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第084話 呼び出し

 昼食時はゲームにおける英雄四人で集まっていた。


 女神の加護を持つ俺たちは別格であり、少しばかり浮いている。食堂には百人くらいいたというのに、俺たちの周囲だけ誰も近寄ってこなかったんだ。


「ルカ殿下、わたくしは前線に赴くべきでしょうか?」


 食事を始めるでもなく、フィオナが聞いた。


 それは先ほどの話。気になってしまったのなら申し訳ない。けれど、そう遠くない未来の話であり、ミリアを除いた三人は前線に配備されるだろう。


「安心してくれ。一人ではないから。俺も同行するつもりだ」


「そうでしたか……。ルカ殿下がおられるのなら、わたくしは戦えます」


 ありがたい話だな。

 フィオナが芯の強い女性であったことには感謝しかない。


「ルカ様、やはり魔国は侵攻を続けますか?」


 ここでリィナが口を挟む。いきなりの帝都陥落は少なからず動揺を与えたことだろう。


「当然そうなる。だからこそ、七柱女神の全員が使徒を選んでいるんだ。近い内にバリウス帝国は完全制圧され、いずれ魔国による進軍は王国内にも及ぶだろう」


 俺たちの使命は魔族の手から大地を守ることだ。


 シエラ曰く、陰に光が呑み込まれるなどあってはならないらしい。またそれは使徒である俺たちが阻止すべき問題に他ならない。


「ルカ様、私は必要ないのでしょうか?」


 リィナは不服なのか、少しばかり頬を膨らませている。

 彼女もまたクラス分け試験において圧倒した一人なのだ。やはり一緒に戦いたいのだろう。


「できるだけリィナの魔法は温存したい。俺は自分自身を強化するバフを持っているし、リィナの力を必要とする場面じゃない」


「いやでも、魔将軍ですよ!?」


「ただの水魔だ。フィオナと俺だけで充分戦える」


 リィナは戦うほどに身体を病む。

 序盤の魔将軍相手にリィナの魔力を使っているようでは駄目なんだ。肝心なとき、彼女は何もできなくなってしまうのだから。


「だけど……」


「リィナは魔王との戦いに必須。聖女のデバフがなければ魔王には決して届かない。君の出番は大詰めだということを忘れるな」


 この世界線において、英雄の数はかなり減ってしまったからな。従って俺たちは適材適所で戦っていくしかない。


「それにただ後方にいろと命じているわけじゃない。剣技を磨け。魔国にはオークキングなんて化け物まで雑兵として存在する。一撃でオークキングを斬り裂くほどに強くなってくれ」


 実際にリィナのアタッカー能力には期待しているんだ。

 後半になると雑兵まで強敵となる。リィナには魔力を温存しつつも、前線で戦ってもらわねばならない。


 ゲームにあった世界線ではないんだ。俺が彼女の悲運を引き受けていない以上は、剣技だけで戦う必要がある。


「分かりました。私は剣技を極めます。必ずや殿下のご期待に応えたいと考えますので」


「それで良い。程なく帝国は壊滅し、魔国は更なる南下を始めるだろう。俺たちは肉体的な強化とレベルアップを即座に実行していかなくてはならない」


 リィナも納得したところで、昼休憩が終わる。

 このあとはクラスごとに集合して、各種検査や測定を行って初日は終了となるらしい。



 ◇ ◇ ◇



 短い食事休憩のあと、俺とフィオナは魔道殿と呼ばれる建物に来ていた。


 ここは魔法科がメインで使用する施設。壁面には魔法障壁が施してあり、ある程度の魔法であれば損壊することはない。


 魔法は直接魔力を行使する能動的魔法と精霊や霊的存在を媒介とする受動的魔法があった。ただ、どちらも魔力を根幹としており、術者は総じて魔法士と呼ばれている。


「この施設を破壊できるようになったら、一人前だな……」


 ゲームにおいてアルクは魔道殿を破壊してしまう。

 もっとも、それはレベル70のスキルを覚えたあとであるけれど、壁の破壊が魔王ベルゼス・バルゼへと挑む指標となっていた。


「ま、レベル70で魔王に挑むのは無茶だろうな。倒せなくはないけれど、今は現実であってロードするデータなんてないのだし」


 やはりレベル100を目指すべきだ。

 誰も死んで欲しくないし、俺たちは確実に世界を救済しなければならない。ゲームにおける低レベルクリアチャレンジとは根本的に異なるのだから。


「とりあえず、鍵はフィオナだ……」


 現状で病状悪化が著しいリィナを戦力として考えるわけにはならない。

 フィンがどこにいるのかも分からない現状において、頼りになるのは攻守共に優秀なフィオナだけだろう。


「はい? わたくしが何か?」


「ああいや、こっちの話。今日もフィオナは美人だと思ってな?」


「か、からかわないでくださいまし!」


 冗談で誤魔化しておく。

 とはいえ、フィオナは顔を真っ赤にしており、しくった気がしないでもない。真に受けるとは思わなかったんだって……。


「あー諸君、わたしが担当教官のメル・カースティンだ。よろしく頼む」


 ちょうど良い具合に担当教官がやって来た。

 メル教官はゲームで知るままだ。非常に小柄で童顔でもあったから、プレイヤーの人気は高い。イベントによっては候補生たちを守る場面もあり、同じ能力であれば頼りになる教官だろう。


「早速だが、女子は身体測定から。男子は能力値の計測へと向かう。女子は入り口の通路を左に曲がった突き当たりの部屋。男子は右手にある部屋へ入ること。最後にルカ・シエラ・シルヴェスタは話があるので残れ」


 この辺りもゲームと同じだ。

 まだハッキリと覚えている。アルクはここで戦場で戦う意志を問われることになったのだ。


 ゾロゾロとクラスメイトが移動していく。かといって魔法科は十人しかいない。俺を含めて男子三名と女子が七名という内訳であった。


「さて、ルカ君。君は勇者のジョブを授かっているらしいが、レベルは幾つなんだ?」


 メル教官は俺の胸にコツンと拳を当てながら聞いた。

 レベルという概念は一般的ではない。使徒以外であれば、神聖な場所で祝詞を唱えることでしか知りようがなかった。


「今はレベル55です」


「ごごご、55だとぅ!? 何を倒してそれほど上がった? 君は王子殿下だよな!?」


 面白いほど記憶と合致している。メル教官は容姿に不似合いな驚きようで、俺のレベルに対する説明を求めた。


「主に魔将軍マステルとファイアードラゴンですかね。亡骸もまだ持っていますよ?」


「むむぅ、第二王子はかなりのヤリ手と聞いていたけれど、魔物に対してもヤリ手だったとは……」


 んん? 何かおかしくね?

 魔物に対してもって間違ってね?


「魔物以外に何と戦うってんです?」


 薄い目をして聞く。俺の何を知っているんだ、この人は……。


「女癖が悪いと聞いている」


「どこで聞いた!?」


 おっと、思わず教官に対してタメ口を利いてしまった。けれど、聞いておかねばならない。噂の発信源は突き止めておかねばならんのだ。


「あながち間違っていないだろ? 現に二人もヤリ逃げしているんだし……」


「逃げてねぇよ!」


 ヤリ逃げとか、酷い悪評だな。

 確かに二人と婚約破棄したけれど、間違っても捨てたわけじゃない。まあ片方とはヤったけどな。


「今もフィオナは君にゾッコンらしいじゃないか? なのに君は最初の女をはべらせ、彼女を悶々とさせているんだ。ドSの女たらしだと聞いている」


「だから、どこで聞いた!?」


 全然、話が進まない。大きく間違っていないだけに、並べる文句はあまりなかった。


「まあ、青春を謳歌するのも一興だ。王子殿下とて遊びたい盛りだしな」


「もう俺のイメージは固定されてんのな……」


 もう敬語なんてやめだ。この人とはタメで話す。見た目も幼女っぽいし、別に怒られた記憶もないし。


「それで私が君を呼んだ理由だが、知っていることを教えてもらおうと考えてのことだ」


 ようやく本題に入る。

 アルクは何て答えたんだっけな?


 まあでも、アルクとは状況が異なる。

 帝都ロンダルの陥落はアルクが騎士学校に入学する前の話なのだし。


「知っていることは多くありません。六魔将と呼ばれる士官級の悪魔が六体とそれらを統べる魔王ベルゼス・バルゼがいること。残りは……」


 こんな感じだろう。

 要は双国軍に不安を覚えさせたら正解だ。少しでも早く俺を登用するようにと。


 だから俺は知り得る事実の中で最悪の未来を告げている。


「あと三年で人類が滅ぶくらいですかね……」

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