月越しの緊張と緩和による『喜び』と『笑い』と『安心』だ。おそらく、それがきっかけで間違いねぇ。
……どれも、俺のガラじゃねぇんだけどな。
っつか、感情系のスキルってほぼ全部所持者にデメリットしか与えねぇよな?
なんでこんなスキルがあるんだ?
ぜってぇ必要ねぇと思うんだけど?
最後に『教授』だが、何て皮肉なスキルなんだ。
あれか? 『究理』先生と『完全記憶』の黄金コンビで検索したスキル考察を、残念先生に教えたからか?
生徒が先生に物事を教えて『教授』の取得って……。
残念先生がもっと残念に思えてならねぇ。
「……っと」
なんて、いつものスキルに対する愚痴を並べつつ、俺は石のベッドに横たわる。
最初は寝れるか! と文句を言ってたが、三ヶ月もすると慣れてくるもんだ。
熟睡はできねぇが、浅い眠りにはつけるようになってきた。『抱腹絶倒』のせいで疲れたし、横になるだけでも楽だからな。
念のため、『気配察知』と『魔力察知』で密偵の位置は捕捉しておく。今んとこ、三人とも動きはねぇな。
イガルト人が俺の奇行をどう捉えるかによるが、訂正する必要もねぇだろう。また今回も、要注意な日本人が意味不明な行動をしただけ、って報告されるだけだろうし。
「…………ん?」
と、そこまで思考を飛ばした後で、俺はふと違和感に気づく。
そういえば、今更かもしんねぇけど。
何で日本人は、自分のことを『異世界人』なんて呼び方をしてたんだ?
思い返せば、会長、チビ、残念先生と、俺が出会った三人が三人とも、召喚された日本人のことを『異世界人』としか呼ばなかった。
それはおかしい。
イガルト人からしたら、俺たちは確かに『異世界人』だ。イガルト人の認識じゃ、『世界』の基準は『この世界』なんだから、当たり前だ。
で、俺たちからしたら、イガルト人の方が『異世界人』のはずだ。俺たちの認識じゃ、『世界』の基準は『地球』であり、『日本』なんだからな。
なのに、何で『日本人』の会長たちは、自分のことも含めて『異世界人』なんて呼び方をする?
わざわざ、異世界側の立場に配慮して呼んでたのか?
いや、会長たちは自然と自分たちをそう呼んでいた。イガルト人に配慮しようなんて素振り、全くなかったはずだ。特にチビはそれが顕著だった。
だとしたら、何故?
もしかして、無意識に自分たちを『異世界人』と思いこむ要素でもあったのか?
「…………っ!」
そこまで考えて、俺は声を出しそうになったのを堪えた。
そして、監視役の視線から逃れられるかは知らねぇが、壁側に顔を向けて『解析』さんを起動させる。
案の定、そこに俺の求める答えがあった。
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名前:平渚
LV:1
種族:日本人▼
適正職業:なし
状態:空腹、悪臭、過労、過負荷、筋肉痛
生命力:1/1
魔力:0/0
筋力:1
耐久力:1
知力:1
俊敏:1
運:1
保有スキル
【普通(OFF)】
『冷徹LV10』『高速思考LV10』『並列思考LV10』『解析LV8』『詐術LV8』『不屈LV10』『未来予知LV6』『激昂LV10』『恐慌LV10』『完全記憶LV8』『究理LV8』『限界突破LV10』『失神LV10』『憎悪LV10』『悪食LV10』『省活力LV10』『不眠LV10』『覚醒睡眠LV10』『嫉妬LV10』『羞恥LV10』『傲慢LV10』『無謀LV10』『麻痺LV7』『過負荷LV10』『失望LV10』『弁駁LV10』『気配察知LV4』『魔力察知LV4』『歓喜LV10』『抱腹絶倒LV10』『安堵LV10』『教授LV10』
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やっぱりだ。
間違いねぇ。
俺と会長たちにある認識のズレは、『種族』が原因だ!
俺が自分のことを『日本人』と言い続けたのは、日本出身って意識があったのもそうだが、一番はステータスの『種族』が『日本人』だったからだ。
同様に、会長たちが自分たちのことを『異世界人』と認識しちまったのは、『種族』が『異世界人』になっていたからだったんだろう。
ステータスを確認する度に何度も見る『種族』欄の『異世界人』という言葉に、全員の潜在意識が徐々に『異世界人』の方へとすり替えられた。
で、いつの間にか自分の立ち位置を『異世界人』にシフトさせちまってた、ってカラクリだな。
俺には『解析』さんがいて、他の日本人にはクソ王の持つステータス確認の水晶玉がある。俺以外の日本人も頻繁にステータスを確認できる状況だったはずだ。
で、ここからは推測だが、俺以外の日本人の全員の『種族』が、もしも『異世界人』で統一されていたとしたら、自分たちを『日本人』と呼ばなくなったのも納得できる。
なんたって、この世界の法則であるステータスが、自分たちを『異世界人』と断定してんだからな。
いずれ疑問も持たなくなり、『そういうもの』だと流されていったんだろう。
『赤信号 みんなで渡れば 怖くない』
そんな川柳風の冗談を納得しちまうような、『多数派の意見に従いやすい』日本人に根付いた気質がアダになったのか。
だが、そうなると疑問が一つ。
何で俺の『種族』だけが『日本人』なんだ?
境遇が何もかも同じだし、普通なら俺の『種族』も『異世界人』であったはずだ。
それなのに、どうし、……て……?
…………ん?
【普通】、なら……………………?
「ぁ……っ!! ……っぐ……!!」
瞬間、俺はとっさに片手で口を押さえ、もう片方で喉まで押さえて声を殺した。
この時、絶叫をあげなかった自分を猛烈に褒めたかった。
イガルト人の密偵に不審がられる可能性があったからな。
何で突然叫ぼうとしたのかって?
俺の『種族』も、【普通】が原因で変化してた、って気づいたからだよ!!
そう判断した理由は、二つある。
一つは、俺と他の日本人……、ええいこの際だ、『異世界人』で統一してやる。
その『異世界人』との間にあった、かけ離れたステータス値の差だ。
異世界召喚初日、俺は同じクラスの男に胸ぐらを掴まれ、片腕一本で持ち上げられたことがあった。この時点で、俺と『異世界人』との間に相当なステータス差があったのは間違いねぇ。
唐突な身体能力の向上という現象については、日本で読んでた異世界モノの小説でありがちだったから、すぐには疑問に思わなかった。
が、同じ時間、同じ条件で召喚されたはずなのに、俺だけステータス値が著しく低いなんてこと、あり得るはずがねぇ。
確かに能力値の偏りは出るだろうが、はっきりクズとわかるステータスが他にいなかったのも、俺だけが例外だった証拠だ。
だとすると、俺がそうなっちまった要因があったはずだ。それは何か?
他の奴らとの違いといや、【普通】しかねぇだろ?
一つ目だけでも十分な理由だが、もう一つが重要だ。
これは少し考えりゃわかることだったかもしんねぇ。
そもそも、このステータス値の『1』って、何を基準に『1』と表記されてんだ?
ずっと何の疑問もなく受け入れてきたが、数字ってのはモノの大小を計る道具ではあるものの、背景にある『定義』が変われば最大値や最小値といった、大小を示す範囲の限度は大きく変わる。
例えば、パーセントなら最大値は100で、最小値は0。温度の指標の一つであるセルシウス度なら最大値は上限なしで、最小値は絶対零度の-273.15℃。これらは数字で表される指標だが、扱える範囲は異なっている。
さて、ここで問題だ。
ステータスの場合は、どれくらいの程度を『基準』にして数値を定めているんだ?
答えは以下の通り。
『この世界の人間のステータス平均値と比べた、相対的な数値』が、ステータスの数値になる。
今まで詳しく触れなかったが、この世界の人間における平均的なステータスは、この通りになるらしい。
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名前:マイク
LV:1
種族:イガルト人
適正職業:農民
状態:健常
生命力:100/100
魔力:100/100
筋力:15
耐久力:15
知力:15
俊敏:15
運:50
保有スキル
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俺が下っ端に渡された、この世界の常識だっつう本の中にあった、統計データの一つだ。
常識って分野で統計データを渡すなんて、気が狂ってるとしか思えねぇけど。
名前は適当だ。あれだ、東京一郎みたいなもんだ。
本によると、人間に限定したラウ大陸出身者のステータスを調査し、平均を算出するとおおよそこのような値になったらしい。
手法は『解析』さんの上位互換のスキルで膨大なデータを得て、計算に補正がかかるスキルを使用して算出したんだと。
ステータス値の上限は確認されておらず、下限はおそらく0。さすがに0って数値は赤ん坊でもなかったから、推測らしいけどな。俺の魔力は0だが、現地人からしたら魔力がないなんてありえねぇ話らしい。
ただし、運はきっちり0から100の間に分布してたらしく、運の範囲だけは確定できたんだと。
で、この値は成人以上の人間であれば、年齢、性別、国籍、生活環境など条件を変えて比較しても、この値になったらしい。
ちなみに、この世界の成人は15歳。俺らとほとんど変わんねぇ年齢だ。
まあ、15歳未満は成長途中ってことでステータスがバラバラらしいし、人間以外の種族だったらまた別の平均値があるんだが、それは今はいい。
重要なのは、ステータス値の絶対的な『基準』が『15』だっつうことだ。
『イガルト人』のステータスは、『魔力』という要素を加味した上での、そいつが引き出せる限界の値だ。それに、生活様式や文化が中世ヨーロッパ風味なのもあり、スキルや魔法の手助けなしで日頃から肉体労働をしている奴らも多い。
だが、『日本人』はどうだ?
文明が発達していくにつれて生活が機械任せになり、自分で動くことがかなり減っている。ニュースでも、転倒した際反射的に地面に手をつける子どもが減ったとかを小耳に挟むくらい、身体能力は下がる一方だ。
加えて、『イガルト人』のステータスを支えている『魔力』っつう概念が、地球には存在しない。
それがより、『日本人』と『イガルト人』とのステータス差を広げていたとしても、なんら不思議じゃねぇ。
その弊害を無くしたのが、他の日本人の種族である『異世界人』だ。この種族なら、『異世界人』の世界の主体は『この世界』であり、『地球』じゃねぇ。
んで、『地球』で暮らしてきた経験を、『この世界』に置き換えてステータス値に反映したとしたら、辻褄が合う。
なんたって、『魔力がない世界』での行動は、『この世界の人間』にとっちゃ地獄に等しい苦行だからな。
『日本人』にとって酸素に等しい、生命活動に必要な要素たる『魔力』が欠如した世界なんて、まともに生きていけるはずがねぇ。
だから、『異世界人』は召喚された後にステータス上の処理として、通常なら生きていけない過酷な環境を生き抜いてきた超人集団、ってことになった。
だからこそ、常人にはあり得ないスキルやステータスが備わっていたんだろう。
俺と体型が変わらなくても、むしろデブやガリみてぇな極端な体型の奴でも、俺よりはるかに高いステータスを叩き出してたんだ。
対して、俺は『異世界人』ではなく『日本人』として召喚された。
『魔力』なんて概念のねぇ上、特に鍛えてなかった『日本人』の身体能力は、この世界における『1』程度の大きさでしかなかった。
むしろ、それより低い可能性もある。
整数表記にするため、小数点以下の値を切り上げて『1』と表記した結果が、『1』並びだったとしたら。
いくら訓練を重ねても、俺のステータス値が『1』から変動しねぇ理由にも繋がる。
訓練を重ねることで、俺のステータスは実際に成長しているが、その上げ幅が微々たるもんだったんだろう。
初期値が小数点以下の値で自然数の『1』にもほど遠く、能力の成長率も悪ぃとすれば、三ヶ月経っても『1』以上の数字にならないのは当然だ。
つまり、『日本人』の、っつうか俺のステータスは、この世界の基準で言えば想像以上にカスだったってことだ。
そして、俺が何故『日本人』のままこの世界にきたのか、その元凶が【普通】だ。
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【普通】
何もかもを【普通】にする。
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このふざけたスキル説明にある『【普通】にする』って一文の『基準』が、『日本人としての俺』に設定されていたんだろう。
だから、初期ステータスがカスみてぇな値しかなかったんだ。
また、俺が召喚された日に体調が最悪だったのも、俺の『種族』が『日本人』だったから。
具体的に言うと、地球には存在しなかった『魔力』が大気に漂っていたため、『日本人』の体が適応できなかったんだ。
新たに出現した大気の成分により酸素濃度が下がり、同時に『日本人』である俺は『魔力』なんていう『異物』を体内に取り込むハメになった。
それが、運動に必要なエネルギーを体内でうまく循環できなくなり、極度の疲労に繋がった、ってところか。
他の『異世界人』の場合、身体が最初から『この世界』に順応していて、『魔力』による弊害がなかった。
むしろ、ステータスを引き上げる要素で、『異世界人』にとっても『魔力』は必要不可欠な要素になってた。
だから、あの体調不良は俺だけにしか起こらなかったんだな。
ついでに、スキル説明にあった『【普通】にする』っつう意味が『種族』の『平均』を強制するってことなら。
俺は【普通】がある限り、自力でステータスを上げるまではオール『1』からは逃れられない。
なんせ、『この世界』に存在する『日本人』は俺だけだ。
平均も何も、『俺のステータス』そのものが『日本人のステータス』の絶対値であり、唯一のサンプルデータといえる。
最小値も最大値も平均値も『俺のステータス』しかデータがない以上、それが『日本人』の『基準』で【普通】なんだ。
おそらく、武具などでステータス値の上昇効果があったとしても、俺にステータス補正はかかんねぇだろう。
【普通】が【固定】しちまうから、素のステータス以上に上がりようがねぇんだから。
「…………はぁ」
長ったらしく考察してきたが、要するに【普通】がすべての原因だ、ってことだ。
な? 絶叫して発狂したくもなるだろ?
つくづく、この世界は俺に厳しい。
やってらんねぇよ、マジで。
首を押さえていたら少しは気分が下がり、俺はやるせなさをため息にして吐き出す。
何気に『解析』さんがレベルアップしても【普通】の説明は変わんねぇし。
一ヶ月前にちょっとは見直したと思ったらすぐこれだし。
他の奴らは有用なユニークスキルだっつうのに、俺のユニークスキルは欠点ばっかじゃねぇか。
もしかして、【普通】だけが強力な呪いスキルでした~、なんて落ちじゃねぇだろうな?
…………止めよう、そんな気しかしなくなってきた。
俺は新スキルと新事実のせいで肉体的にも精神的にも疲れ、さっさと寝ることにした。
せめて、残念先生のせいで取得した『抱腹絶倒』で失った体力くらいは取り戻しとかねぇと、明日まともに動けなくなる。
ステータス値の絶望的なクズさが明らかになった今、前以上に鍛錬しなきゃ死ぬ。もっとステータスをのばすために、訓練に力を入れなきゃなんねぇ。
そう思いながら、俺は『覚醒睡眠』を使いつつ、体力を取り戻そうと目を閉じた。
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名前:平渚
LV:1
種族:日本人▼
適正職業:なし
状態:空腹、悪臭、過労、過負荷、筋肉痛
生命力:1/1
魔力:0/0
筋力:1
耐久力:1
知力:1
俊敏:1
運:1
保有スキル
【普通(OFF)】
『冷徹LV10』『高速思考LV10』『並列思考LV10』『解析LV8』『詐術LV8』『不屈LV10』『未来予知LV6』『激昂LV10』『恐慌LV10』『完全記憶LV8』『究理LV8』『限界突破LV10』『失神LV10』『憎悪LV10』『悪食LV10』『省活力LV10』『不眠LV10』『覚醒睡眠LV10』『嫉妬LV10』『羞恥LV10』『傲慢LV10』『無謀LV10』『麻痺LV7』『過負荷LV10』『失望LV10』『弁駁LV10』『気配察知LV4』『魔力察知LV4』『歓喜LV10』『抱腹絶倒LV10』『安堵LV10』『教授LV10』
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