第4話 コウイチは、正式に組むことになった
依頼の報告を終え、ギルドのロビーに戻ると、周囲の視線が微妙に集まっているのを感じた。
理由は分かっている。
俺が、戦闘職と並んで歩いているからだ。
「珍しい組み合わせだな」
受付カウンターの奥から、年配のギルド職員が眉をひそめる。
「記録者と、ソロ剣士?」
「今回だけだよ」
彼女はあっさり言った。
「次も一緒に受ける予定だけど」
職員が目を丸くする。
「……正気か?」
その言葉に、俺は少しだけ肩をすくめた。
――これが、普通の反応だ。
「危険ですよ。
記録者は護衛対象にもならない。
責任は取れません」
「自己責任でいい」
彼女は即答した。
「この人がいなきゃ、今回の依頼は失敗してた」
ロビーが、一瞬静まる。
「……それは、どういう意味で?」
職員の視線が、俺に向く。
胃の奥が、きゅっと縮んだ。
「コウイチ」
彼女が、こちらを見る。
「説明、出来る?」
――逃げ道はなかった。
「……記録です」
俺は、魔導板を取り出した。
「過去の戦闘ログから、魔獣の行動パターンを照合しました。
今回は、それが合致しただけです」
「照合?」
「はい。
同種魔獣・距離・地形・天候。
条件が揃うと、次の行動が高確率で予測できます」
職員は、半信半疑の顔で魔導板を覗き込む。
「……数字が、細かすぎるな」
「全部、自動記録です」
しばらく沈黙が落ちた。
「……理屈は分からんが」
職員はため息をつく。
「制度上、記録者の評価は変えられない。
Eランク固定だ」
分かっていた。
ここで評価が覆るほど、この世界は甘くない。
「ただし」
その言葉に、顔を上げる。
「この剣士が責任を持つなら、
“臨時パーティ”としての登録は認めよう」
彼女は、にやっと笑った。
「十分」
そう言って、登録書に署名する。
「名前、書いとくね。
私は――リナ」
リナ。
初めて、彼女の名前を知った。
「……コウイチです」
「知ってる」
さらっと言われて、少しだけ戸惑う。
「今日から、正式に組む。
アンタは後ろでいい。
代わりに、全部教えて」
「……分かりました」
そう答えた瞬間、不思議と不安はなかった。
ギルドを出ると、例の元パーティの連中と鉢合わせた。
「あ?」
リーダーが、俺を見て鼻で笑う。
「まだうろついてたのか。
記録者は一人じゃ依頼も受けられねぇだろ」
リナが、一歩前に出る。
「この人、私のパーティメンバーだけど?」
空気が、変わった。
「は?」
「次の依頼も一緒。
文句ある?」
リーダーは、俺とリナを交互に見て、舌打ちする。
「……好きにしろ。
どうせ足手まといだ」
去っていく背中を見送りながら、俺は拳を握った。
まだだ。
まだ、何も変わっていない。
でも――
「気にするな」
リナが言う。
「結果出せば、黙る」
「……はい」
「それに」
彼女は、少しだけ声を落とした。
「アンタは、もう“最弱”じゃない。
少なくとも、私の中では」
胸の奥が、静かに震えた。
評価も、ランクも、
世界は何も変わっていない。
それでも――
俺は、
一人じゃなくなった。
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