第14話 警告は、届かなかった
前衛二隊目の混乱が、ようやく収まった。
小規模な負傷者は出たが、致命傷ではない。
それが、かえって状況を悪くした。
「想定内だ」
指揮官は、冷静さを装う。
「この程度の乱れは、作戦に影響しない」
だが、俺の魔導板は、はっきりと“次”を示していた。
予測線が、さらに前倒しされている。
――止めないと。
今度は、迷わなかった。
「……指揮官」
静まり返る中で、声を出す。
「発言を許可していない」
鋭い返答。
それでも、続けた。
「このまま進めば、
十五分以内に後衛が狙われます」
ざわり、と空気が揺れる。
「根拠は?」
「魔獣の移動速度が、
過去の平均より二割以上速い」
魔導板を掲げる。
「この条件下では、
渓谷中央での迎撃は成立しません」
沈黙。
指揮官は、地図を一度見てから、俺を見た。
「……記録者」
低い声。
「仮に、それが正しいとして」
一拍置く。
「今、全隊に撤退・再配置を命じれば、
混乱の方が被害を広げる」
正論だった。
現場の全員が、それを理解している。
「責任は、誰が取る?」
視線が、突き刺さる。
俺は、答えられなかった。
――取れない。
制度上、
立場上、
俺には、その権限がない。
「以上だ」
指揮官は、はっきりと言い切った。
「作戦は、継続する」
リナが、一歩前に出る。
「……それでも、
位置取りだけでも修正を」
「不要だ」
即答。
「命令違反は、処罰対象とする」
それで、全てが決まった。
隊列は、再び動き出す。
俺は、唇を噛みしめた。
――間に合わない。
魔導板の予測線が、
“赤”に変わる。
これは――
失敗ログの色だ。
「……来る」
ほとんど、祈りのような呟き。
次の瞬間。
後方の岩陰から、
これまで見たことのない数の魔獣が現れた。
「後衛、接敵――!」
叫び。
「なんで、こんな所から!」
完全に、想定外。
指揮官の顔色が、変わる。
「……支援隊、前へ!」
遅い。
魔獣の動きは、
俺の予測より、さらに速かった。
――このままじゃ。
誰かが、倒れる。
いや。
何人も、倒れる。
俺は、拳を握った。
もう、
黙って見ていられない。
記録者として。
最弱職として。
それでも――
ここで、動かなければ。
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