15話 スキル調査その3
庭園から離れて会長の視界から消えた瞬間、俺は廊下を歩いていたメイドと遭遇した。
「よぉ。お仕事お疲れさん」
「…………っ」
あ、今こいつ小さく舌打ちしやがったな?
俺の顔を見た瞬間に表情もしかめてっし、何だよ俺のことどんだけ大好きなんだ死ね。
「で? 今日の訓練場はどこ?」
「……こちらです」
メイドの態度が思っくそ悪いってことはさておき。
訓練の時間までちょうどよくなったので案内を急かすと、メイドは不本意を表情に出したまま先を歩きだした。
そういや、訓練初日に黒い靄さんを兵士に量産しちまったからか、これまでずっと無人の訓練場に放り込まれているんだよな。
俺から言わせれば兵士どもの自業自得なんだが、てめぇで仕掛けといて俺のせいにする脳筋どもしかいねぇ時点で、永遠に和解は無理だろうよ。
ってわけで、俺だけ完全貸し切り状態で訓練している。最初はだだっ広い空間に俺の息切れだけが響く状況に空しさを覚えたもんだが、マイペースに訓練できてラッキーって気楽さが勝てばどうでもよくなった。
その成果と言っちゃなんだが、この一ヶ月で歩くだけで息切れをすることはなくなった。ステータスの数値に変動がなくとも、確実に体調が改善されてるのがわかっからモチベーションも高い。
欲を言えば、同年代の男と喧嘩できるくらいの体力はつけてぇところだが、やっぱ俺のペース次第だよな。
焦らず着実に訓練を続けていこう。
「いやぁ、勉強サボって散歩してたら道に迷っちゃってさぁ。偶然とはいえ、アンタと出くわしてよかったよ。そっちは何? 日本人のお世話やってたの?」
「…………」
決意を新たにメイドの後ろを歩きだしてすぐ、道中ずっと無言は怪しまれると思って声をかけてみる。
が、案の定メイドは返事どころか無反応で先導するだけ……さっきまで会長と言葉のキャッチボールをしてたのが嘘みたいだ。
ま、ぼっちは今に始まったことじゃねぇしな。日常の延長だと思えばそこまで気にする必要もない。
あ、そうそう。
このメイドと出会ったのは偶然の要素もあるが、実は半分くらい意図的だったりする。足音は会長との会話中から拾えてたし、むしろタイミングを見計らって会長との会話をぶったぎったくらいだ。
本音はもうちょっと日本人の内実を聞き出したかったんだが、イガルト王国の奴らに『会長と話していた』ことを知られる方がまずかったから仕方ねぇ。
っつうのも、少なくともこの一ヶ月、毎日のように何者かからの視線を感じてんだよな。
城内を歩く時はもちろん、書庫で勉強のフリをしているときから、ステータスを鍛えるための訓練中、果ては牢屋の中で過ごしている時に至るまで。
気のせいとか自意識過剰じゃなく、ずっと見られている感覚がまとわりついて離れなかったんだ。一人で城の中をうろついている間とか、マジで鬱陶しいのなんの。
おそらく、この城で働く使用人や貴族連中の目や、この国が保有する密偵部隊――いわゆるスパイどもの監視だろう。
大まかに感じた気配の位置からして、日中の監視は主に城の使用人が担当してんな。どっか陰からの視線を感じても、『人がいてもおかしくない場所』が多かったし。
逆に、牢屋にいる時は密偵の担当だろう。『密偵が潜みそうな場所』っていえば怪しさ抜群だが、天井裏や隣の独房からしか気配を感じなかったんだからな。
独房を見張るってなると、待機スペースの確保が難しいのかもしれねぇな。密偵あるあるとか知らねぇけど。
そんなわけで、俺は人の気配にすっかり敏感になっちまった。人イコール監視カメラ、って認識だな。
そこからは自然と、普段の振る舞いにも気を配るようになったっけか。少しでも俺が『力なし頭なし危機感なしのアホ』だとあいつらが勘違いし、いつイガルト王国から『捨てられてもいいように』な。
もちろん、監視場所になってる牢屋でも演技は続けている。『詐術』があって助かったと思えたのはよかったのか悪かったのか……。
っつっても、牢屋にいる俺が演技抜きでやってることと言えば、気絶かゲロだ。現段階じゃ、素を見られたとして対【魔王】戦力として期待されてる可能性は低いだろう。
ただ、わざとやってる演技を抜きにしても、微妙に俺への監視が甘い気がすんのはちょっと気になるんだよな。
俺相手に気づかれるはずがねぇ、って侮られているからか? それとも、すでに情報収集をする価値すらねぇと思われてんのか?
どっちにせよ、『無能』を演じているこっちからすりゃ好都合だからいいけど。
まあ、クソ王どもにとっちゃ、俺らはまだ立場を鮮明に示していない暫定戦力に過ぎない。
俺が暗殺される可能性の中で言及した通り、日本人の取り扱いを間違えればとんでもない爆弾にもなりかねねぇ。
だから俺らの動向を調査し、言動や心理や人間関係などの情報を探ろうとしてんだろう。有能な日本人の手綱を握るために。
それにもし全員が弱みを出さなかったとしても、手綱がねぇなら作ればいい話。
一番簡単なのが、『イガルト王国出身の恋人を作らせて日本人を抱き込んじまおう』ってやり方で、簡単に言や『ハニートラップ』だな。
日本人は基本、平和ボケしたバカどもだ。美人・美形に言い寄られれば、ころっと騙されてホイホイついて行ってもおかしくねぇ。
特に男は『英雄色を好む』なんて言葉もあるくらいだしな。どんだけ立派な偉人でも、熱しやすく冷めやすい下半身の欲求に勝てる奴はそう多くない。
――だとしたら俺んとこには一人もこねぇとはどういう了見だクソが。まさか牢屋生活とリアルにクサイ飯で生きてる俺にゃ近づきたくねぇってか上等だ今すぐ風呂入ってくるから場所教えろや。
「あれぇ? よく見りゃアンタ、結構かわいいじゃん。やっぱ外国人って、日本人にはない魅力があるよな~。どうよ、俺と良い仲になったりしない?
あ、でも訓練終わりとか汗でぐっちゃぐちゃになるんだよな~。そうだ! 牢屋に戻る時にタオルとか持ってきてくれよ! 何ならそのまま一晩泊まってってもいいぜ?」
「――ちっ!」
おいおい、今度は確実に舌打ちの音を隠す気なかったろ? 我ながらキモいとは思ったが、そんなに嫌か?
ちょうど『ハニトラ』について考えてたし――と思って、今回はチャラ男風に演技をしてみた。なるべくウザく、キモい感じを強めに出すのがこだわりポイントだ。
だって、億が一にもイガルト王国の人間に興味持たれちゃたまったもんじゃねぇからな。
王城のメイドとか、ほぼ全部が貴族の子女だろ? こっちから願い下げだよ、面倒臭ぇ。
あくまで口説く『フリ』をしつつ、先導のメイドにちょっかいをかけながら廊下を歩く。
同時に『高速思考』と『並列思考』を駆使しながら頭と体の思考を分割し、今までの情報整理もかねてスキルのレベル上げをすんのも忘れない。
ときおりバカなことも考えてんのは、一瞬でも思考を途切れさせないためだ。俺自身が力をつけるためには一分一秒が惜しい。効果があると思ったことは何でもやるくらいじゃねぇとな。
それはさておき、ハニトラといえば『普通』に考えりゃ会長も無関係じゃねぇよな? たしか、『この国の人たちから集まる期待と重圧』って言い方だったっけ?
もし会長が抱えてた心労の一部に、『美形貴族どもに言い寄られて』みたいなニュアンスもあったんだとしたら……クソ王はマジで日本人の籠絡を画策してる可能性があるな。
今んところは想像の域を出ないものの、本当にそこまで手間をかけてるとするとますます厄介だな。
なんせ、あっちには『契約魔法(仮)』って強制奴隷化カードがあるんだ。小細工に集中するよか、強い手札の環境づくりを整えた方がぜってぇ楽なはず。
それでも小細工を仕掛ける可能性としては……万が一にも次の『契約魔法(仮)』が不発に終わった場合の保険か、もしくは『契約魔法(仮)』の不発を前提に元からサブプランとして用意していた、とか?
っつか、クソ王にどういう思惑があんにせよ、もう少し日本人を侮ってくれれば動きやすかったのによ。
まさかとは思うが、俺の『交渉』でプランをずらされたから警戒させちまった、とか? 態度がデカく煽り耐性が低い割に、裏工作は慎重で用心深いとかクソ面倒臭ぇ相手だよ。
そう考えると、実は状況的に会長と接触したのって、結構な博打だったよな。
特に、『【勇者】が警戒対象と話をした』って事実が持つ意味は重い。
俺ら個人ならある程度好き勝手やっても見逃してくれるだろうが、【勇者】である会長は立場上『日本人全体』に対する影響力が大きいと見なされちまう。
要はこの世界の人間にとって、『代表者』って立場をどう捉えるか、の問題だ。極論、イガルト王国側の認識では、『会長の言動』が常に『日本人全体の総意』だと思っててもおかしくねぇんだよ。
そんな奴らがもし、【勇者】と『警戒対象』が接触したと知ったらどう考えるか?
まあ、『イガルト王国と敵対するんじゃないか?』って疑うわな。それによって会長はもちろん、全ての日本人まで『敵対する』って危ぶまれてた可能性は高い。
じゃあどうして、俺は会長との話を続け情報を得ようと思ったのか?
実は、庭園にいた人物が会長だと気付く少し前くらいから、監視の目が一時的に『消えていた』んだよ。しかも、二十四時間体制で見張られてる俺が、『今なら話しかけられる』と思ったくらいには。
都合が良すぎる状況に罠の可能性も疑ったが、そもそもクソ王が危険視してる俺を【勇者】と会わせるだけのメリットがねぇ。
だからもう純粋にチャンスだと考えることにし、話しかけに行ったわけだな。
ついでに、結果論ではあるがこっそり会長に『イガルト王国の不信感』を植え付けられたことは、俺としても結構なファインプレーをしたと思ってる。
別れる直前の様子からして、会長にはまだ視野狭窄が残ってる感じだったけど、冷静になって頭を使えば俺よりも立ち回りはうまいはずだ。
あとは俺と同じく疑念を深め、上手にやってくれることを祈るしかねぇ。
それにしても、具体的な距離は測ってねぇが、会長から相当離れた場所から監視がいなくなってたよな?
現時点での会長は監視の対象外らしいとはいえ、さすがに限度はある。
【勇者】の監視役として実際に人員が割かれてんのか、また会長が日本人に監視がつけられてることに気づいてんのかはわからねぇが、俺と比べて待遇的にありえねぇだろ。
……いや、もしかして会長相手にゃ密偵を使えなかった、とか?
問題行動が多い俺と違って普段は真面目っぽかったし、四六時中監視する必要はないと判断されてもおかしくねぇ。
もしくは、気ぃ張ってた会長を見た限り他人の視線や敵意なんかには敏感そうだったし、下手に配置するリスクの方が高ぇって判断されたのかもな。
一国の王からそこまで警戒されるとか、どんな女子高生だよ、会長……。
「本日はこちらの訓練場になります。では、私はこれで」
「了解、ありがとさん」
なんて、改めて会長と【勇者】のポテンシャルに戦慄しつつ、時間をかけてメイドが指定した訓練場に到着した。
さぁて、頭の次は体を動かす時間だ。
今日もきちんと訓練に励むとするかね。
「ふぅ、ちっと休憩」
今日も一日お勤めを終え、自室で勉強のフリした日記も書き終わって一息つく。
いそいそとノート代わりの分厚い紙をベッドの下に隠し、ベッドに腰掛けた俺はさりげなく自分を見下ろした。
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名前:平渚
LV:1【固定】
種族:日本人▼
適正職業:なし
状態:【普通】▼
生命力:1/1【固定】
魔力:0/0【固定】
筋力:1【固定】
耐久力:1【固定】
知力:1【固定】
俊敏:1【固定】
運:1【固定】
保有スキル【固定】
【普通】
『冷徹LV3』『高速思考LV4』『並列思考LV4』『解析LV4』『詐術LV4』『不屈LV3』『未来予知LV3』『激昂LV8』『恐慌LV9』『完全記憶LV4』『究理LV3』『限界突破LV3』『失神LV2』『憎悪LV8』『悪食LV1』『省活力LV2』『不眠LV2』『覚醒睡眠LV1』
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日々の努力が実り、あれからいくつかスキルのレベルがあがり、新しいスキルも増えた。
ついでに、一般常識が増えたおかげでステータス記述欄のこともある程度わかってきた。
まず、個人に設定されたレベルだが、どうやらこの世界の住人でも上限は確認されていねぇらしい。
この点はゲームと同じで、レベルが上がるごとに次へのレベルアップは時間がかかるらしい。長命種と呼ばれる種族でも、100を超えられるのは一握りの存在だそうな。
で、この世界の種族は超特大の分類では『人種』と『動植物』と『魔物』に分類される。そっからぶわーっと細かい種族があるが、今は遭遇する可能性も低いし改めて思い出す必要はねぇな。
次に適正職業だが、どうも本人の性格とかじゃなく、完全にステータス情報依存で決められるらしい。
幼い頃から剣術を修めていた男が、ステータスを確認すると適正職業が『回復魔法使い』ってなってる、なんてこともざらにあるそうだ。
っつうことは、もしかするとステータスには表記上には存在しないが、適正職業を定める基準になる『隠しパラメータ』が存在するのかもしれねぇ。
俺の適正職業が『なし』なのも、【普通】の効果で判定ができなくなってるだけって可能性が浮上した。ここはまだ改善の余地がありそうだし、検証は継続だな。
その次にある状態は、普通に健康状態のことだ。問題なければ健常、異常があればそれに合わせて表記が変わるらしい。
ちなみに、俺はステータスを日本語で認識しているが、この世界の住人がステータスを確認する時、直接脳内に情報がインプットされるんだと。
おそらく、この世界の識字率が関係してんだろう。大半の平民は勉強をする機会すら与えられず、家業を継いで一生を終えるもんらしいし。
だから、識字率ほぼ100%の俺らみたいに文字で表示されても、それがたとえ母国語でも、ほとんどの人間が理解できないらしい。
そんな弊害をなくすため、多少脳に負荷がかかっても構わず、ステータス情報を直接叩き込むんだそうだ。
本人への負担って観点なら、ステータスは俺が『解析』さんに頼んでるように、文字表記でその都度確認する方法が負担って面では一番楽だとのこと。
意外にもステータスを確認する術に乏しいこの世界じゃ、貴族しかできない贅沢な行為らしいがな。
あとステータスに並ぶ能力値だが、おおむね俺の予想通りの内容だった。
生命力はマジでゼロになったら死ぬタイプだった。
上限値から五割を切ると疲労で動きが鈍り、三割を切ると生命力の数値に応じて他のステータス値が減少、二割を切るとほぼ動けなくなり、一割切ると気絶か意識があっても動けなくなるらしい。
生命力の管理は割とシビアに行わねぇと命取りになるだろう。ゲームっぽい、って意識を特に捨てなきゃいけねぇ項目だな。
魔力はこの世界の生物にとっちゃ必要不可欠なもんらしい。
武術や魔法を含む、主にスキル全般に必要なエネルギーであり、酸素に次いで重要な体を構成する要素なんだと。ゼロになっても死にはしねぇが、脱力感と倦怠感で身動きができなくなるそうだ。
俺は元々ゼロだが、日本人に魔力があるわけねぇし、動けても不思議じゃねぇよな? そこら辺の細けぇ理屈は、正直よくわかっていない。
筋力は純粋な力、ってわけじゃなく、魔力も関連してくるらしい。
どうやらこの世界の生物は、魔力によって無意識に身体能力の底上げができるそうで、魔力補助を含めた力を筋力として示しているようだ。
念のため補足として、ステータスで表記された数字は『最大値』であって『平均値』じゃねぇ、ってのはさっき確認した通りだ。俺にとっては朗報だったよ。
耐久力も大まかに筋力と同じ感じだ。
魔力補助も加味してがんばった『最大値』が、耐久値として数値化されるようだ。耐久値の判定は、本の情報によると物理的な攻撃やスキルにのみ作用するらしい。
魔法関連のスキルの防御は、主に知力でごり押しか、対抗するスキルを発動するか、それ専用のたっかい装備が必要なんだとさ。才能持ちか金持ちじゃねぇと死ね、ってことですねありがとうございます。
知力はまるっきり魔法関連の数値だった。
何でも、魔法に関する習熟度や技量、器用さとか理解度とか抵抗力なんかを全部含めた総合値が知力なんだと。要するに、魔法が使えなきゃほぼ無意味なステータスだな。
俺にとってもほぼ無意味だ。日本人の魔法関連ステータスを示す代表が『知力』って表記だっただけで、おそらく現地語ではもっと適切な表現になってんだろう。
俊敏はやや筋力に関連する脚力、って認識で良いらしい。
この数値が高いと目にも留まらぬ速度で移動とかができるんだと。が、俊敏に限らずステータス値の一つに特化していると、他の項目である筋力などは低い傾向にあるらしいから、相互作用はあまりないと思っていい。
運はマジで読んで字の如くだ。
平均を50、最低値を0、最高値を100としたそいつの幸運度を数値化したもんらしい。平均が50の時点で、俺の1という数値がどんだけ絶望的かわかっていただけるだろう。
道理でこの世界に来てから運がねぇと思ってたんだ。決して、日本からそうだったとは思いたくない。
と、ステータスの詳細としてはこんな感じだ。
俺の数値が低すぎたから、初めて真実を知ったところで『へぇ、そう』くらいしか思わなかったがな。
それから、【普通】のオンオフで取得したスキルも一応確認しておく。
あれから増えたスキルは、ざっとこんなもんだ。
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『失神』
一瞬で意識を失う。レベルにより絶対作用時間が増加する。LV1につき10秒加算される。効果中は他の干渉による解消を妨害する。
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『憎悪』
どんな状況でも感情を憎悪で満たす。レベルにより密度が増加する。LV1につき1分加算される。効果中は他の干渉による解消を妨害する。
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『悪食』
悪辣な食事に対する耐性を得る。レベルにより許容範囲が拡張する。レベルの上昇により消化器系が強化される。常時、多少の毒耐性を得る。
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『省活力』
少ないエネルギーで活動できる。レベルにより省エネ率が増大する。LV1につき5%の熱効率の補助を得る。任意で解除可能。
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『不眠』
睡眠不足に対する耐性を得る。レベルにより必要睡眠時間が減少する。LV1につき30分の耐性を得る。任意で解除可能。
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『覚醒睡眠』
意識の覚醒と睡眠を両立できる。レベルにより睡眠効率が増大する。LV1につき1時間の連続稼働が可能。純粋な睡眠と比べると、睡眠効率は半減以下となる。
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とまあ、ラインナップはこんな感じだな。
説明文が増えたのは、『解析』さんがレベルアップしたからだ。いつもいつもお世話になってます。
で、一つ一つ説明すると、『失神』は【普通】を解除するとほぼ確実に気を失うから得たんだろう。不本意ながら、取得したのも納得だ。当然、自分から使う機会なんてねぇが。
『憎悪』は俺をこんな目に遭わせているイガルト王国や、いい目をしているだろう日本人に対する恨み辛みが募って取得した。
これも否定はしない。っつうか、今でも『並列思考』の一部はそいつらへの恨み辛みでいっぱいだしな。
【普通】で意識しないようにできるとはいえ、汚ぇ感情の行き場は作っておいた方が精神衛生上は必要だ。特に【普通】を解除する際、反動の大きさが体感で違ってくるのは大きい。
何事もため込まないことが大事、ってことだな。いやまあ、思考の中でとどめてんだから、ため込んでることには変わりねぇんだろうけどよ。
『悪食』と『不眠』は、もう俺の肉体が限界だと悲鳴を上げたから取得できたんだろう。ある意味、取得するべくして取得したスキルだ。
こいつらのおかげで、最近頻発していた下痢や日中の寝落ちが少し減った。地味に助かってる。
『省活力』と『覚醒睡眠』は、『悪食』と『不眠』の耐性でも間にあわねぇから自然と覚えたんだろう。
奴隷が食う、っつった質も量もクズな飯でも一日の活動を可能とし、不本意な『失神』を繰り返すせいで足りない睡眠時間を補ってくれる。俺の日常には必要不可欠なスキルといっても過言ではない。
こうしてみると、俺って戦闘に分類されるスキルは覚えねぇのに、生活に密着したスキルはどんどん取得していくな。
俺の生活環境の問題もあるんだろうが、一番の要因は俺に戦闘系スキルの適正がないからだろうな。
スキルの覚えやすさもまた、『隠しパラメータ』的な適正が関係しているらしい。その適正は本人の性格に関係せず、完全にランダムって考えが通説のようだ。
一応、適正職業がスキル適正を多少反映しているらしく、他の奴らは適正職業を参考に適正スキルにあたりをつけて取得を目指すんだと。
俺はいまだに『なし』だから、全部手探りでやるしかないけどな。
んで、今までの結果を鑑みると、だ。
俺が覚えやすいスキルはぶっちゃけ戦闘寄りでも魔法でもねぇ、完全に『その他』扱いのスキルにしか適正がねぇらしい。
特に覚えやすいのは、俺の文句言いな性格もあってか、感情系のスキルが多い。『冷徹』とか『激昂』、『恐慌』に『憎悪』なんかがそれだろう。
あとは『高速思考』、『並列思考』、『解析』、『未来予知』、『完全記憶』、『究理』とかいうインテリ系のスキルが一番多く並ぶが、違和感バリバリだ。
俺ってそんなに頭よくねぇし。
むしろバカだし。
なのに何ちゃら思考やら予知やら記憶やら、場違いじゃねぇの? ある意味じゃ『詐術』もこれに含まれてんのかねぇ?
あ、今までスルーしてたが、スキルには等級がある。
下級、中級、上級、ユニークだ。他の創作物を知ってっと、案外少ねぇと感じるんだが、難しくなくていいんじゃねぇの?
ステータス表記は順に、「」、『』、《 》、【】だ。俺のは中級スキルが大半、ってことになる。
下級スキルは適正さえあれば覚えられ、効果も低く消耗も少ない。
中級スキルはほとんどが下級スキルから派生した、強力なスキルになる。たまに適性が高いと一気に覚える場合もあって、俺もいくつかそのパターンで中級スキルを取得している。
上級は中級以下が進化したり、統合したりして得られるより強力なスキル。
最後にユニークは世界に一人しか所持者がいない、超貴重なスキルなんだと。で、予想通り強力なのはユニークスキルが一番らしいぜ?
俺からしたら、ユニークスキルなんてただの呪いだがな。
【普通】のクソ野郎のせいで、どんだけ俺が苦労させられてるかわかってんのか? えぇ、おい? まあ、ある意味強力なのは認めてやるよ。
ってわけで、これが今の俺の手札だ。
正直、生き残るのに必死すぎて逆に引くスキル構成だよな。
これ全部、イガルト王国の俺に対する態度がもたらしたスキルなんだぜ?
笑いしか出てこねぇよ。
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名前:平渚
LV:1【固定】
種族:日本人▼
適正職業:なし
状態:【普通】▼
生命力:1/1【固定】
魔力:0/0【固定】
筋力:1【固定】
耐久力:1【固定】
知力:1【固定】
俊敏:1【固定】
運:1【固定】
保有スキル【固定】
【普通】
『冷徹LV3』『高速思考LV4』『並列思考LV4』『解析LV4』『詐術LV4』『不屈LV3』『未来予知LV3』『激昂LV8』『恐慌LV9』『完全記憶LV4』『究理LV3』『限界突破LV3』『失神LV2』『憎悪LV8』『悪食LV1』『省活力LV2』『不眠LV2』『覚醒睡眠LV1』
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