sence04
過去の話が入ります。読みにくくなりましたがよろしくお願いします。
あれからかなり時間が経ち日付は既に変わっている。そしてあまりお酒を飲まないであろう女子二人は寝てしまった。
「ふぅ。優。お前まさかこれぐらいで酔ってねぇよな?」
「当たり前。さっきは酔ってたふりをしてただけだ。まだ酒も少し有るし…この寝てるお嬢様方をお二階に運ぼうか」
「そうだな」
と翔一は小さい唯の方を。いや。決して美咲が太っているとかそういうわけでは無いのだが…
優は美咲をおんぶし、戸を開けて二階に行った。
登りきり右に曲がり真っ直ぐ。そこにさっき来た引き戸があった。そこを開けて二人は降ろすと静かに部屋を出ていった。
「そういえばさ。優…」
「多分同じこと考えてるよな…」
「「俺達はどこで寝るんだ?」」
「まぁさ…飲んでから考えようぜ?翔」
「あいよ」
先程の部屋に戻り翔一と優は二人、椅子に座りお酒をグラスに注いだ。チンという音を発しグラス同士で当たり、そして二人はお酒を飲んだ。しばらく経ってから優が口を開いた。
「そういえばお前と二人で酒飲むの久しぶりだな」
「そうだな。…中学一年の頃か?俺の家で飲んでたのを見付かって」
「それで翔のお袋さんに滅茶苦茶言われておこられたんだよな」
「今思うと母さんも怒りすぎだよな!あそこまで怒るとは…」
「しかも二人で小遣い叩いて買った酒を没収して20歳になったら返します。だからな」
「あれには参ったぜ」
そして二人は笑った。
そして優は内ポケットから煙草とライターを取り出しくわえて火を着けた。
大きく吸い込み煙を吐く。
「あ、翔!悪いけど窓開けてくれないか?」
「ったく…吸うんなら自分で開けろよ」
「悪い悪い。まぁお前も吸えって」
「これも久しぶりだな」
「あぁ。まぁオレはなんか考え事をする時に吸うんだがな」
「俺はあの時からだな。ほら。一緒に喧嘩売られてやり合った日」
それは中学二年になりたての四月。
「おい。翔!明日は用事無いか?」
ある金曜日の昼休みに隣のクラスから優がやって来て、翔一に尋ねた。
「それは俺に皮肉を言ってるのか?ある筈がないだろ?」
と、給食を食べて眠そうな目を擦りながら言った。
すると優はニヤリと笑い、
「じゃあ明日はオレと街にお買い物だ!」
と言い放ち、翔一は面倒だと断ろうとしたのだが、断ると明日は何もすることが無いので着いて行く事にしたのだ。
そして土曜日になり、翔一が目を覚ますと目の前には優がいたのである。
「はぁ?お前なんでここに居るんだよ!?」
「そりゃあ迎えに来たからだろ」
「とりあえず着替えるから居間行って待っててくれよ」
AM9:30
翔一の準備が終わり、街へと出発した。自転車に乗り約30分。
住宅街の景色から街の大きなビルやスーパー等の景色に変わった。
そして、
「この店だ」
と言って自転車を止め優は看板に
「雑貨屋クリスタル・メイル」
と書いてある大きな店に入って行った。
翔一も中に入ると通路は狭く何やら奇妙な物が陳列している。
(ったく…優の野郎こんな所で何買おうってんだか…)しかしどうした事か優を見失ってしまったのでこんな狭い所をうろつくのも嫌だなと一回店の外で待つことにした。
優が入ってから15分程経つがなかなか優が来ない。
そこで翔一は仕方なく店内に入って探す事にした。のだが翔一が正面玄関をくぐるその時に奇妙な声と音が聞こえ、(何かあるのか?)と周りを見渡したが何も無いのでそのまま中に入って行った。
しかし店の中をどんなに探しても優の姿が全然見当たらない。
(おかしいな…中に入ってったのにな…)
そしてもう一度外に出て覚えたての煙草に火をつけようとした時に、店の脇道から何やらチャラチャラした男達が5人出てきた。その男達はケラケラと笑いながら姿を消し、翔一はまさか優に何かあったのではと思い男達が出てきた店の脇道を行く事にした。
(ったく…なんだよここ…薄暗いし汚いし…)
そんな事を思いながらちょうど店の裏側に来ると見慣れた体が店に背をもたれていた。
「おい!優!?」
翔一はすぐに駆け寄り優に声をかけた。
「あの変な野郎共か?」
「あぁ…」
「理由は?」
「店の中でお前探してたらここに連れてこられたんだ。この店は俺達の縄張りだ。とか行ってよ」
優は14歳にして凄い体格になっていて、あだ名で熊ちゃんとも呼ばれている。確かにチャラチャラした男達が中学生とわからないのもわかる。…が、今の翔一にそんな事は関係無いのである。くだらない理由で大事な仲間をボコボコにした男達に対して怒りが込み上げてきていた。
「優。買い物は?」
「まだだ。」
「来週…もう一度来ないか?」
「へぇ…リターンマッチね。良いねぇ」
優が煙草に火を着けた。と、
「そういえばお前の顔汚ねぇな」
と翔一は煙草に火を着け優の痣だらけの顔を見て笑った。それから一週間、学校では明るくて有名な優の顔が青いと話題になったが先生には特に聞かれる事はなかった。聞かれても、
「いやぁ〜。寝惚けて階段から落ちちゃったんですよ〜」
と笑いながら説明し、クラスメイトを笑わせていた。
この日翔一は珍しく早く起き、髪の毛を櫛でとかし、朝食をしっかり食べて優を待っていた。AM9:30
前回と同じ時間に行こうと言っていたのになかなか優が来ない。
(寝坊したか?いや…あいつにかぎってそんなことねぇな。そのうち来るだろ)
翔一はそう思いしばらく待つ事にした。
AM9:45
しかし15分が経っても優は来ない。翔一は電話を持ち押し慣れた番号を手早く打ち出るのを待った。
しばらく経つとカチャリという音がなり、
「はい。もしもし?」
と、優の母の声が聞こえ、
「もしもし?黒鳥ですが、優君はいらっしゃいますか?」
「あ〜…九時過ぎぐらいに出かけたわね。なんか結構急いでたけど…」
「あ、はい。そうですか…わかりました。質問します」
「はい。ごめんなさいね〜」
と電話が終わった。
翔一は優の家は知らないがいつも遊ぶ時に来る時間から考えてもおかしいと思い、街へと出発することにした。
丁度玄関を出ると愛に会い、
「あ、翔ちゃん!どこか行くの?」
と尋ねられたが、今の翔一には愛としゃべっている余裕はなく、
「ちょっと街行ってくる」
と自転車に乗りグングンスピードを上げて行った。
「あ…翔ちゃん…私も行くんだけど…って…速いなぁ。さすが男の子。さぁ、私も早く美咲ちゃんの家行かなきゃ」
と、愛も自転車に乗り美咲の家へと向かった。
その頃翔一は立ち漕ぎてさらに自転車のスピードを上げ、街へと向かっていた。
(あの野郎…逃げたか?いや…一人で勝手に行きやがったな)
そんなことを思いながら翔一は自転車のスピードを更に上げていった。
その頃街では優は例の
「雑貨屋クリスタル・メイル」
へとやって来ていた。
(一人で来ちまったけど…これは俺の事だからな。わりぃな翔…)
「おう!いつぞやの野郎じゃねぇか!またやられに来たのか?」
と今日は四人でチャラチャラした男達の中で金髪の男が優に話かけた。周りの男達は笑っている?
「あ?テメェら潰しに来たんだよボケが!」
「あれ?こいつおかしい事行ってねぇか?殺しちゃう?」
「やれるもんならやってみろや」
まさに一触即発、いや…既に始まっている。
公衆の面前では不味いと男達の一人が言い前回と同じ、
「雑貨屋クリスタル・メイル」
の裏へと移動した。
「んで?性懲りもなくまたこうやって来たって事は…死にたいんだな?」
と言い四人で優を取り囲む形となった。が、それを見て優は薄ら笑みを浮かべ、
「たからにゃ何も出来ねぇ奴らには負けんさ」
と言い放った。それに金髪の男はカッとなり最初に動き、それに合わせて他の三人も動いた。その時優の目つきが変わりこう呟いた。
「頭悪…」
まず最初は最初に動いた金髪の男の方を向きあちらの走ってくるタイミングに合わせカウンターの準備をする。最近優が見たボクシングのテレビでこれは使えると練習する相手は居ないもののやってみる事にしたのだった。
しかし男は走り飛び蹴りをしてきた。これではボクシングではカウンターは出来ない。でもそこはそれ。優は冷静に避けてハイキックを頭に決めた。
それを見た男達は足を止め何故かニヤリと笑った。そして男達の一人が金髪の男に話かけた。
「おい。そんなんでやられねぇよな?」
金髪の男は立ち上がりポケットからナイフを出し笑った。
「これで終りだ〜!!」
狂ったような声を出しナイフを振り回しながら優へ突進した。
(あちゃ〜…ナイフは想定外だなぁ…)
これは不味いと優は後ろへ下がる。がすぐに店の壁に当たり完全に逃げ場がなくなった。
「へっ。追い詰めたぜ…」
一歩、そしてまた一歩と優に近付く金髪の男、そして金髪の男がナイフを振り上げた時に優は目を瞑ってしまう。
「うおりゃ!!」
優の聞き慣れた声が路地裏に響き目を開くと翔一が笑ってこう言った。
「ヒーローは遅れて来るもんだろ?」
「へっ…ヒーローはオレ様一人で十分だってぇの」
と罵り合いつつ背中と背中で向かい合わせすぐに臨戦体制に入った。
「優。お前何人?俺が全員やろうか?」
「へっ、まさか。これからって時にお前が来ただけだ」
「じゃ面倒だから半分こな」
「了解」
優と翔一の話が男達を逆撫でしたのか金髪の男も立ち上がりまた一斉に二人に向かってきた。
翔一は最初にパンチを腹に一発貰うもひるむ事無く相手の顎を拳で打ち抜き一人をノックダウン。もう一人の鼻にピアスが着いている男は向かってきた所を体育の柔道の授業でやった大外狩りで倒し体に馬乗りになり、殴り続けた。失神したと判った所で一人一発ずつ踏みつけ煙草に火を着けて優の方を見た。
すると優も同じ様に煙草に火を着けてこっちを向いた所だった。
「ザコだったな」
「優こんな奴らにボコボコにされたのか?」
「……まぁいいじゃん。表出ようぜ。ここ下水のにおいで臭いし」
二人は笑いゆっくりとその場を去り店の前に戻った。
すると丁度そこに愛と美咲が自転車を止めていた。
「あ。翔ちゃん!……それ…それは何?」
「煙草だけど?」
「そうじゃないでしょ?なんで煙草なんて翔ちゃんと優君が持ってるの?って聞いてるの!火も着いてるし」
「吸ってるから」
愛の問いに手短に答え煙草を口に運ぶ。が…愛は翔一と優に手を出している。
「ん?小遣いか?」
「違う!没収です!!」
「え〜。愛ちゃん酷い〜」
「優君もそういう言い方してもダメな物はダメなの!」
二人は溜め息をつきそっと目配せをすると仕方なくポケットに手を入れ愛に渡し、愛は
「よろしい」
と言い、
「二人が二十歳になったら返します」
と付け加えた。
「あれは面白かったな!」
「愛が来たのは予想外だったけどな」
と二人は笑った。
それから約一年の間翔一は全く煙草を口にしていなかった。が、今回は少し酔って気分が良いため罪悪感を感じないらしい。煙草を口に加え吸い、空気を吸う。
しかし…
「ウエホッ!ケホッ!!」
翔一はむせた。
「ワハハハハむせてやがるぜ!!」
「仕方ないだろ。久しぶりなんだから」
と苦笑いで言った。
「おい優…この煙草タールいくつだ?」
「14」
「……」
普通の人なら当たり前である。敢えて言わせて貰おう。未成年の喫煙・飲酒は法律で禁止されています。と。
しっかりと部屋の窓を開けて換気をして(煙草の臭いだけでなく、酒の臭いもある)ゴミ等の後片付けをして二人は二階へと向かった。
部屋は階段の一番近くに男子用と紙が貼られていたので、意外とすぐに判った。そしてつかれたのかその部屋からはすぐに寝息が聞こえたのである。