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物事って大体計画倒れ。

 私の理想的な将来設計について話したい。


 今年で無事に学院を卒業し、家に戻る。以降はひたすら騎士団の皆さまの筋肉を愛でつつ、世話を焼く。一方で肉の品種改良に勤しむ。牛は目途がついたが、まだブタとニワトリが残ってる。ジビエ系の肉でも面白いかもしれない。


 同時に売り込みもしなければ。文化は貴族から庶民へと下りていく。美食家の貴族たちにある程度評価してもらえれば、後々の販売ルート確保も楽になる。安定した需要があれば、蛍石以外特に名産品もないツヴィックナーグル領も活性化できる。


 おそらくこのころには弟は結婚して、一人や二人ぐらい子どもができているかもしれない。が、そうじゃなくとも、中央で軍人となっているだろうから、代わりに私が実家を守る。本当は男兄弟がツヴィックナーグル騎士団長として立つのがいいけれど、今は直系が私と弟しかいないから仕方がない。今はおじいさまがいるけれど、遠からず騎士団でも実力のある誰かか、血縁の誰かを婿養子にむかえ、彼がその地位を引き継ぐ。


 で、そのうちに年を取ってー、引退してー、そのうちぽっくり。


 その辺りが妥当なところじゃないかしら。ま、血縁だったら、私と結婚しなくとも特に問題なさそうだけれどね。ちなみに、私が選べるとしたら、一番強い人にしようと思ってる。きっといい筋肉をお持ちの猛者に違いない。それを毎日鑑賞できるだけでも結婚する甲斐はありますねえ。



 そんなわけで、全体から見れば、学院に通う三年間はいわば停滞期です。生涯的な目標を何も持たない時期。言い換えれば自由が与えられた時期。だからわりと好き勝手やってます。だって、社交界に出る予定のない令嬢だもの! そもそも暇人なんですー。


 これでも学院自体は楽しんでますよ。最初は「えー、めんどくさいー」という感じだったけれど、入ってみたらそれなりに愛着がわいてくる。こんなに大勢の同世代を相手にすることってないもの。おかげで我が家が貴族の中でも浮きっぱなしの異色だらけということもわかったけれど。せめて同世代の同じ辺境を守る軍門貴族がいれば、色々わかちあえる部分があったかもしれない。弟の将来のためにもなったでしょうに。


 でもないものは仕方がないし、そもそも縁がなかったと考えます。何事も前向きに考えよう。




「それでさ、姉さん」

「なにさ、弟よ」

「僕に何か言うことがないかなあ」


 ちょっと考えてみた。一応考えてみた。……そうか、うん。


「私は自らの信念に背くような行動は一切した覚えがない!」


 右手を上げて、宣誓ポーズまで付けてみた。どうよ!


 弟はジト目でした。


「姉さんが僕のことを全然考えてくれない……」


 なにおう。失礼な! 私はいつも家含め弟の盤石な将来のことを考えているぞ!


「僕は姉さんの一番でいたいんだ!」


 何を言っているんだ、弟よ。君は言わずとしれた、私の一番だとも。だって弟だもの。


「ねええええさあああああんんん!」


 飛びつこうとしてくる弟。いや、場所考えようよ、ここはどこ。そうだ、授業後直後の校舎の中庭じゃないか。おさわり厳禁じゃないか。


 ぴしっと弟の鼻先に人差し指を突きつけて押しとどめます。


「ヴィル。これ以上騒がない。何を言うつもりかわからないけど、どっちにしろ大したことじゃない。少なくとも、私にとっては。よろしい?」


 さっさと踵を返してみせると、


「ねええええさああああああんんん!」


 と、後ろから飛びかかってきたので、華麗に身体をひねって技をかけさせてもらった。背負い投げ、決まった。もちろん弟は受け身を取っているので無傷です。


「その容赦のなさ……やっぱり姉さんは最高だ」


 勝手に言ってろ。いや、やっぱり胸を凝視しながら言うのはやめてもらおうか。

 はい、と手を差し出して立ち上がらせる。幸いにも目撃者は少なかった。


 二人しててくてく歩き始める。


「そういえばそろそろ試験だけど準備は進んでる? なんなら僕が手伝おうか」

「そこまで切羽つまってないわよ。私は基本的にコツコツ型だもの。ヴィルこそ範囲一通りぐらいはさらっておきなさいよ。優秀さに胡坐を掻いているようなら首席の座はいただくわ」

「首席の姉さんも見てみたいなぁ」

「言っておくけど、全力尽くさなきゃだめだからね」


 ちなみに前回の試験における成績。



 首席、ヴィルヘルム・ツヴィックナーグル。

 次席、フランカ・ツヴィックナーグル。



 付け加えておきますが、ダンスは全体成績に入りません。


 ……。 


 いやだって、と弁解させていただきたい。みんなもうちょい勉強すべきだと思うの。

 どー考えても私みたいな野生児がちょっと真面目に勉強したからって次席取れるとは思わないでしょーよ! なんなんだこの学院はおかしい! お貴族様が勉強しないで済むとか笑わせるなよ! そんなんじゃこの国はいずれ傾くわ! 


 国のトップなる者、決して勉学をおろそかにすることなかれ。


 と、いうのに。私の成績はあがる一方、皆の成績は下がる一方。どんな評価をとってもよほどでない限り、最終的に金で単位が買えてしまうのだから皆頑張りたがらない。皆今年で卒業だけど大丈夫じゃないじゃん!


 お貴族様はすなわち国の管理職でもある。しかしながらこの嘆かわしい状況を見るに、絶対にヴラジミール大学あたりで勉強している未来の官僚たちの方が頑張ってるぞ。


 私は学力の底上げを決意した。というわけでまずは身近なところから。


「ヴィル。ちょっと頭を貸して」

「いいよ」


 弟は即答した。よく言った弟よ。覚悟しとけ、弟。全教科「優」評価を取るその頭脳を最大限活用してやる!

 




 





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