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sence03

そして大問題の晩御飯をなんとか終了したわけであるが…また更なる問題が翔一に降りかかる。それは…

「ちょっと!!唯ちゃん?離れなさいよ!」

「美咲さんこそ離れたらどうですか?ねぇ翔一君?」

翔一と無理矢理腕を組み、離れようとしない二人。

「ちょっと二人とも…」

と、声をかけるがさすがの愛も困惑気味である。


「それで…翔一君はどちらに腕を組んでいて欲しいのですか?」

「いや…あの…」

「もちろんアタシとよね?」

「いえいえ私とよね?」

「………」


もちろんどちらとも言えない翔一。優に助けてという視線を投げ掛けるも首を振り目で

「頑張れ」

とでも言っているかの様だった。

「あっ。美咲ちゃん!」

「えっ?アタシなの?やっぱりね?」

「いや…そうじゃなくてお風呂…」

「え?あー…アタシと入る?」

「…優と行きます」

「玄関曲がってすぐだから」

「ありがとう。優。行くぞ!」

「りょ〜か〜い。じゃっすぐ揚がるからね」

と言って部屋から出て、しばらくした所で翔一が口を開いた。


「…なんなんだ?あいつら」

「いやいや…ってわからないのか?」

「うーん…変なノリだなぁとは思ったけど…」

「ノリか!?あれがか!?」

「えっ?じゃあなんだって言うんだよ?」

「………まぁ風呂入ろうぜ」

「あ、あぁ」



一方その頃皆が集まる部屋では…

「………」

「アタシ!!」

「私です!!」

いまだに言い争いをする二人と愛。先程まではただ呆れるだけで済んでいた愛も段々と腹立たしくなってきたのである。


丁度その頃翔一と優は昔話をしていた。翔一が愛と小さい頃喧嘩をした話である。

「いやぁ…愛を怒らせるのはなかなか難しいんだよ。でもよ、怒らした後機嫌を取り戻すことが更に難しいんだよな」

「へぇ〜…俺も気を付けなきゃだな。うん」



しかし今言い争いをしている二人はその事を知るよしもない。

そしてついに…

「良い加減になさい!二人共!!さっきから子供みたいにキャーキャーと」

今までに無いほどの剣幕に急に二人は黙りこみ下を向いている。

「さっきから同じ様な事ばかり繰り返して、馬鹿ですか貴方達は!もう止めにしなさい」

「「は、はい」」

二人はあまりの怖さにはいの一言。

「解ればよろしい」

と、許した様な言葉を出した愛だがやはりまだ何か危険な雰囲気を出している。

その時扉が開き優と翔一が姿を表した。

「どうしたのみんな?空気が悪いよ?」

確かに空気が…正確に言えば雰囲気が悪い。

「なんにもないわ」

との愛の一言。そして…

「だから優!!戸口で立つな!」

と優の大きな体を押して翔一が入って来た。

そして翔一からももう一言。

「愛?…どうした?」


「だからなんでも無いって」

「なんでも無いって…しょうがないな。愛ちょっと来い。外の空気吸いに行こう?」


「うん…」


そして二人は外へ行って部屋に残ったのは三人。

「で?愛ちゃんを怒らせちゃったわけね?」

「う、うん…」

美咲が口を開いた。

「でも…」

「怒らせちゃったのはしょうがないよ。でもちゃんと謝らなきゃダメだよ?」

美咲が口を開いたがその上から被せる様に優が言った。

「り、理由は聞かないんですか?」

今度は唯が口を開く。

「うーん…言いたかったら聞くけど…言いたくないなら言わなくて良い。もちろん本当は聞きたいけどね」

とニヤリと優は笑った。

そして二人はそっと目配せをし、優君なら大丈夫と話すことにした。

「じゃあ…」




その頃外では…

「あいつらが居なきゃ話してくれるだろ?何があった?」

「……翔ちゃんには関係無い」

一度怒らせたら大変。確かにそうである。しかも今回の場合は翔一に関係しているのだから尚更言えるわけがないのだ。しかし翔一はそんなことわからずに、

「関係無くは無いよ。今日泊まりだろ?周りの雰囲気とかさ…それにみんな同じ高校だろ?そしたらもっと大変だぞ?」

そこで愛は深呼吸して笑って見せた。

「もう大丈夫。私は二人が謝ったら許すし私も謝る。」

その愛の笑顔に違和感を覚えつつも昔から頑固性だという事を思い出し、

「じゃあ俺は先に…」

行く。と言おうとしたが愛が

「あ、私も行く」

と言ったので

「じゃあ行くか」

と行って二人で離れに入って行った。「へぇー。そういう訳ね。だいたいわかってたつもりだけど、これで繋がった」

「お願いだから翔一君には…」

「OK!!優君にみかしといてよ!本気で何も言わないさ。ただ…」

「「ただ?」」

そう言えばこの二人妙にハモるな。とこの時優は思った。

「あれだと明らかに翔にバレるよ?」

と笑った。すると美咲は顔を下に向け、唯は顔をほんのり赤く染め、口を開きその口を両手で抑えた。

(二人とも天然か?それとも馬鹿か?)

と苦笑し、頭を抱える優だった。

とそこでまた扉が開きそこから翔一が現れた。


「あれ、翔?愛ちゃんは?」

と優が尋ねると翔一は、

「帰った」

と一言呟いた。その一言で唯と美咲は顔を見合わせ慌てた。が…

「翔ちゃん!!私はいるでしょ〜!!」

「イテテテテ!冗談だってば!」

「もう。勝手に人を帰った事にしないでよ!」

愛が翔一のお尻をつねった事で大丈夫だと美咲は確信した。

「あ、その…さっきはごめんね。勝手にうるさくしちゃって…」

と、美咲が最初に謝ると、

「私もごめんなさい…愛ちゃんの気持ちも考えずに…」

と唯も続けて謝った。

「気にしなくて良いわよ。そもそも私が勝手に怒っただけだしね…ただ…」

「「ただ?」」



(またハモったよ…)

優は思った。


「その

「愛ちゃんの気持ち」

ってのが妙に引っ掛かるんですけど?」

と唯に冷たい視線を送る。送られた唯は慌てた様子で

「アハハハハハ…」

と誤魔化した。が…

「誤魔化すんじゃな〜い」

と愛に追い掛けられていた。しばらく時間が経ち、PM10:00を過ぎていた。そしてその時女性陣はお風呂に行っている。

「んじゃそろそろアレを出すかね」

「は?優?アレってなんだ?」

「まぁちょっと待ってろって」

って不可解な笑みを溢し大きなリュックを持って来て、

「よっこいしょ」

という言葉を発してリュックを置いた。


「そう言えばそのリュック相当思いけど何が入ってたんだ?」

と翔一が聞くとリュックの中から大量の酒が出てきた。

「………」


「ちゃんと買って来たぜ。ほら。今日は俺のおごりだ」

「……愛が怒るぞ?」

「愛ちゃんならわかってくれる…はずだ。それに飲まないって言うなら…」

と優が手を伸ばすが、

「飲む」

と行ってカンを開けて飲み始めた。



またそれからしばらく経ち優の顔がほんのりと赤くなってきた頃、女性陣がお風呂からあがってきた。が…最初に戸を開けた愛はしばらく呆然とし、口を開くと、

「それは?」

「お酒」

翔一が答える。

「それは見ればわかるでしょっ!!なんでここにあるの?って聞いてるの!!」

「優が持って来た」

そして美咲が戸から部屋に入って来た。

「あ〜!!お酒飲んでる〜」

「お!!美咲ちゃん。一緒に飲むかい?」

と、少し酔った優は美咲に勧める。

「それよりも…」

と美咲は食器棚を開けてグラスを出して、翔一からカンを奪い取ると、

「はい。翔一君どうぞ」

「ん。サンキュ」

その光景を見ている愛は呆然とし、椅子に座ると、じっと翔一を睨み突けた。

「な、何だよ?愛?顔に何か着いてるか?」

「別に」

「あ。愛ちゃん。ジュースも持って来たけど飲む?」

と優が優しく声をかけると

「少し」

と短く答えた。優はその

「ジュース」

を八分目ぐらいまでグラスに注ぎ愛の前にそっと差し出し、

「オレンジの炭酸ジュースだよ」

と付け加えた。それを愛は口に運んだ。そして一言

「このジュース美味しいね!どこの会社の?」

と、優に聞く。が、それを

「お酒です」

とは言える筈もなく、

「ん〜外国のだからわからないなぁ」

と答えた。ちなみにこの愛が飲んだお酒は

「スクリュードライバー」

と呼ばれ、ウォッカ等にオレンジ果汁を入れた物である。オレンジの香りでほとんどお酒の臭いが消えるため、お酒のあまり飲めない女性もジュースと勘違いしガブガブと飲んでしまい、酔い潰れてしまうという。別名女殺し。そしてそれを知ってか知らずか優は愛にスクリュードライバーを飲ませたために愛はガブガブと飲んでゆく…

そして遂に…

「おい。愛?生きてるか〜?」

答えは無い。美咲が耳を愛にそっと近付けると寝息が聞こえて来る。

「愛ちゃん寝ちゃったみたい」

「じゃあ俺が部屋に寝せて来るよ。女子の部屋はどこ?」

「二階あがって…右に曲がって一番奥だよ!荷物が置いて有るから解ると思う〜」


と、少々酔い気味に言い、またグラスに口をつけた。

「ほいじゃちょっくら行って来るわ」

翔一が席を立ち、愛をおんぶした。

「翔。お前は大丈夫か?」

と、優が尋ねるが、

「俺はまだほとんど飲んでねぇよ」

と、苦笑いを溢し戸を開けて階段をあがった。スースーと寝息を溢す愛を背に少し胸が気になる翔一である。が、昔からの

「友達」

で有るために何も思わない。ただ男だから。である。


階段を右に曲がり真っ直ぐ行った所に扉があり、引き戸を愛を起こさないようなんとか開けるとそこにはかばんがあり、布団も三つ敷いてあった。

その一番奥に愛をゆっくり降ろすと、布団をかけた。そして、

「ったく…あんなガバガバ飲んだら誰でも酔うだろ。気を付けろよ。」

と一言漏らしドアノブに手をかけた。しかし、

「誰?」

と愛の声が聞こえ翔一は引き返した。

「俺だよ」

「翔ちゃん?」

布団から顔だけ出して目を開く愛の頭をなだめるように撫で、

「お前ジュース呑みすぎたんだ。ゆっくり寝てろよ」

と言う。

「あたまがちょっとぽかぽかするなぁ…かぜひいちゃったかな。わたしはねるからみんなにいっておいて」

と言って目を閉じた。

そんな酔った愛に苦笑を漏らし翔一はさっきの部屋へと戻った。

「あ。翔一君。どこに行ってたんですか?」

と、さっきまで居なかった唯が部屋にいた。

「ちょっと愛が酔って寝ちゃったからさ。って二人に聞いてないのか?」

と二人を見るが…

「オレだって…こんなオレだっていろいろ考えてるんだぜ?それなのによう…」

「わかるわ。まーくんの気持ち。アタシだってさぁ…」

と完全に二人の世界に入っている。これでは何を言っても無駄だろうと翔一は思った。

そして戸の近くで立っている二人に今気付いたような口ぶりで優が話かけた。


「お〜う。お二人さん。そんな所で立ってないで座った座った!!」

その様子は酔って太っ腹になった親父さながらである。

「あいあい。まぁ唯ちゃんも座ろ」

と、翔一は椅子に座り、唯もその隣に座った。しかし唯が翔一の隣に座ったのが気に入らないのか美咲はぷ〜と頬を膨らまし椅子を翔一に近付けビールを注ごうと翔一の前のグラスにカンを傾ける。

「あ、美咲サンキュ」

とそのビールを口に運ぶ翔一。そのとなりでは何か言いたげにニヤリと笑う美咲。それを見た唯は自分もしようと優から新しいグラスと酎ハイを貰いグラスに注ぎ、一口飲んだ。そして、

「翔一君。こちらもどうぞ」

「あ、あぁ…ありがとう」

翔一は女性二人に押され気味である。

そしてもう一人の男はふと冷静になりぼ〜っと翔一を見ながら小学校からの翔一との付き合いについて考えていた。

そもそもこの二人はあまり家が近くない。しかし同じ学校で、気が合い遊ぶようになった。

学校で…公園で…翔一の家で…なにもないただの空き地で…いろいろやった。喧嘩だってやった。一緒に泣いた。

しかし翔一はまったく恋愛には興味をしめそうとしないのだ。

(やっぱり…愛ちゃんなのかね〜こいつは…)

しかし優は決して翔一と愛をくっつけたくない訳ではない。むしろその逆だ。

ただ、あんなに近い存在にいる愛、いつも一緒にいる異性に対してなんの興味も持たない翔一に疑問がある。

「…い。おい!優!!生きてるか?」

急に翔一に話し掛けられ現実に戻ってきた。そして笑顔を作り、

「悪い悪い。ちょっと酔ったかな。で?なんだ?」

と笑いながら言った。

「お前が俺を見つめてたんだよ!!お前結構飲んだからな。気を付けろよ?」


いくら優でもグラスを二本も持たされ両手に花の状態の男に言われたくはない。そんな事を考え苦笑しながら、

「もう大丈夫だ」

と言った。


そして夜は深まってゆく…

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