表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱職《記録者》の俺、戦えないけど失敗ログで戦場を支配する  作者: 神崎ユウト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/13

第3話 コウイチの記録は、武器になる

「一緒に、依頼を受けない?」


 女の言葉に、俺は言葉を失った。


 冗談だと思いたかった。

 だが、彼女の目は本気だった。


「言っとくけど、私はソロだ。

 足手まといはいらない」


 それを聞いて、胸が少しだけ痛む。


「……それなら、なおさら俺なんて――」


「だから、記録者なんでしょ?」


 彼女は当然のように言った。


「アンタは前に出なくていい。

 戦わなくていい。

 代わりに“全部見る”。それだけでいい」


 全部、見る。


 それは、俺がずっとやってきたことだった。


「今回の依頼は、小型魔獣の群れ。

 数は少ないけど、動きが読めない」


 彼女は地図を広げながら続ける。


「普通はゴリ押し。でも私は嫌いでね。

 だから、アンタの記録が欲しい」


「……俺の、記録を?」


「ああ。

 成功も失敗も、全部残ってるやつ」


 迷いはあった。

 だが、断る理由もなかった。


 どうせ、俺は一人だ。


「……分かりました」


 そう答えると、彼女は満足そうに笑った。


「話が早い。じゃ、行こう」


 森の中は静かだった。


 魔獣の気配。

 風の流れ。

 足音。


 俺は戦闘の輪から少し離れ、魔導板を起動する。


 ――記録開始。


 彼女が動く。

 無駄のない剣筋。

 だが、どこか危うい。


「……癖がある」


 思わず、口をついて出た。


「何か言った?」


「い、いえ……」


 集中しろ。

 見るんだ。


 魔獣が跳ぶ。

 彼女が避ける。

 反撃。


 だが、ほんの一瞬、動きが遅れた。


「――今の、右!」


「っ!」


 彼女は反射的に動き、攻撃をかわした。


「……今、指示した?」


「え、あ……すみません」


 一瞬の沈黙。


「……続けて」


 意外な言葉だった。


 戦闘が終わり、魔獣は倒れた。

 彼女は息を整え、俺を見る。


「さっきの、どうして分かった?」


 俺は、魔導板を見せた。


「過去の戦闘ログです。

 同じ種類の魔獣が、同じ距離で、同じ動きをした時――

 次は、ほぼ右から来てました」


 彼女は、目を見開いた。


「……そんな細かいことまで?」


「全部、残ってます。

 成功も、失敗も」


 彼女は少し黙り込み、やがて笑った。


「はは……なるほどね」


 そして、真っ直ぐ俺を見た。


「アンタ、自覚ないでしょ」


「……何の、ですか」


「自分が、どれだけヤバいことしてるか」


 胸が、どくりと鳴った。


「それ、戦闘を“再現”してるのと同じだ。

 失敗しない戦い方を、最初から選べる」


 俺は、何も言えなかった。


 そんな風に考えたことは、一度もなかった。


「最弱職? 冗談じゃない」


 彼女は断言した。


「アンタは、“攻略役”だ」


 ――攻略役。


 その言葉が、胸に落ちる。


「……俺でも、役に立ちますか」


 情けない声だった。


 彼女は、即答した。


「当たり前でしょ。

 むしろ、いなきゃ困る」


 その一言で、胸の奥が熱くなった。


 初めてだった。


 存在を、

 必要だと言われたのは。


「コウイチ」


 彼女は剣を肩に担ぎ、笑う。


「しばらく、組もう。

 アンタの記録、全部使わせてもらう」


 ――この時、確信した。


 俺の記録は、

 ただのメモなんかじゃない。


 最弱職《記録者》。


 戦えない。

 でも――


 戦い方を、知っている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ