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「先輩、仕事辞めてどうするんすか?」  作者: シルヴィア・紫の夜明け


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【丁寧語版】先輩、仕事辞めてどうするんですか? (1.2.3.4)

「先輩、仕事辞めてどうするのですか?」


 隣を歩く、長い銀色の髪の後輩ちゃんが訊いてきた。

 スーツも似合っているし美女だとは思う。


 ダンジョンに潜ろうと思ってな。


「えー、今更ダンジョンですか?

 もうとっくに地球上のダンジョンすべて攻略されてますよ?」


 それがいいんだ。


「何でですか?」


 俺はゲームは攻略情報を全て見てからするタイプなんだ。


「大学数学でつまずいていそうなタイプですね」


 それはわるくち。

 つまずいた過去はあるけれども。

 答えを見て何がわるい。


「なら、私も仕事辞めます。

 アルバイトの代わりにダンジョンに潜っていたので、色々手取り足取り教えられますよ。

 ……ただ」


 ただ?


「先輩よりは貯金ないので

 先輩のおうちに、住まわせてくれませんか?」


 いいけど、元カノの置き土産とかあるよ。


「そこは普通に散らかっているとかじゃないんですね。

 どうして別れたんです?」


 元カノが着ていた下着が15万の物で、怖くて立たなくて。


「臆病者なのか、小心者なのか。

 あ、ちなみに私の、上下でワンコインですよ」


「お邪魔します」


 いらっしゃい。


「結構綺麗にしてますね。

 それで、置き土産ってなんなんです?」


 木製のパスタ皿。


「え、それだけですか?

 過激な値段の高級ランジェリーとか、ないのですか?」


 丁寧に持ち帰らせました。

 あとこのパスタ皿5,000円だけど……。


「……小心者ですね。

 昼はボローニャ風でお願いします」


 なんと、冷蔵庫に、作っておいた、ラグーが。


「おお、後輩ちゃんポイント5億です」



「それで、どこから攻略を始めますか?」


 それはもちろん、一番弱い所。


「となると、スライムか、中ネズミか、スケルトンあたりですかね?」


 無難にスライムにしよう。

 ところで中ネズミ?

 それにスケルトンが弱い?


「中ネズミは犬猫くらいの大きさのネズミですね。

 最初みんなして大ネズミと呼んでたんですけれど、後から高さ2メートルくらいのネズミが現れたんですよ。

 それで中。

 あとスケルトンは触っただけで砕けるので、毒まき散らすコウモリ系や徒党を組むゴブリンよりかは弱めですね」


 そうなんだ。

 後輩ちゃんが嘘をついているようには見えないが、攻略サイトではスケルトンの評価はゴブリンより上だった。


 スライム。

 ゲームの序盤の雑魚モンスター。

 現実の攻略サイトには面倒くさいと書いてあった。

 面倒くさいって?


「物理、効くには効くんですけど、序盤ではみんな攻撃力がないからなのか、5発くらい叩かないと死なないのですよね。

 攻撃力が上がったら上がったで倒す意味ありませんし」


 ドロップアイテム:ゼリー(スライム)、やくそう


 攻略サイトには確率が書いていなかった。

 どのくらいなのだろうか?


「やくそうは20匹にひとつくらいですね。

 ゼリーはレアですよ。

 多分500匹にひとつくらいなんじゃないかなと」


 多分?


「みんなスライム倒しませんし、そもそも確率の検証なんてしませんし」


 気になるし行ってみようか。


「何があっても先輩のことは私が守りますね」


 今から行くのスライムなんだよね?



 入場料100円なんだ。


「ここはスライムしか出ないですから。

 強い所だと500万とか掛かりますよ」


 新宿御苑とエベレストみたいな感じかな。


「先輩、御苑が100円とか何十年前の話ですか。

 今500円ですよ。

 さては漫画とかで齧った口ですね」


 帰りに花見に行こうかな。


「いいですね。

 桜70種類くらいあるんですよ、御苑」


 知らない花見だ……。


「というか先輩、初めて見ましたよ。

 ダンジョン前のコンビニで塩と酢を買う人。

 砂糖と醬油と味噌はいいんですか?」


 いやだって、スライムと言ったら酢か塩でしょ?


「いやいや、スライムの弱点は攻撃魔法ですよ」


 小学生のころ、文化祭の理科の催しとかでやらなかった?

 スライムの実験。


「ないですね」


 ジェネレーションギャップ……。


「歳離れていないですけれど」


 じゃあ、かけるね。


「それは彼氏さんが悪いですね」


 おお、スライムがみるみると四角に。


「なんですか、これ!?」


 塩析とかなんじゃないかな。


「こんなの初めて見ました……。

 あー、でもこれダメですね」


 ダメとは。


「見ててください。

 こう」


 後輩ちゃんは横にいたスライムを殴り飛ばした。

 そして大気へ消えていったスライム。

 なるほど。


「倒したモンスターは消えるんですよ」


 じゃあその四角はまだ生きていると。


「多分だけどそうですね」


 放置で。


「はい」


 じゃあ、お酢をかけるね。


「おす」


 おおおおおお。


「おおおおおお」


 ドロドロになった後消えていった。

 これは倒した判定でいいのかね。


「いいみたいですね。

 やくそう落ちてますし」


 やくそう……。

 ドクダミにしか見えない。


「やくそう(ドクダミ)とか。

 ドクダミ(ダンジョン産)みたいに表記しますね」


 帰ったら攻略サイトの薬草ページ見てみよう。


「ああ、普通に製薬会社のサイトを覗いた方が速いですし、質もいいですよ」



 次の日。

 昨日のうちに通販で注文していた噴霧器が届くと、後輩ちゃんと一緒にダンジョンへと赴いた。

 噴霧器にセットする中身は、後輩ちゃんが持っていたアイテムボックスの中へ。

 後輩ちゃんさまさまである。

 攻略サイトにそういうものがあると書かれていても、それを手に入れられるかは別ものである。


「なんでスーツなのですか?」


 それは昨日の時点で言うべきでは?

 それに制服やスーツで絵の具を使う人たちもいるみたいだし。


「それは絵を綺麗に描くためなのではないでしょうか?

 知らないですけれど」


 噴霧器に市販の酢を半分水道水で割った3パー酢をセット。

 それをスライム共に撒いていく。

 けれどもフロアにスライムが沢山いる訳でもないので、これなら霧吹きで一体一体倒していった方が速そうだ。


「うーん、回転率悪いですね。

 先輩、これ使いますか?」


 なにこの紫色のドロドロとした液体。


「ダンジョン産の花と蜜で作るアイテムですね。

 これを使うとレベリングはかどりますよ。

 あ、スライムには使った事ありませんが」


 うん、まあ、行ってみよう。



「おお、やっぱり湧き凄いですね」


 噴霧器のレバーを握りっぱなしなのに、スライムの肉壁が消えうせる気配がない。

 消えると同時に湧いている。

 これフロアの入り口でやるやつなのでは?


「はい、まあ、そうですね。

 久しぶり過ぎて忘れてました」



 15分くらいすると液体の効果が切れたようで、当初みたようなスライムの数に戻った。


「先輩、やくそうは566本で、ゼリーは8個でした」


 数えるの速いね。


「アイテムボックスに入れるとアイテムボックスくんが数えてくれるんですよ」


 いいなアイテムボックスくん欲しい。


「私が先輩のアイテムボックスになりますので大丈夫ですよ」


 ありがたいようで何か怖いな。


「先輩、それで何匹倒しました?」


 昨夜、後輩ちゃんに教えて貰ったようにステータスを開く。

 そして討伐欄。

 スライム 討伐数 10074


「おお、今ので10072匹も倒したんですね。

 先輩、やりますね。

 あと10回くらいしちゃいますか?」


 昨日買った酢の量は大丈夫だけれど、紫のドロドロの数は大丈夫なのか?


「それは腐らせるほど持っているので大丈夫ですよ。

 あと1000回だって行けそうです」


 アイテムボックスくんくさそう。


「怒りますよ? 否定は出来ないですけど」



 スライム 討伐数 100922

 やくそう 6507

 ゼリー(スライム) 83


 スライム ドロップ率

 やくそう 6.44%

 ゼリー(スライム) 0.08%

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