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煉獄の秘密

 電話が切れた後、俺はすぐ射太子の家に急いで行った。急ぐも何も、隣なわけで、更には外なわけで。5秒も到着に時間はかからなかった。

ドン!ドン!

「射太子!射太子!」

ドアを叩きつけながらソラは叫んだ。

ガチャ。とドアが開いた。と同時に射太子の家からちょっと困り気味の真下が出てきた.

「えっとーー……高須君で合ってるよね?」

ええ。ええ。間違いなく俺は高須だが。と思っていたら、真下の後方より接近する生物が1つ。まるでお化け屋敷のお化けのようにげっそりした射太子がトボトボとやって来た。のだ

(/見た通りだ\)

 と、少し困った顔の射太子が俺に目で合図した。

「俺も、一週間前に教えてもらったばかりなんだ……だから困ってる。うん。困ってる」

 かなり疲れた射太子が言っている。よほど困っているのだろう。

「ま、マジで!?一週間前だろ?だったら転入してくる日とか知っていたんじゃないのか!?」

 驚きを隠せない俺は、教科書通りのリアクションをしてしまった。

 それよりも、射太子の顔はさっきは少し困ったように見えたのだが、訂正を入れた方がいいだろう。明らかに学校に居るときよりヤツれていると言った方が正しい。

(それにしても……家に帰るだけでそんなに様子が変わるものなのか?というよりも、昨日来たときはそんな話してなかっただろう)

 などと薄ら薄ら考えてるうちに、射太子が家の周りを見回してから俺を家へ押しやった。

突然のことで驚いたが、多分真下がいるのがバレたら騒ぎになるからだと推測しよう。ここは気を使って善人っぽくふるまってやろう。(俺ってば、かなりいいやつ?)

 家の中は真下の物らしき荷物(パンツとかシャツとか、所謂洗濯物というやつ)があるが。

実は今とにかく眠たい。気を抜けば一瞬で眠りに堕ちれそうなほどだ。こんな熱い展開なのに。

こういう時、テニスが得意なあの有名人ならすぐに目が覚めるんだろう。しかし残念ながら俺はそこまで熱く無い。

 眠たい理由は極めて明白だった。今日は久々に朝のHR前に部活動があってさ。何部かって?ああー。将棋部だ。小学生時代はよくやってたこともあって(中学時代はやらなかった)、特に入る部活も無く、入らないのも暇すぎると思った結果、全部の部活を見学することにした。

 その中で一番気に入ったのが将棋部だった。ちなみに射太子もだ。理由は俺が居るからだそうだ。

 射太子の威厳に関わるので断っておくが、射太子は別にホモではない。


『なんて解説しているうちに寝てしまった俺を起こす二人だったが、いくら大声で起こしても起きないのでそのまま俺は射太子の家で眠りました(永遠に)。「終わり」』


「終わってない!終わってない!勝手に終わらすな!しかもモノマネ似てないし!」

 と、似てないモノマネを少し呆れながら怒鳴り、息をもう一度整え、

「射太子が「終わり」なんて大声で言いやがるから勘違いする人が続出するじゃねぇか!」

と、俺は、射太子の大きな嘘で目がハッキリと目覚めたのを反動にしてキレてやった。しかも、射太子・真下が口を挟む間を与えないほど素早く。

「スマンスマン!冗談!冗談だってば!許してくれよ。そもそも勘違いって何をだよ?ここにいるのは俺達だけだぞ?」

 最後の方はスルーするとして、射太子が謝ったから!しょうがないから!このまま話を終わらせてあげようと思っていたのに?謝った射太子に対して、

「そんなの謝る必要無いよ。ここで寝る高須君が悪いんだよ、誰だって怒るよ!まるで自分の家のように!」

 との厳しい発言が、怒号が俺の耳にも飛び込んだ。

「え?今誰がキレた???」

 俺は理解できなかった。自分の目の前には射太子・真下の2人しかいない。そして、女性の声だった。ということは、真下?しかないよなぁぁぁ?おかしい。学校での印象とは違いすぎる。この疑問を解決するには、この方法しかない。

「おい、射太子どうなってるんだ。真下こんなキャラだったのか!?」

「いや、そんなことは……ある。」

 小声で射太子に問いた。その答えにも驚いたが。

 もう、俺の思考回路はよくわからない状態に陥り、怒る真下に俺は、こう言い返してやった。

「眠ったのは、俺が悪い!だがな!今日!射太子は大事な大事な部活に来なかったんだぞ!それは悪くないのか!」

 と、ほんの少し笑いながら怒りながら言った。論点がずれるなんて良くあることだ。うん。どうしてその話が出てくるのかは謎だが切り札にはなったようで。


「そ、それは………」

 空間に長い静寂が訪れる。それは、1分ほどだったかも知れない。たったの5秒だったのかもしれない。ただ、その時の俺達には1時間を越える時間に感じられた。


 静寂が続く中

「ピーンポーン♪」

 静寂を切るように玄関のインターホンが鳴った。


「は、はーいどちら様でしょうか?」

 射太子が声を出しながら、少し逃げるように玄関へ向かった。


(誰だ?こんな変なタイミングで来るやつは!)と、心の中で三人とも思った。真下もそう思ったのかは定かではないがな。


「こんばんは!遊びょう!」

 玄関から聞こえる陽気な声。しかも噛んでる

(変なところで言い間違えるのはアイツしかいない!)心の中で俺は思った。


 玄関から射太子に無理やりついて来た男が一人いた。

「ヤッホー!(へい)子場(しじょう)です!」

知ってるんだけど……

「こいつは毎回自分の名前を始めに言うんだ……謎の性格だろ?気にしないほうがいいよ。」

 初めて平子場に会う真下に説明を試みたんだが……。

 いきなり過ぎてビックリしたのだろうか、真下は遠い世界へ行ってしまう寸前だったが、はっ!と、何とか帰って来た。


「「声のトーンを落とせ!それとまだ夕方だぞ」」

 と、俺と射太子は平子場に怒鳴った!

 それに驚いたのか圧倒されたのかわ分からないが、平子場はスゴく小さな声で、「ごめんなさい」と謝ったんだろうが……その声に覇気は見られず、大きかった声とは似ても似つかず語尾は推測でしか判断できないほどに、小さすぎて聞こえなかった。

 とりあえず、平子場に説明を施すことに。このままじゃ埒が明かない。


 性格が怒ると怖いタイプであること。射太子と真下がいとこ同士であることを掻い摘んで説明した。

「それはビックリした!まさか!嘘……だろ?こんなにかわいい女の子が同じクラス?!俺が学校休んで病院行ってる間に…………これは事故だ!ある意味事故だ!しかも射太子のいとこ?なんだよそれ……グスン」

 嘆く平子場だった……。よっぽど悔しかったんだな。よしよし。

「どうして、射太子のいとこがこんなに可愛いのに、いとこである射太子はこんなにも平凡陳腐な顔立ちなんだい!三国志に出てくる曹操とか劉備みたいにかっこよくないいんだ!○△□×○△□×○△□×○△□×!」

「俺だって疑問だったさ……いとこが可愛いってことは血筋は同じってことだから、俺も……?その理論から言ったら俺可愛いはずじゃ……」

「男なんだし可愛くなくていいじゃん。しかも射太子の母方のいとこなんだからそうでしょう?たしか父方の家系は微妙だったよね」

 自分実は可愛かったんじゃね?とアピールする射太子に対し、家系の話を施す真下。その言葉には俺も同感だ。

 なにせ射太子の父親は禿面に髪の毛一本なのだ。しかも、目が釣りあがっているのに対し、口はおちょぼ口だというバランスの悪さで構成されており、頭皮以外を完璧に受け継いでしまったのだ。


「それより平子場よ。最後のチンプンカンプンな言語はどこの国の言葉だ?」

「んぁ?さっきのは中国語。中国語でお茶が飲みたい!って叫んだだけだよ?」

「いやいや、どうしてそこでお茶が出てくる!?まさか―――いやお茶だぜ?」

「中国語ならだれも分からないから何言ってもごまかせるかと」

「バラしてしまったらどうしようもねぇよ!公明の罠も形無しだわ!」

 それから数分間お茶についての談義が平子場との間で繰り広げられたのだった。


 お茶談義もそこそこにお開きになり、玄関を目指す一行。

「皆には内緒だぞ!」

 固い約束。男達プラス女子1人の約束。破ったものには火柱の刑だという。(秘蔵本燃やしとも言う)

 外に出た俺達の上には月明かりに照らされた空。夏の大三角形も薄っすらとだが輝いている。もう帰る時間だ。それに、また眠ってしまって、永眠したことにされては迷惑極まりないからな。

 俺は別れ際に射太子にこう言った。

「明日からは、通常通りに放課後から部活だからな!部活来いよな!」

「分かった」 「分かったわ」

 2つ声があったんだが?と思って振り向くと、ドアは、閉まっていた。「まぁ~いいか。」少しの疑問と、少しの寒気を感じながらも隣の自分の家に帰った。

 ベッドで寝転び考えていた。

「―――いとこねぇ……。」




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