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マスト・ヒーロー  作者: 鈴木りん
2 オフィスレディ、ヒロミン
7/32

2-3

(そういえば、あの頃の私、みんなからヒロミンと呼ばれていたっけ……)


 裕美の頭の中で、夏休み中の公園ではしゃぐ、数人の子どもたちが動き出した。


(自分でいうのもなんだけど、相当のオテンバさんだったわ。ケンカもそんじょそこらの男子には負けなかったし……。

 あだ名の響きが「ヒロイン」に似ていたから、自分でもまるで正義の味方にでもなった気になってたのよね。男子たちといっつも戦隊モノの遊びばっかりしてた)


 ピンク色のスカートをはいた低学年の自分が、真夏の陽射しの中、走り回る。


(クラスの弱ッチイ男子――えーと、名前はなんてったけ、確か、ヒデヒロ君とかいったな――を敵の怪人にして、正義のピンクヒロインよろしく、暴れてたなあ……。

 考えてみれば、あの頃が一番楽しかったかもね、うん)


 裕美の会社向けの堅い顔が、笑顔でほころぶ。


(あの頃の私なら、迷わず目の前の敵と闘ったでしょうね……。

 なのに今の私ったら、いったい何なの? 悪を目の前にして怖気づいてる……。

 正義のピンクヒロイン「ヒロミン」ともあろう、この私が!)


 そのときまた、机の上の電話が鳴った。

 裕美の白昼夢は、またもやその電子音で、頓挫した。

 相変わらず、周りには誰もいない。肩をすくめた裕美が、受話器を持ち上げる。


「はい、岡本商事です」


 北国の夏の陽射しが傾くまでには、もう少々時間が必要なようだった。

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