sence05
今回は短めです…
まだまだ朝方は寒い。しかしその寒さにも負けずに空を飛び交う鳥達。
端正な住宅街にも朝がやって来た。もちろん大きな飯田邸の庭にも朝日がサラサラと流れ込んでいる。
しかし離れの家だけは違う。ただし二人を除いてだが…
「皆さん朝ですよ〜!ご飯作ったから起きて!!」
と男子の部屋をノックし、女子の部屋の美咲を起こす。
直接起こされた美咲を体を上げると頭がズキズキ痛み一瞬顔を歪める。
「ほら。美咲ちゃん起きて!!」
「うん…起きたけどさ…愛ちゃんは朝強いね」
「ちゃんと寝ましたからね」
とニコニコ答えた。
そこで美咲は唯が居ない事に気付き愛にどうしたのか問う。
「あ。唯ちゃんも朝早くてね!今お風呂入ってる」
本当は唯も朝食を作ると言ったのだが昨日の料理を思い出し愛がお風呂でも入ってゆっくりしててと言ったのだ。
「はい。じゃあ準備出来たら下に来てね!」
「うん」
翔一と優の姿が見えないので愛はもう一度男子の部屋をノックした。しかしうん。ともすん。とも言わないのでドアを開けて起こしに入った。
「ほら!翔ちゃん!優君!起きてご飯食べよう!」
「う〜…唯ちゃんと美咲ちゃんが作った料理は〜…」
と、寝惚けた優が体を起こし口を開く。
それを見て愛はクスクス笑い、
「私が作ったから」
と優に言った。その途端優の目が輝き準備を始めた。後は翔一だけである。
「ほら。翔ちゃん?起きないとご飯抜きだよ?」
「美咲と唯ちゃんのだったらいらない〜…」
まったくこの二人は考える事があまり変わらないのである。しかし考える事が同じでも運は違う。その言葉をちょうど支度をし終わって下に行こうとした美咲に聞かれたのだった。
「へ〜。翔一君?私の料理だったら…何?」
「……」
こうなったら寝たふりと決め込む翔一と引き下がれない美咲。
そこで愛が翔一にそっと耳打ちをした。
「帰りに犬に追い掛けられちゃうよ?本当はいるんだって!」
翔一は何も言わずに体を起こしテキパキと準備をし始めた。翔一は実は犬が苦手である。可愛いとは思うのだが大きな犬が怖いのである。だからさっきの愛の一言は鶴の一声である。
唯もお風呂から上がり皆が席に座った所で優が、
「合掌、頂きます」
と言い笑いながらの朝食が始まった。
愛は母親の手伝いをちゃんとやるのでしっかりと出来る。
しない人は…
「本当に愛ちゃん料理上手だね」
「本当です…」
美咲と唯は昨日の自分のと出来が全然違うのにびっくりしている。
ここに料理長・愛が決定した。
朝食後女子は椅子に座りお茶を飲みながら談笑している。とても花のある光景である。だがしかし…台所違った。
「おい翔!!てめぇ水弾き過ぎなんだよ。気を付けろ!」
「うるせぇ!てめぇが洗剤無駄使いして流さなきゃいけねぇ泡の量が増えてんだよ!!この環境破壊野郎!!」
「なんだと〜喰らえ泡攻撃!!」
……とても見ていられない光景である。
しばらく時間が経ち…
皿洗いの後男達は出来もしないのに、水回り、ガスコンロ、換気口の掃除をし、台所はかなり綺麗になった。
「ナハハハ!!さすがはオレ達だ!!綺麗だな。翔」
「あぁ。なんだか清々しいぜ相棒」
が、掃除を全てしたのは非常に良いことだとは思う。しかしそれは場によるのだ。
それを後ろからの言葉により酷く実感する二人。
「あのー…翔一君?優君?アタシ達はなんて言いましたか?」
「え?後片付けお願いって…」
「そう。後片付けよ。アタシ達は待ってるから皿をお願い。って言ったのに…」
「まぁまぁ良いじゃないか。綺麗になったんだし」
そう優が優しく言うが…
「綺麗にしてくれたのは良いけど二人共?今何時?」
二人は同時に時計を見る。
「「11:30!?」」
凄まじい集中力である。いや、二人共遊びながらの様なものだったから集中力など使って居ないのかもしれない。
「12時解散予定で11時30分まで掃除ね?」
「優…ちょっとやりすぎたな…」
「あ、あぁ…」
その帰り、美咲の命により、本物の番犬達が翔一と優を追い掛け回った事は言うまでも無い。
こうしてグダグダの一泊二日、飯田邸宿泊は幕を閉じた。