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冬の蝿の蝿視点を書いてみる実験小説

作者: レモ次郎
掲載日:2026/05/26

冬の蠅


蠅の視点から


自分は仲間と共に、この寒く苦しく、恐ろしい世界を耐え抜いている。食料が置かれたりする、角ばった木の塊を大きくして上に延ばせば、この世界の形になるだろう。

たまに仲間がここから出ていくが、行方も知れないようになり、帰ってくることもないのできっと危険に違いない。

また、それ以外にも危険なものはあった。例えば、透明な塊の、縦に丸く空洞になった底のあるもので、これは中に甘い白い液体がある。そうだ。これを話すならば大きな動くものについての話をしなければならない。この大きな動くものはこちらに対して敵対的で、一挙手一投足がこちらの生命を脅かしかねない。

ついこの間も、仲間がやつの攻撃でつぶされたり、熱を感じる汁の中へ突き落されたりもした。しかし、やつが食料を食っているときが一番の食事時であったため、自分達は危険を顧みず、勇敢に食料へと向かい、「やつ」に立ち向かっている。別な個体であろう大きなものが、世界の外から食料を運んでくる。一体なぜそうなっているのかは何もわからないが、「やつ」のように攻撃的ではないのが良いことだ。

話を戻すと、透明な塊は自分達の足が捕まることのできる取っ掛かりがあまりなく、足を滑らせれば白液体の中へと落ちていってしまう。それで仲間が何人も死んでいった。これも「やつ」の巧妙な罠に違いない、と自分は踏んでいる。自分も一度、あの透明な塊に捕まりながら白い液体を口にしたことがあるが、あれはとてつもなく甘美なもので、一度飲んでしまえば心はそれに囚われてしまうほどのものだった。自分は自身の持つ強力な精神力にてそれを抑え込んだが、仲間はそれを一度口にしまってからは何度もそれに向かい。そして中に落ちてしまった。憎むべき「やつ」の恐ろしい罠と言わざるを得ない。

ただ、この世界には無条件に、自分達へと良い影響を与えてくれているものが存在する。それは世界に存在する、透明な板の向こうにある光り輝く球のようなもので、これは自分たちの腹を満たすことはないが、自分たちに生きることのできる活力、生命に充ち溢れたものを与えてくれる。普段はこの世界が寒く、体をどうにかして温め、じっとしていざるを得ないが、この光り輝く球が明かりを発しているときは、自分達の体が十二分に自由に動いた。惜しむらくは、この球の出てくるまでの間隔がとてつもなく長く、その上で出てくる時間も、その出で来ない間の間隔と比べれば短いものであるというのが残念なものだ。

たまに、その球に向かって「やつ」は大きな音を出したりしていた。もしかすると、「やつ」が自分達へ良い影響を与えている球を憎らしく思い、何かしらの働きかけで球を動かしたり、隠したりして自分達の命を全体的に脅かそうとすらしているのかもしれない。

しかし、そういった「やつ」の目論見など、自分達ではどうしようもできない。自分達では「やつ」に手も足も出ないのだ。以前、仲間が「やつ」の寝込みを襲おうとしたが、どうしようもないほどの巨体が転がりながら仲間に迫っていき、仲間の一人を潰してしまった。そんな恐ろしい光景が思い出される。やはり「やつ」は唾棄すべき巨悪である。


「やつ」が途方もないほど長い時間、この世界から居なくなっている。かつての自分であればそれがどんなに喜ばしいかと歓喜していただろう。しかし、現実はそうではなかった。「やつ」が居なくなってからというもの、まず食料が来なくなった。仲間が飢えで倒れていき、その死体を仲間、そして自分が分け合う。おぞましいと自分でも思うが、どうしたって仕方がない。全ては自分達が生きるための行動で、それに是非は全くない。

そして、最も苦しいのは光り輝く球が出てくることがなくなったということだ。明かりはあるにはあるが、

もしかすると、別な個体は「やつ」に食料を与えていたのだろう。その理由は全くもって分からないが、言うなれば自分達は「やつ」の存在に生かされていたと言うことになる。巨悪であり、こちらの生命を何とも思わず、果てには攻撃さえもしてくる存在に生かされていたというのは何という屈辱かと感じる。

だが、今は違う。今となっては奴が存在することはない。今の苦しく、辛い期間を乗り切ったその果てに、巨悪に生かされること無く自分達で生きることが出来る事を信じて、ひたすらに仲間と寄り添い、じっと耐えていくほかないだろう。しかし、今こうやって考え込んでいる時でさえ、仲間がぽとぽとと寒さや飢えによる消耗で落ちていく。一体、自分はこれを乗り切ることが出来るのだろうか。


そう考えながら、蠅は眠りについた。だが、太陽がその日から二度昇っても「やつ」が戻りることは無く、寒気と飢えの中で「やつ」

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