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【普通】な俺の『普通』じゃない異世界召喚  作者: 一 一 
4章 よい子の青空学級編
139/165

99話 ガキども襲来

「おいっ! そこの人間っ!!」


「あ?」


 夜が明けるか明けないかくらいの早朝。にゃん()用トラップを仕掛けようと森の中を散策していると、背後から威勢のいい声に呼び止められて振り返る。


「どうしてお前みたいなひょろっちいやつが、シェン(ねえ)に勝ててるのか教えろ! ひきょうな手でも使ったんだろ! シェン(ねえ)に言いつけてやる!」


 おいおい、ド直球にこっちの手の内バラせって言われて教えるバカがいるかよ?


 それに手段が卑怯前提ってどういうことだ?


 俺の体格か? そうなんだなクソガキ?


 モフるぞこの野郎。


 出会って早々イラっとさせてきたのは、獣人族の隠れ里で見かけたガキどもだった。


 人数的にはざっと数十人で、見た目の動物的な特徴はバラバラ。隠れ里にいるガキ全員、ってわけじゃなさそうだ。


 で、俺に真っ向から啖呵(たんか)を切ってきたのは、見た目十歳以下で人間ベースな獅人(しじん)族の少年(ガキ)


 顔の特徴や毛並みの色からして、にゃん()の親族ってわけじゃなさそうだな。他の年齢層も大体同じで、十代以上はゼロっぽい。


 ついでにシェン(ねえ)って呼ばれてんのは、にゃん()がガキの面倒をよく見て懐いているから、ってところかねぇ?


 こんだけの数のガキを手懐(てなず)けるとは、にゃん()もなかなかやるな。


 このタイミングで接触してきたのは、にゃん()の連敗記録が重なりすぎて我慢の限界が来たのが半分、親の目を盗んで結託(けったく)し自分たちで()らしめてやろうってのが半分、後は純粋人種への好奇心が少しってところだな。


 まあ、獣人族のガキからしたら不愉快にも思うだろう。


 自分たちのリーダー的存在のにゃん()が純粋人種に毎回やられるのも、純粋人種(てき)を殺そうとする大人がにゃん()以外にいねぇのも、コイツらには納得できねぇはずだ。


 同時に、意識的か無意識的かは知らねぇが、コイツらは自分たちが簡単に殺されねぇだろうことも理解している。


 獣人族サーチ&デストロイのヤベェ奴だったら、すでににゃん()は七回以上死んでるしな。


 だから、直接俺に接触することに決めたんだろう。今日こそにゃん()に勝たせてやるために。


 あわよくば他の大人の代わりに純粋人種(てき)をやっつけるために。


 もし危ない状況になっても純粋人種相手だったら逃げきれるし、隠れ里も近くにあるから逃げ場所もある。


 最悪殺されはしないんだから、って打算もあるだろうな。


 しかし、出会い(がしら)に『手の内教えろ!』ってのはどうよ?


 会話の駆け引きなんざ知らねぇガキらしいといえばらしいが、それでももう少し隠す努力を見せろっつの。


「寝言は寝て言えクソガキ。殺し合いをしている相手を有利にするような情報を教えろと言われて、よしわかった、なんて言う奴いると思うか?

 いたらただの自殺希望者だ。少しは考えて物言えよ、バーカ」


「なんだとぉ!!」


 とりあえず、《精神支配》を使用しつつ大人げない口調と表情で鼻で笑ってみた。すると案の定、ガキどもは俺の態度に明らかにムッとする。


 リーダー格っぽい獅人(しじん)族のガキは目に見えて激昂(げっこう)し、犬歯を()き出しに声を荒らげた。


「っつうかそもそも、それが人に物を頼む態度か、あぁ? 自分がガキだからって、何でもかんでも頼めば応じてくれるなんて思ってんじゃねぇぞ。

 世の中は常にギブ&テイク。何かをして欲しけりゃ、それ相応のもんを持ってこい」


 今回の場合だと、『俺の命と同等の物』くらいは提示してこねぇと話にならねぇ。口を滑らせりゃ即『死』に繋がりかねない情報の対価としては当然だろ?


「お前こそ、こども相手に大人げないぞ! おれたちにできることなんて、あるわけないじゃないか!」


威張(いば)って言うことじゃねぇだろ、ないことを誇るなアホ」


「二回もバカにしたなぁ!!」


 情け容赦ない俺の返答に獅人族のガキは地団太(じだんだ)を踏み、顔を真っ赤にさせて怒り出した。


 っつーか、にゃん()といいこのガキといい、獣人族って(あお)り耐性ひっくいな、おい。


 いや、もしかしたら獅人(しじん)族特有なのか? イガルト人の高位貴族と同じなんて、残念な種族だな。


「……じゃあ、ぼくたちと勝負しろ。それで勝ったら、お前の弱点を教えてもらう」


「ほう?」


 すると、今度は狐人(こじん)族のガキが俺を指さし、別の取引を持ちかけてきた。


 実際は取引といえるほど上等なもんじゃねぇが、交換条件にできる資源がねぇコイツらにとっちゃ、譲歩(じょうほ)を引き出せる可能性のある方法ではある。


 成功率は限りなくゼロに近いがな。


 何せ、もし勝負に乗って俺が勝ったところで、最初から何も持っちゃいねぇガキどもに要求できるもんがねぇんだから、そもそも勝負が成立しねぇ。


 外からじゃ単なるお遊びに見えても、俺とにゃん()は互いの『命』を懸けて()り合っている。


 それと同じように、勝負においても同等の交換条件を約束するのは必要だ。


 片方だけにメリットがある勝負なんて、受ける方はバカらしくて同意なんざするわけねぇんだからな。


「なら、俺が勝ったらテメェらは何をしてくれるんだ? まさか、自分たちだけ条件を出しといて、負けたらゴメンで済むなんざ思っちゃいねぇだろ?」


 デメリットをわかって口にしたのかを確かめるためにも、俺はガキどもに挑発的な言葉で返してみる。


 とはいえ、こんなガキに『俺の命』と同等の価値がある対価なんて、用意できるなんて思っちゃ――


「ぼくたちが負けたら、ぼくたちをにるなりやくなり好きにすればいいだろ!」


「よし、乗った」


 ――なるほど、いい手だ。


 まさかガキからそんな台詞が出てくるとは思わなかったから、条件反射で頷いちまったじゃねぇか。


 このガキ、なかなか俺のツボを理解してやがる。


 他の奴じゃ一蹴しただろうが、癒しに()えているモフリストの俺にはこの上なく魅力的な条件だ。


 え? 俺の命?


 獣人族(モフモフ)の毛並みを存分に堪能できるなら、安いもんだろ?


「今つけた条件を忘れるなよ。いいか、絶対だぞ。負けてから『やっぱなし』は通用しねぇんだからな。これは遊びじゃねぇんだ。俺とテメェらの間に交わされた立派な勝負で、約束は守らなきゃなんねぇ。わかったな? わかったらちゃんと返事をしろ」


「……え、う、うん」


《精神支配》を超える興奮からか、過剰に念を押す俺に狐人(こじん)族のガキは引きながら頷いた。他のガキどもも盛大に引いているが、そんなん知ったことか。


 よし、言質(げんち)はとったぞ。後でしらばっくれても無駄だからな。


 待ってろよ、ケモ耳尻尾(モフモフ)よ!


「で? 俺と何の勝負をしようってんだ? そっちから言い出したことだ、勝てる見込みのあるもんを持ってきたんだろ?」


「……え?」


 勝負が成立したところで競う内容を聞いてみると、ガキどもが一斉にポカーンとし始めた。そして、俺をそっちのけで背を向け、全員で円陣を組んで相談しだす。


 ……おいおい、まさか売り言葉に買い言葉のノープランってこたぁねぇよな?


「ど、どうする? 勝負ったってなにするんだよ?」


「知らないわよ! フォレクセウが言い出したんだから、なんかあるんでしょ!?」


「ええっ!? ぼ、ぼくは、その、なんか、いきおいで、その……」


「さっきの強気はどこいったのよ! じゃあ、クウェベウェルがきめてよ! 人間をたおそう! ってさそった言い出しっぺじゃない!」


「おれ!? そ、そんな急に思いつくわけないだろ! そういうイラワフェールこそ、なにかないのかよ!」


「わ、わたしに聞かないでよ! そうだ、ウルンベルウィはなにかないの!?」


「え!? えと、おままごと、とか?」


「どうやってかちまけをきめるんだよ、それ!」


 よし、このガキどもが考えなしなのはよーくわかった。


 あと、こっちに聞かせるつもりのねぇ内緒話なら、もっと声量落としとけ。


 ちなみに、会話の流れから察するに、最初に喧嘩を売ってきた獅人(しじん)族の少年(ガキ)が『クウェベウェル』で、次に魅惑的な条件を提示した狐人(こじん)族の少年(ガキ)が『フォレクセウ』。


 やたら強気な兎人(とじん)族の少女(ガキ)が『イラワフェール』で、ままごとで勝負を決めようとした熊人(ゆうじん)族の少女(ガキ)が『ウルンベルウィ』だな。


 呼び方はそれぞれ、ショタ猫・ショタ狐・ロリ兎・ロリ熊でいいだろ。


 そもそも獣人族の名前って、微妙に長くて言いづれぇ。横文字より漢字に慣れてる純日本人なめんな。


 その四人がガキどもの中じゃ年長者らしく、示し合わせたように人間ベースの獣人だ。そいつらが()めてるからか、より年少のガキどもは全員不安そうにしてんな。


 それによく見れば、コイツらの中に獣ベースのガキが一人もいねぇ。隠れ里で派閥(はばつ)でも出来てんのか? 別にどうでもいいが。


「……おーい、ガキども」


 とはいえ、このまま放置しててもただ時間を無駄にするだけっぽいし、ここは一つ俺の方から提案してやろうか。


「なんだよ! うるさいな! 今さくせんかいぎちゅうだぞ!」


「それは普通、事前にやっとくもんなんだよ、マヌケショタ猫。何も思いつかねぇんなら、俺が知ってるゲームで勝負をしてみるか?」


「なんだとー!」


 何故かショタ猫だけいきり立ったが、他は俺の言葉に怪訝(けげん)そうに見上げてくる。


「ゲームって、どうせ人間に有利な勝負をしかけるつもりじゃないの!?」


「安心しろロリ兎。ルールは単純で簡単だし、むしろ基礎ステータスが高ぇ獣人族のお前らの方が断然有利なゲームだよ」


 ロリ兎が噛みつくように立ち上がり、俺を指さしてきた。しかし、ガキの遠吠えに反応することなく言い返すと、途端に(ひる)んで言葉が続かない。


 まあ、あの年齢じゃ二・三個年上でも相当大人びて見えるもんだから、俺にたてつこうとしただけでも大した胆力(たんりょく)といえる。ウサギ耳のくせに。


「ど、どんなゲーム、なの……?」


 すると、どうやら小心者っぽい性格のロリ熊がおずおずと聞いてくる。ロリ兎の背中に隠れて上目遣いとか、なかなかあざとい。


 もったいぶるもんでもねぇし、さっさと説明して決めてもらうか。


「名前は『ゴブリン狩り』。ちょっとした追いかけっこだ」


 ゲーム名を口にするも、一度も聞いたことがねぇのかガキどもはそろって首を傾げた。




 さーて、新しく出てきた獣人族の名前、覚えられるでしょうか?

 ……私? もう限界超えました(涙)。


====================

名前:ヘイト(平渚)

LV:1(【固定】)

種族:イセア人(異世界人▼)

適正職業:なし

状態:健常(【普通】、【魔力減少・常】)


生命力:2004/2004(【固定】)

魔力:1651/1812(【固定】)


筋力:176(【固定】)

耐久力:148(【固定】)

知力:183(【固定】)

俊敏:135(【固定】)

運:1(【固定】)


保有スキル(【固定】)

(【普通】)

(《限界超越LV10》《機構(ステータス)干渉LV2》《奇跡LV10》《明鏡止水LV3》《神術思考LV3》《世理完解(アカシックレコード)LV2》《魂蝕欺瞞(こんしょくぎまん)LV4》《神経支配LV5》《精神支配LV3》《永久機関LV4》《生体感知LV4》《同調LV5》)

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