第11話 大規模討伐に、記録者は呼ばれた
集合場所は、ギルド本部前の広場だった。
俺が到着した時には、すでに多くの冒険者が集まっていた。
「……多いな」
思わず、呟く。
数えていないが、軽く二十人以上。
それも、全員が戦闘職だ。
前衛、後衛、魔法使い、回復役。
それぞれが装備を整え、互いに距離を保ちながら立っている。
――完全に、場違いだ。
そう思ってしまう自分が、まだいる。
「気圧されてる?」
隣で、リナが小声で言った。
「……少しだけ」
「いつも通りでいい」
そう言ってくれるのは、ありがたい。
だが、視線は否応なく集まる。
「……あれが、記録者?」
「戦えないんだろ?」
ひそひそとした声。
聞こえないふりをして、魔導板を起動する。
――大規模討伐。
対象:渓谷一帯に出没する魔獣群。
数は不明。
行動パターンも、部分的にしか分かっていない。
「静かに」
低く通る声が、広場を制した。
前に立ったのは、見覚えのない男だった。
年齢は四十前後。
装備は実用一辺倒で、派手さはない。
だが、立ち姿だけで分かる。
――指揮官だ。
「今回の討伐は、
個々の腕前よりも、連携を重視する」
男は、全体を見渡す。
「指揮は私が執る。
勝手な判断、独断行動は禁止だ」
何人かが、頷く。
「編成は、事前通達通り。
前衛三隊、後衛二隊、支援一隊」
そこで、一瞬だけ視線が俺に向いた。
「……記録者は、後方支援扱いとする」
やはり、そうなる。
「作戦立案には関与しない。
戦闘中の発言も、原則として控えろ」
胸が、わずかに沈む。
分かっていた。
この規模では、俺の立場は――ないに等しい。
「質問は?」
誰も、手を挙げない。
「よろしい。
では、出発する」
隊列が動き出す。
渓谷へ向かう道は、広く、長い。
これだけの人数が歩くと、地面が揺れるようだった。
俺は、最後尾近くを歩く。
魔導板には、過去のログが表示されている。
同じ地域。
似た条件。
そして――失敗。
「……微妙に、違う」
小さな違和感。
風向き。
魔力の流れ。
魔獣の移動時間。
どれも、ズレている。
「コウイチ」
リナが、前を見たまま言う。
「何か、気づいた?」
「……まだ、確信はないです」
声を落とす。
「ただ、前と同じだと思ってると、
危ない気がします」
リナは、短く頷いた。
「覚えとく」
それ以上は、何も言わなかった。
渓谷が見えてくる。
岩肌。
影。
静かすぎる空気。
――嫌な予感が、消えない。
だが。
俺は、まだ何も言えない。
ここでは、
記録者の声は、
作戦に含まれていないのだから。
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