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ダイエットとは苦行と同意なり。

短いです。

 姉さんは、私は痩せればモテるとおっしゃった。


「いい、フランカちゃん。男にモテるの。モテてモテてモテまくれば、『あの方』よりも強い男にも出会えるかもしれない。フランカちゃん好みの白馬の王子様がきっと現れるわ。だから諦めないで!」


 ゆっさゆっさと揺さぶられる身体。震える私の腹肉。……姉さん、熱意は伝わってくるけれど。別に今、痩せなくちゃ、という切迫感はないんだなあ、これが。

 そりゃ、美の化身たる姉さんからすれば歯がゆいばかりであるでしょうが。


 スリム体型、かあ……。


 私は姉さんの胸の谷間をガン見します。実に魅惑的な谷。私が痩せても絶対ああはならんな。


 痩せることを今まで考えなかったわけではありません。ただ、少しでも痩せると全力でお菓子を食べさせようとする弟と口論するのが面倒だっただけで。


 私の体重管理はヴィル任せになっています。ヴィルくんの理想は子豚ちゃんらしいからね。


 なにせ、今までの人生の中で一番痩せに近かったのはヴィルと離れていた学院一年目だったけれど、再会直後に美味しいお菓子をいくつも量産した挙げ句に頻繁に食べさせにきたものだから、あっという間に領地にいたころと変わらないぽっちゃり具合になったぐらいだし。


 こう考えると、私のぽっちゃりとヴィルの関係って深いなあと思います。つまりヴィルを振り切った今、痩せやすい時期に突入していると言えなくもありません。


 とはいえ今の体型に不満は何もなく、こだわりもないんだけれども。今のままでも支障なく動けるからねー。


 困った私は、ふとテオドーラに目をとめます。

 出るところは出て、ひっこむところは引っ込むナイスばでー。姉さんと比べればまだまだ青臭い感じもありますが、十分将来有望じゃないでしょうか。


「ねえ、テオドーラからしたら私は痩せていたほうがいい?」

「勝手になさったら!」


 そうだよねー。

 

 この場にいるのは三人。三人中二人は「どっちでもいい」。一人が「痩せて欲しい」。だったら、痩せた方がいいな、きっと。私が痩せたら少なくとも姉さんは喜ぶもの。


「わかった。痩せるよ、私」



 そんな感じで安請け合い。まあ、どうにかなるんじゃないという、軽い気持ちでした。








翌日から、姉さんの目が鬼になりました。


「フランカちゃん、ダッシュ」

「フランカちゃん、ジャンプ」

「フランカちゃん、一回転」


 隙あらば私に運動させにきます。さらには、


「フランカちゃん……ここは我慢よ。わたしも我慢するから、一緒に頑張りましょうね」


 隠し持っていた秘蔵の肉ブロックを没収されました。

 代わりに炒り豆を渡されます。ひもじくなったら少しずつ食べろと……。


 馬車の休憩のたびにあれやこれやと私を運動させにかかってきたので、私も考えました。


 朝、宿屋から出てきた私に、王子様は不思議そうな視線を向けてきます。


「えと、どうしたの、その格好は。妙に勇ましいけれど」


 据わった目をした私は、無言で「相棒」の身体をさすりました。


 「痩せ」イコール「運動すればいい」! ……つまり、乗馬だ!


 私は昨夜自腹を切って購入した馬に乗って朝靄の宿場街を眺めます。


「この子の調子を見てくる。すぐに帰ってくるって姉さんに伝えておいてね。じゃ」


 しっかりとズボンを穿いた男装に身をつつんだ私はそのままかっぽかっぽと馬で出かけ、出発時に間に合うように戻ってきました。


 姉さんに、一言。


「私、しばらくこの子に乗って、馬車の先導することにしたよ」

「そうね……そのほうがいいかもねえ」


 なんともいえない顔をした姉さんだけれども、納得はしてもらえました。

 なので、そのまま。


「ハイヤーっ!」


 雄叫びをあげながらまだ上がりきっていない朝日めがけて、駆けていったとさ。

 とりあえず馬が疲れを見せたら、休憩に入って馬車を待とうと思います。


 

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