鐘の響
私が投稿した小説の第一作目でございます。
感想を頂ければ光栄です。
外伝執筆に基づき、真下ミキの口調を変更いたしました。
キーンコーンカーンコーン
いつものように朝のチャイムが、ここ燈蜜学園に鳴り響いた。
だが、今日のチャイムは、いつもと少し……いや、かなりおかしかった。そのおかしかった所というのも奇奇怪怪なものなんだが、いつも決まった回数が鳴り、決まった時間に止まるチャイムが一時間目の始まりから止まらなかった。
不可思議だろう?鳴り続たチャイムは学校から帰る時になっても止まることをしらなかった。その為、その日の授業は生徒は愚か、先生も集中できなかった。……と考えるのが常識というものだろう。
しかし、それは不可解にも不自然にも違っていた。違和感だ。
この時チャイムがずっと聞こえていたのは俺だけであって、他のみんなには聞こえていなかったようなのだ。
歴とした根拠はある。
昼休みの時間を使って、数人に確認を取ったので、狂いようの無い事実だ。本当に不可思議な出来事だった。周りのみんなには馬鹿なことを言うなと馬鹿にされたということも忘れない。
しかし、その不可解なチャイムも次の朝には止まっていた……。
その朝、なんの前触れもなく俺のクラスに転校生が来た。強面の先生が言うには昨日来る予定だったのだが、何かの用事で来れなかったようだ。それ自体初耳だが。
転校生の名は、『真下ミキ』という名前だ。
ま、どうせ俺には関係ないであろうと思っている。女子とはあまり仲良くなれないのがその理由だ。
あーそうそう。忘れていたけれどさっきから説明をしている俺の名前は『高須ソラ』皆からはソラと呼ばれてる。っと心を読み取れる奇特な人に自己紹介して見たり。
話を戻すと、転校生といえば小説・漫画・アニメ等の主人公の隣の席に先生は座らせる!というのが定番だと思い込んでいる俺の隣の席は偶然にも空いているのだ。
というよりも空けられたというのが正しいのだろうけど。これは何かのフラグだろうか。ここで恋愛に発展するのだろうか。
「じゃぁ、真下は高須の隣に座ってくれ。一番後ろの窓際の席だ。」
俺の予想は的中だった。担任の先生からその言葉を受けた真下はすたすたと歩き、皆の注目を十二分に集めつつ俺の隣の席に座ったのだった。
近くで見る真下に俺は目を魅かれた。薄青い宝石のような目に、黒髪ショート。モデルのようにスラーっと伸びた細い足。
そんな彼女に、初めての学校で緊張しているだろうと思って、俺は楽しそうに、軽々しく、でも最低限の言動は考えながら真下に話しかけてみる。女子とはあまり仲良くなれないはずなのに、俺は話かける。
「おはよう!俺は高須ソラだ。ヨロシク。分からないこととかあったら聞いてくれ。一応室長だから。」
室長とは、クラスの代表的な人間であり、俗にいうクラス委員長である。クルクル丸メガネはかけていないし、ずばり!とも言わない。
返事してくれるとは思っていなかったが真下は返事をしてくれた。
「ヨロシク……」
と、とても物静かな返答で、あんまり明るい子じゃない印象を得た。自己紹介でも名前しか言ってなかったしな。
その時、俺はふと先生の言っていた言葉を思いだした。〈真下は、ご自宅の都合で昨日は来れなかったそうだ〉と、これは何故かと聞くべきだろうと思い、聞くことにした。ここで仲良くなるのもいいことだろうと言う下心が無かったとも言い切れないのが悲しいところですが。
「何で昨日、学校に来なかったんだい?本当は昨日からだったんだろう?」
「昨日は、1日中ずっと学校でチャイム鳴らしてたのよ?まぁ知ってたらおかしいんだけど」
ミキは楽しそうに答えた。とてもさっき持った物静かな印象とかけ離れているのが大きな疑問だったが。
それよりも、何故真下がチャイムの話を知っているのか。鳴らしていたとして、どうして鳴らしていたのか。どうして周りの人間に聞こえず、俺にしか聞こえなかったのか。いろいろと細かい部分は気になったが、そうこうしている内に朝のHRが終わる。
真下が転校生ということもあってか真下のもとにはクラスのやつらが集まって来た。当然の事ではある。そのせいで俺のトークタイムが無情にも削がれてしまい、それ以上の話を聞くことは出来なかった。寧ろ集まりすぎて自分の席から追い出されたくらいだが……。
クラスの皆と話す時の声は、俺と話す声の大きさとは違い、凄い小さい気がしたのだが、どの授業の後にも真下の周りには人が集まり、下校時間にでさえ話すことが出来ず、下校することにした。チャイムの件について確認できなかったな。声の大きさもな。
徒歩10分で帰れる程の距離にある家の前まできた時に、俺は何故だか無性に嫌な予感がした。さらには背筋に今までに感じたことの無いぐらいの寒気がした。
「気のせいだよな。寒気なんて」
その寒気が一瞬にして痛みに変わり、気が遠くなった。本当に一瞬の出来事だった。瞬く間にとはこう言う事を言うのかと実感した瞬間だった。
「―――?どこだここは……真っ白な天井に薬の匂い……。この組み合わせから考えられるのは……。…………。病院しか思いつかなかったです。はい。」
気がつくと俺は……俺はなぜか、病院のベッドの上にいた……。1人小芝居してる場合じゃなかったです。はい。
目が覚めたときに覚えていたのは、ドン!っと言う音と共に後頭部に衝撃が走って、目の前が暗転したことだった。
それ1つを思い出すのにも、かなりの時間を要した。30分程度だったが、頭をやられたせいで時間が長く感じられたのだろう。
そしてそれは、きっと何かに後ろからぶつかられたのだろうという考えにたどり着くほか無かった。
しかし、それが何だったのかが俺には分からないのだ。本当にぶつかったのかもさっぱり分からないのだ。
―――どうやら本当に何かにぶつかったらしく、しかも、ぶつかったのはどうやら女の子のようだ。病院の看護師の人がやって来て、「女の子が慌ててつれて来たのよ。ぶつけたとかなんと言って、あたふたしてたわよ。」と言っていた為に確認出来た事実だった。それでもぶつかった女の子は無傷だったそうだ。なんという強靭な女の子なんだ。
その後看護師が出て行き、その後見舞いに来た『針山射太子 』に詳細を聞いた話だが、ん?ああ。射太子と俺とは昔から仲が良く、心配して誰かに詳細を聞いてくれたのだと思う。一応幼馴染みで、クラスも同じだ。本当に昔から良い奴だ。しかも何故女の子が無傷であったかも聞くことが出来た。情報も持ってきてくれるとは何たる神対応!
ヘルメットを被っていた女の子は、ぶつかった衝撃を利用し、軽々と受け身をしていたそうだ。どんだけ運動神経抜群なんだよ。超人ですかその子。
その子というのが正しいのか、はっきり言うと、射太子から誰にぶつかられたかは聞いていたのだ。そう。今日転校してきたあの子。真下だったか。実によく分からない子だ。物静かなイメージもあるし、あんなスラーっと伸びた細い足からは創造できないことだ。
というわけで、真下が犯人のようだ。犯人って言ったらなんだか響きが悪い気がするけど。
それよりも何故俺の家の前にいたのか。それはまた追い追い考えるとしよう。考えると疑問だらけだからだ。昔、知恵熱が出てしまったぐらいに考え込んでしまって、親にこっぴどく怒らてしまったことが心に残ってるのもある。
幸いにも怪我はただの脳震盪だった為、目が覚めた1時間後には退院することができた。
夕暮れがさす帰り道。まだ頭がジンジンして足元はふらついているが歩けないほどではない。その足でとぼとぼ家の前まで歩き、やっと帰れたと一息つくと、
「ごめんなさい!」
いきなり後頭部から聞こえた声。どこか聞き覚えがあった。ま、このタイミングで謝罪をしてくるやつなんて限られてくる。きっとあいつだろう。故に声に振り向こうとしたが、無意識に俺は体を留めた。なにせもう一度ぶつかられるのを体が怯えてたからだ。
用心深く一歩歩みを進めてから振り向くことにした。
その声の先には、下を向いて涙を零しながら謝る真下がそこにいた。
「ご、ぐすん……ごめんなさい」
真下は泣いたまま走って帰ってしまった。謝ってから一瞬の間もなかった。走っていった先は、____俺の家の隣にあるボロボロの一軒家だ。そこって確か……。
(射太子の家じゃねぇか!)
「どういうことだー!」
俺は急いで携帯電話を取り出し、通話を試みる。というか電話かけるしかないんだよ!かけないと気が済みません!
『もし・・・』
射太子が「もしもし」と言い終わる前に
「どうなってんだー!何で真下がお前ん家に!?」
『あ~あ、いい忘れてたけど、俺、あいつのいとこだから』
「……はー!?い、いとこ!?」
『黙ってて悪かった』
そこで電話は悲しくも切れ、無機質なツーツーと言う音だけが耳に鳴り続けた。
編集をたまに行っております。ご了承ください。