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【普通】な俺の『普通』じゃない異世界召喚  作者: 一 一 
4章 よい子の青空学級編
140/165

100話 ゴブリン狩り

 俺が提案した『ゴブリン狩り』ってのは、日本でいう『鬼ごっこ』そのまんまだ。


 ただ、『追跡者』と『逃走者』の役割に当たる呼び方を『冒険者』と『ゴブリン』に変えている。


 ルールも呼び方を変えただけで、ほとんど原型と変わっちゃいねぇ。


 最初に『冒険者(オニ)』役と『ゴブリン』役に別れ、『冒険者(オニ)』は逃げていく『ゴブリン』を追いかけ、肉体に触れることで『ゴブリン』は『討伐された』と見なされゲームから脱落する。


 ただし脱落した『ゴブリン』はそれ以降、ゴブリン討伐隊の援軍という名目で『冒険者(オニ)』へと役割を転じ、残った『ゴブリン』を最後まで狩り尽くす、って感じだな。


 だが、このままだと『ゴブリン』がいなくなるまで続くため、最初から『ゴブリン』の負けが確定しちまうから、双方同意の上でゲームごとに時間制限を(もう)ける。


 この制限時間が過ぎた後、一人でも『ゴブリン』が生き残った場合、『冒険者(オニ)』が討伐しそこねたということで『ゴブリン』の勝利、っつう条件を追加した。


 これで『追跡側(ぼうけんしゃ)』も『逃亡側(ゴブリン)』も勝利条件が設定され、勝敗の判断が明確になるってわけだ。


「今回はそうだな、制限時間は三十分。移動可能範囲は隠れ里が肉眼で見えるところまで。そして、お前ら全員が『冒険者』で、『ゴブリン』は俺一人だけ。それが勝負のルールだ」


 で、もう少し踏み込んだルールを提示してやると、ガキどもはそれぞれ違う反応を見せた。


 血気盛んらしいショタ猫とロリ兎などは自分たちに有利と知ってか、わかりやすく笑みを作ってやる気を見せている。一部の年少組では打算がなく、ただの面白そうな追いかけっことして認識したらしい。


 反面、ショタ狐とロリ熊などは大人(おれ)との勝負にビビってか、不安そうな顔をして躊躇(ちゅうちょ)を見せている。残りの年少組もだいたい同じ反応だが、隠れ里から離れるのが怖いって感じが強そうだな。


 全体から見ると、勝負に乗り気なのはおおよそ半数よりちょっと多いくらい。俺の予想よりは多いな。


 テメェらが負けたら何されんのかわかんねぇのにビビらねぇのは、ガキ特有の怖いもの知らずかねぇ? いや、単に勝ったときのことしか考えてねぇだけかもしれねぇな。


 何にせよ、やるかどうかはコイツらが決めることだ。


「さぁ、どうする? 『ゴブリン狩り』で白黒つけるか?」


「わかった! そのゲームでお前をやっつけてやる!」


 改めて確認すると、ショタ猫から威勢のいい宣戦布告が飛び出したことで、双方の了承を得た。


 ってわけで、俺一人対獣人のガキ数十人との『ゴブリン狩り(オニゴッコ)』が開始された。


 (はた)から見たらただのガキのお()りでしかねぇんだろうけど。




「まずお前らはここで三十秒数えろ。俺はその間に『冒険者(オニ)』から出来るだけ遠くへ逃げる。数え終わった瞬間からちょうど三十分で終了だ。わかったか?」


「ふん! あとでほえづらかくなよ!」


 鼻息荒く睨み返してきたショタ猫へ言い含めてから、俺はガキどもに背を向けて走り出す。


 すぐに背後から大声のカウントが聞こえ始めたが、明らかにカウント速度が早ぇ。


 ガキにしちゃ知恵を絞った方だな。小賢(こざか)しいっちゃ小賢(こざか)しいが、別に『三十秒の数え方』に言及しちゃいねぇし、ルール違反とは言えない。


 だが、所詮(しょせん)はガキか。


 このゲームにおける『本当の注意点』にゃ、まだ誰も気づいちゃいねぇらしい。


「よし、みんな! あの人間をつかまえろー!」


『おー!!』


 で、およそ十五秒でカウントを終えたショタ猫の号令と同時、肩越しに後ろを振り返ると、ガキとは思えねぇ身のこなしで俺を追跡し始めた。


 流石に隠れ里の外で活動していたにゃん()や、それと毎日殺し合っていた『異世界人』の俺に比べりゃ身体能力は低いが、同年代の純粋人種と比較すりゃ破格の動きだ。


 加えて、隠れ里に(きょ)を構えるまでの道中や、旧ネドリアル獣王国にいた頃の集落での生活から、獣人族の大人を真似て色んな遊びをしてきたのは想像に(かた)くない。


 それにより基礎体力や体の動かし方が自然と(つちか)われ、最年少のガキでも低級の冒険者と同じくらいの俊敏さを見せてやがる。三十分くらいだったら余裕で動き続けられるだけの体力はあるだろう。


 ダメ押しに、俺とガキどもじゃ圧倒的に人数の差がある。実際の冒険者とゴブリンの関係だったら、一方的な弱い者イジメにしかなんねぇような、誰が見ても過剰戦力な構図に違いない。


 相手はガキどもとはいえ、油断してるとマジで捕まるかもな。


「かこめ、かこめーっ!」


 どうやらショタ猫がそのままリーダー役をやるらしく、いっちょまえにガキどもに指示を出す。


 すると、ステータス任せに追走したり、木々の枝から枝へ飛び移ったり、中には翼や羽根で空中を移動したりして、文字通り俺を百八十度包囲し始めた。


 こういう時、獣人族の特徴って厄介だよな。多種族の混成部隊が相手だと、それぞれのベースになる動物の身体的特徴まで考慮して警戒しなきゃなんねぇ。


 単に腕力や脚力が高い種族ならまだしも、猿やモモンガみてぇな特定環境下で力を発揮できる種族や、鳥や羽虫みてぇな戦場の空域をあっさり制圧できる種族がいると、それだけで戦術の幅が大いに広がる。


 今回みてぇな一人を相手に捕まえるだけ、っつう条件だったらいくらでも料理できそうだ。


「つかまえろーっ!!」


『やあーっ!』


 っつっても、それはあくまで専門の訓練を受けた正規兵の話。


 歩兵戦力(ガキども)はおろか、それらを動かす指揮官(ショタねこ)も戦術的知識は素人以下。


 俺を囲んだだけで勝ったと思いこみ、考えなしにバラバラに突っ込ませる時点で、集団全体におけるレベルは(たか)が知れるな。


「つかまえたぁ! ……あれ?」


 まず真正面から飛びかかってきた犬人(けんじん)族のガキは、跳躍(ちょうやく)して避けた。


 空を切った両腕で自分を抱きしめた後、目標(おれ)を見失って目を白黒させている。


「いたっ!? うわーん!!」


「う~っ……、な、なくなよ。ぼくだって、いたいんだぞ……!」


 次に、上空からきた鳥人(ちょうじん)族と虫人(ちゅうじん)族のガキどもに捕まる直前、木を蹴って方向を変えて回避。


 直後、二人のガキは突撃した勢いでお互いの額に頭突きをかまし、一人は号泣、一人は涙目でもう一人を(なぐさ)めだした。


「このーっ! むぶふっ!?」


 さらに、ぶら下がった木の枝から飛んできた猿人(えんじん)族のガキには、顔に道中拾った土をぶっかけた。


 不意打ちを食らったガキは目や口に入った土に驚き、俺を捕まえようとした手を顔にやって背を丸め、飛んだ勢いを殺して地面へ落ちていく。


「くっそーっ!! ひきょうだぞ、人間!!」


「何言ってんだ! ルールは『時間内に俺を捕まえること』だけで、お前らも納得してただろ!

 俺は一言も『逃げる方が抵抗しちゃいけねぇ』なんて言っちゃいねぇだろうが、バーカ!」


 勘違いしたショタ猫が(わめ)きだしたから、俺も逃げながら中指おっ立てて挑発する。


 それからも、ガキどもは個別に俺へ突っ込んできては、時に逃げられ、時に同士討ちとなり、時にギャン泣きして、次々と戦意を失い脱落していく。


 当然の結果だな。状況をひっくり返すような能力もなきゃ、持ち前の能力を最大限に活かせる統率力もねぇ。


 数だけはいる烏合(うごう)(しゅう)じゃ、実戦でも『ゴブリン』一匹捕まえられるか怪しいもんだ。


「このぉー!」


「お? なんだお前も追いかけっこに加わるのか?」


 で、残り時間が十分を切ったところで、ショタ猫が自ら突っ込んできた。


 指揮官が前へ出てどうすんだ、って話だがしょうがねぇか。


 すでに年長者であるショタ猫、ショタ狐、ロリ兎、ロリ熊ぐらいしか動いてねぇ。他は半数以上が泣いてるだけで動かねぇし、残り半数がそいつらのお守りだ。


 そして、脱落組は漏れなく戦意ゼロ。無闇に突っ込んだら痛い目に()う、とすぐに学習したらしい。年少のガキから『敵意』がこもった視線が向けられる。


 ったく、そんなに反撃が嫌だったらルール決めの時に条件付けろっての。


 わざわざ俺が『対等』の立場で挑んでやってる、って姿勢で声をかけてやってたのに、それくらい察しろよ。


 ルール無用の殺し合いなら話は別だが、ルールがある勝負なら俺が示したような大雑把(おおざっぱ)なルールよりも、ガッチガチに規則を決めた方が一方を不利にすることも可能だ。


 そのわかりやすい例が、『『ゴブリン』側の反撃禁止』だ。


 これを事前に決められちまえば、俺が自発的に起こせるアクションは『同士討ちの誘発』くらいしかできなくなる。


 加えて、俺が何をしてくるかわからない、という恐怖心が生まれることもなく、体力が有り余ったガキどもはいまだに全員(そろ)って俺を追い回していことだろう。


 つまり、たった一つの追加ルールを(もう)けるだけで、俺がガキどもを排除する手段をかなり制限できたはずなんだ。


 自然、体力と身体能力と空間制圧力の高ぇ獣人族(ガキども)の方が終始有利にゲームを運ぶことができ、今みてぇな四対一にまで戦力を落とすこともなかった。


 これも明らかに『準備不足』であり『作戦不足』である証拠。


 たかがゲームとはいえ、自分たちがより有利な方向へ持って行く努力を(おこた)った、ショタ猫たちの責任だな。


「……で? 残り一分を切ったけど、俺を捕まえる算段はついたのか?」


「う、うぅ~っ!!」


 結局俺に一度も触れることができず、土まみれの顔を悔しさでゆがめたショタ猫が(うな)る。途中から石を投げた反撃も加えていたから、よく見りゃちょこちょこ体に青あざが出来てんな。


「つ、つかまらない……!」


「なんなのよ、この人間!?」


「からだ、いたい……」


 他のショタ狐、ロリ兎、ロリ熊も似たような状態で、俺から一定の距離以内に入ってこようとはしない。


 俺は老若男女で扱いに差をつけねぇ、立派な男女平等主義者だ。


 ロリ兎とロリ熊にも、ショタ猫やショタ狐と同じ力加減で石をぶつけてる。ダメージ蓄積量もほぼ均等だ。仲間外れはよくねぇからな。


 あえてガキどもを褒められそうだとすれば、体力だけだ。ほぼ三十分動き回ったのに、誰も息切れ一つしてねぇのは大したもんだろう。


 今のままじゃ宝の持ち腐れみたいなのは残念だが。


『う、うわあああああっ!!』


 ショタ猫どもとの(にら)み合いが数秒続いた時、突如戦意を失っていたガキどもから悲鳴が上がった。




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名前:ヘイト(平渚)

LV:1(【固定】)

種族:イセア人(異世界人▼)

適正職業:なし

状態:健常(【普通】、【魔力減少・常】)


生命力:2004/2004(【固定】)

魔力:1418/1812(【固定】)


筋力:176(【固定】)

耐久力:148(【固定】)

知力:183(【固定】)

俊敏:135(【固定】)

運:1(【固定】)


保有スキル(【固定】)

(【普通】)

(《限界超越LV10》《機構(ステータス)干渉LV2》《奇跡LV10》《明鏡止水LV3》《神術思考LV3》《世理完解(アカシックレコード)LV2》《魂蝕欺瞞(こんしょくぎまん)LV4》《神経支配LV5》《精神支配LV3》《永久機関LV4》《生体感知LV4》《同調LV5》)

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