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Myth  作者: 詞葉
Myth 本編
20/83

第三章(3)

 その日、開館直後の図書館に、前代未聞の大声が響き渡った。


「どういうことよ、これ!」

「セ、セロシア。しー!」


 新聞の閲覧ゾーンで、セロシアは握った新聞を破る勢いで立ち上がった。ギロリと向けられた司書の視線に、セルリアは彼女を宥めて座らせる。


「何よ、この記事はっ」

「落ち着いて、お願いだから!」


 口ではそう言うものの、きっと無理だろうなと思った。セロシアだけではない。セルリアだって、本当は叫び出したいぐらいなのだ。


 一年前に二人は殺された、と言ったのは死者の道にいたイワトビペンギン。彼によると、死亡日時は三月二十七日の午後十時頃。

 新聞に載るのなら次の日の朝刊か夕刊だろう、と探し始めた。

 けれど載っていない。次の日も、そのまた次の日も。二人が殺されたという記事はまったく欠片もないのだ。双子が同じに日に死んだというなら、話題性もあって新聞にも取り上げられるはずなのに。


 ようやく自分達の名を見つけたのは、殺された日から一週間後の新聞だった。しかも、予想より見出しの小さいそこには、信じられない言葉が書いてあった。

『女子高生の双子失踪。誘拐か、家出か。警察は両面での捜査を開始し……』

 二人は、行方不明ということになっていた。もちろん、犯人の名などあるはずもない。


 セルリア達は探し続けた。今日までの新聞を、週刊誌を全て。どんな小さな記事も見逃さぬよう端から端まで全て探し続けた。けれど、話題は『家出ではなく事件の色が濃い』というのを最後に、新聞から姿を消していた。

 気力も、勢いも全て失って図書館を出ると、すでに太陽は真上を大きく過ぎている。


「どうなってんのよ。こんなのって……」


 上を見上げながら、あれだけ怒りに満ちていたセロシアの顔が悲しみに歪んだ。

 結局、双子は行方不明のまま、ということになっていた。だが、二人は死んでいるのだ。ならば、死体はどこかに遺棄され、犯人は――


「あたし達を殺した奴、どこかでのうのうと、普通に生きてる……」


 そういう、ことだ。


「こんな理不尽なの……ないわよっ」


 セルリアは何も答えられなかった。返事をしてしまえば、自分でも思いもよらない言葉が口から出てきそうで。

 その代わり、強すぎるほどに握られた妹の手を取る。優しく、包むように。


「セロシア」

「……何?」

「お昼、食べに行こう」


 ニコッと笑って、朝とは逆にセルリアがセロシアを引っ張って走り出した。

 連れだって入ったのは駅の傍にある洋食屋。生きていた時よく二人で来た。

 鉄板に乗せられたまま出てくる熱々ハンバーグに、添えつけのホクホク野菜。


「わぁ、いい匂い。セロシア、ここのハンバーグお気に入りだったもんね」

「……うん」


 ようやく頬を緩めて笑った彼女に、セルリアはホッとする。いつも元気で明るいセロシアだから、一度落ち込むとなかなか浮上することができない。

 けれどセロシアに悲しい顔は似合わない。セルリア自身、彼女にはずっと笑っていてほしいと思う。


 美味しい、と嬉しそうにハンバーグを食べる姿。その時、胸に起こったチリッとした痛みをセルリアは無視する。

 この笑顔を奪った者に対する醜い感情。そんなもの、セロシアには知られたくなかった。


短い更新ですみません!! 次は明後日ぐらいにはもう一話分!!

このお話のハンバーグ。かつて私がバイトしていた店の物です。

ホクホク野菜は丸ごとのジャガバタです! そしてランチで一緒に出てくる丸ごとトマトのサラダが美味しいのですよ!!

また食べに行きたいな~。


そして、ここでお礼を。

アルファポリスの第5回ファンタジー小説大賞に投票してくださった方ありがとうございます!!

エントリーしているのがすでに完結済みの奴だったので、お礼はどこでなら一番見てもらえるのだろう、と思ってここに書きました!

とっても励みになります!

これからも頑張るので、懲りずに読みに来てやってください!!

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