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最弱職《記録者》の俺、戦えないけど失敗ログで戦場を支配する  作者: 神崎ユウト


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第6話 コウイチは、評価されなかった

 合同依頼の報告は、淡々と終わった。


「被害ゼロ。

 討伐対象、全て確認しました」


 受付の職員は、事務的に書類を処理していく。

 顔色一つ変えない。


「……以上ですか?」


「はい」


 リナが答える。


 俺は、何も言わなかった。


 言っても、意味がないと分かっていたからだ。


「では、報酬はこちら。

 各パーティ、規定通り分配します」


 金貨の入った袋が、カウンターに置かれる。


 俺の分は――少ない。


 いつも通り、

 戦闘に参加していない補助要員扱い。


 胸の奥で、何かが静かに沈んだ。


「評価の更新は?」


 リナが、念のために聞く。


 職員は首を横に振った。


「制度上、記録者のランクはE固定です。

 実績による昇格対象ではありません」


 やっぱり、そうか。


「今回の件は?」


「参考記録として保管します。

 以上です」


 それで終わりだった。


 ギルドを出ると、夕方の風が冷たかった。


「……気にするな」


 リナが言う。


「分かってたことでしょ」


「はい」


 答えながら、胸が少しだけ苦しくなる。


 分かっていた。

 分かっていた、はずなのに。


「成果は出した。

 それでいい」


 リナは、そう言って歩き出す。


 俺は、少し遅れてついていった。


 ――本当に、それでいいのか?


 宿に戻り、部屋に一人になる。


 魔導板を開き、今日のログを確認する。


 成功率。

 回避率。

 討伐時間。


 どれも、明確に改善している。


「……数字は、嘘つかない」


 それでも、評価は変わらない。


 俺は、ベッドに腰を下ろした。


「……やっぱり、俺は」


 言葉が、続かない。


 最弱職。

 戦えない。

 代わりがきく。


 どれだけ記録しても、

 どれだけ当てても、

 それは「参考」でしかない。


「……勘違い、してたのかな」


 少し役に立っただけで、

 何かが変わると思ってしまった。


 扉が、軽く叩かれた。


「入るよ」


 リナだった。


「顔、見せないと思って」


「……すみません」


「謝ることじゃない」


 彼女は、椅子に腰掛ける。


「納得いかない?」


 少し迷ってから、頷いた。


「……はい」


「そりゃそうだ」


 リナは、ため息をついた。


「この世界は、数字でしか人を見ない。

 でもね」


 俺を見る。


「数字に出ない価値も、確かにある」


「……でも、それを決めるのは、俺じゃない」


 リナは、少しだけ目を細めた。


「自分で決めな」


「え?」


「アンタが、

 “自分は役に立ってる”って思えないなら、

 誰が言っても無駄だ」


 胸に、重い言葉だった。


「……俺には、戦えません」


「知ってる」


「代わりも、いくらでもいます」


「それも、事実」


 リナは、はっきり言う。


「でもね」


 一拍置いて。


「アンタの代わりに、

 同じ記録を出せるやつはいない」


 俺は、何も言えなかった。


「今は評価されない。

 それでいい」


 リナは立ち上がる。


「でも、結果は積み上がる。

 逃げなければね」


 扉が閉まる。


 一人になる。


 ――逃げる?


 そんな選択肢、

 最初から持っていなかった。


 最弱職《記録者》。


 評価されない。

 認められない。


 それでも――


 俺は、

 記録をやめなかった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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