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――ぐわんぐわんと、波打つように響く音。耳が痛くなる。しゃんしゃん激しい、セミの鳴き声も混ざっていた。
場所は、どこかの公園だ。この緑の感じや土埃の臭いには覚えがある。懐かしい。
陽射しは、ほぼ真上にあった。
半袖の白いシャツから突き出た自分の腕が、じりじりと音を立てて焼けていく。半ズボンから出た足の膝小僧が、擦りむけて赤くなっていた。
僕は子どもなのか? そうとしか思えない。見える景色が、全体的に低いんだ。
ニートなんかやってるから、子どもに戻っちゃったのかな……。
目の前には、赤、青、緑……色とりどりの服を着た五人の子どもたちが、並んでいた。
赤い少年……。
ああ、君はガキ大将の「あっちゃん」だね? おっと危ないっ! いきなり殴りかかってくるなよ!
青い少年……。
えーと、君は、隣の家の「たけしくん」だね。懐かしいなあ。今、何してるの? ――って、その猫パンチみたいな攻撃、やめろよ!
黄色と緑の少年……。
ごめん、ちょっと思いだせない。まあ……元気にやってるか?
ピンクの少年……。いや、スカートをはいてるから、少女だね。キミは確か、クラスの男勝りな女子だった、「ヒロミン」だな。いきなりのチョップからの後ろ回し蹴りって、何すんだよ!
……?
ちょっと待って。
どうしてみんな、僕に攻撃するの?
そうか。これは昔よくやってた、ヒーローごっこだな。にしても、僕は悪役なわけ?
そうだった、思い出したよ。
改造人間とか怪人とか、とにかく、敵ばかりやらされていたっけ……。
僕だって、ヒーローになりたかったのに。かっこいいヒーローになりたかったのに!
毛局、五人に寄ってたかって、倒された。
体中、砂まみれの埃まみれ。腕には痣もできて、ヒリヒリする。
ちくしょう、ちくしょう!
僕だって、ヒーローになりたい。だって、僕の名前は漢読みすれば「エーユー」。
そう、「ヒーロー」なんだから――
いつしかヒデヒロは夢の世界から抜け出し、現実の世界――孤独な眠りの世界へと落ちていったのだった。