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第079話 一目惚れ

 私とフィオナ殿下は二人して森へと入ります。


 最初に水精霊の雫をかけてもらいましたので体調も完璧です。しかし、本当に殿下は美しい人でして、慈愛の心まで持ち合わせているのですから最高の姫君だと思います。


 フィオナ殿下のレベルが二つ上がったところで休憩中。恐らく私の身体を気遣ってくれているのでしょう。


「リィナ様は聖女であられますのに、剣を持って戦われるのですね?」


 フィオナ殿下が水分補給をしつつ言いました。


 ああ、それね。私だって祝福の儀を受けるまで聖女になるだなんて考えもしなかったんだもの。健康のために始めた剣術が意外と面白くて、今でも続いているというだけです。


「女性らしくなくてすみません……」


「ああいえ、そういう意味では! 頼りになると考えていたのですわ」


 聞けば、この組分けには不安を覚えていたみたい。まあ聖女と精霊術士だけで黒山に入るのは流石に躊躇するところですよね。


「しかも、本当にお強い。わたくしの見せ場がなくなってしまいますわ」


「ルカ様のおかげです。レベリングに付き合ってもらいましたから。今はソロでも危険度三等級くらいなら戦えます」


 ルカ様がいなければ、こうはなっていません。

 本来、聖女というジョブは力に長けていませんし、私の強さは極端に上がったレベルのおかげなのですから。


「ルカ殿下は本当に真っ直ぐなお方なのですね……」


「ルカ様は芯をしっかりと持っておられます。私の病気を知っていたとしても、使徒としての使命を忘れない。あの方はきっと世界を救う。誰にも負けない信念をお持ちなのですから」


「目的はわたくしも伺いました。ですが、信念以外にも感じますの。ファイアードラゴンに襲われたわたくしたちを逃がしてくれたのです。あの場面はわたくしたちを切り捨てても良かったと思います。仮に世界を救うことを第一としているのなら」


 ルカ様はそういう人ですからね。

 誰にでも手を差し伸べてしまう。彼は身の危険など考慮できない。危機にある者を見つけたのなら、救うことしか考えていないの。


「ルカ様のアレはお人好しです。平たく言えば、人たらしですよ」


 身分を問わず助けてしまうのだから、人気があるのも当たり前です。


 第一王子であるアークライト様には真似できないところ。だけど、私が好きなところでもあったりする。


「確かに。あの美貌とは裏腹に気さくすぎますね。殿下らしいといえばらしいのですけれど」


「そういえば、フィオナ様はどうしてルカ様を好きになられたのですか? 確か、数ヶ月前のご訪問時に初めて会ったとお伺いしておりますが……」


 私は気になっていた話を聞いています。

 二人は初対面であったはず。それも数日しか滞在されなかったというのに、どうしてルカ様のことを好きになったのでしょう。


「お恥ずかしい話ですわ。実をいうと、わたくしは男性とのお付き合いに疑問を感じていたのです。一応は美の女神イリア様の使徒。どこへ行っても称賛を浴び、求婚されました。イリア様は色々な男性と付き合うよう仰っておりましたが、どの殿方もピンとこなかったのです」


 美の女神様の使徒は伊達じゃないみたい。


 どこへ行っても求婚されるなんて、どうなっているのでしょう。私は婚約破棄後も一つとしてお話をいただかなかったというのに。


「それで、わたくしは誰も選ばなかったわけです。しかし、成人したことですし、お父様がそろそろ決めろと口にしていたのですわ。そこで思い浮かんだ男性こそルカ殿下なのです。イリア様が魅入っていたという殿方ならば、わたくしの興味を惹くのではないかと……」


 様々な選択肢がフィオナ殿下にはあったみたいですが、どうも男性不信に陥っていたような感じですかね。モテすぎるのも考えものかもしれません。


「わたくしの希望は汲まれ、直ぐさま王国に話を持ちかけることに。お父様は拒否されると考えていたようですが、なぜかトントン拍子に話が纏まったと聞いております。まあそれで、聖七神教会の教皇様が婚約報告に赴くよう命じられましたので、顔合わせとなったのですわ」


 会ったこともない方と結婚だなんて受け入れ難い話です。


 まあしかし、フィオナ殿下は幸運だったのでしょう。どこの馬の骨かも分からない人ではなく、崇高なる意志を持つ王子殿下がお相手だったのですから。


「過度な期待はしておりませんでした。イリア様の話に興味を持っただけ。皇国のためになる結婚でもありますし……」


 少しずつ告げられていく。その内容は明確にルカ様へと近付いていました。


「お会いしたとき、わたくしは心を射貫かれていましたの。本当に驚きました。他国の王子様には幾人とお会いしたことがございますけれど、初めての感覚だったのです。美しい銀髪。気取らない口調もまた新鮮で、わたくしはルカ殿下に魅入っていました。この方がわたくしの婚約者なのだと、誉れを感じるほどに。まあそれはつまり……」


 ようやくフィオナ殿下の回顧録が終わりを迎えようとしています。

 彼女が初めてルカ様に会ったときの感情が伝えられることでしょう。


「単なる一目惚れですわ――」

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