第078話 ミリアと
二手に分かれての登頂。八合目で落ち合う約束なのだが、出発点は明確に異なっている。
「さてミリア、お前はその短剣で戦うのか?」
まず気になったのはミリアの武器である。かつて包丁で戦ったことのある俺だから、余計に気になってしまうのだ。
なぜなら短剣は扱いやすいけれど、致命傷を与えるのに不向き。レベル上げという縛りにおいて残念な効果しかなかった。
「長剣は重いですし……」
こんなときミリアが男であればと考えてしまう。
残念ながら愚者の女神の使徒は女性であり、長剣を振り回すほどの力がない。
「じゃあ、錬成してみろ。お前ならできるはずだ」
「錬成ですか?」
俺はアイテムボックスから、魔将軍マステルの亡骸を取り出す。錬成素材としては最上級と言えるものだろう。
「これは俺が討伐した魔将軍マステルの亡骸。腕を切り落とすから待ってろ」
長剣として錬成するのに、全てを使う必要はない。
俺はとりあえず右腕を切り落として、ミリアに手渡す。
流石に躊躇っていたけれど、王子殿下が手渡すものを拒むなんてできなかったのだろう。
「レベル20であれば等価錬成を覚えているはずだ。手持ちの小剣とこの素材を使って長剣を錬成して欲しい」
実をいうとゲームにおいて俺はミリアをレベル50までしか上げていなかった。彼女が加護として授かったスキルですら俺は覚えさせていない。
未知なる部分が多かったものの、等価錬成は回復薬を大量生産するのに役立っており、突出した力はなくとも重宝するスキルであった。
「分かりました。初めてですけど頑張ってみます」
小剣とマステルの右腕を並べ、ミリアはスキルを行使する。上手くいけば素材に応じた長剣ができあがることだろう。
「等価錬成!」
即座に錬成陣へとアイテムが吸い込まれていく。
輝きを発したそれは次第に光を失い、錬成結果が明らかとなる。
「あれ……?」
錬成陣に残ったのは真っ黒なアイテムであった。既に短剣でもない。黒く澱んだ何かである。
「錬成失敗だな。スキルには熟練度がある。熟練していくほどに成功確率は上がるんだ。次はこの短剣で錬成してみろ」
今度はマステルの左腕を切り落とし、俺は腰の短剣を鞘ごと抜いた。
それは剥ぎ取り用の短剣であったけれど、アイテムボックスを持つ使徒であるのだから、その場で解体する必要はない。
「ええ? 殿下の短剣で失敗でもしたら!?」
「なら成功させろ。集中するんだ。成功した姿を脳裏に描き、錬成してみろ」
イメージし易いように、俺の長剣を見せてみる。
ジッと見つめるミリア。小さく頷いたところを見ると、頭の中に整理できたのだろう。
「等価錬成!」
再びアイテムが輝き出す。ここまでは先ほどと変わりなかったけれど、光が失われるにつれて露わになる錬成結果は明確に異なっていた。
白銀に輝く刀身。鋭く尖った切っ先は錬成が成功したことを如実に現していた。
「できました! 成功しましたよ!?」
「よくやったな。あとはレベル10の折りに習得した鑑定で見てみるんだ」
「殿下は何でも知ってますねぇ!」
俺はレベル50までしか知らん。よって助言できるのはそこまでだ。レベル50から先は自分自身で試行錯誤してくれ。
「あっ! レア度3ってなってます!」
「うん、それなら成功だな。今の素材なら熟練度次第でレア5まで上げられる。薬草でも毒消し草でも錬成しまくって熟練度を上げていけ」
レア3であれば錬成前と変わらない。しかし、成功した事実は彼女の自信に繋がるだろう。
「振ってみろ。きっとその長剣は扱いやすいはずだ」
魔将軍の身体を素材にした武器だ。金属ばかりを錬成するよりも軽くなっているはず。
目指すところはレア5であるけれど、現状のミリアにはレア3でも充分に違いない。
「軽いです! これなら振り切れるかも!」
ようやくミリアの準備も終わった。とりあえずは俺たちもレベル上げを始めようか。
全員が魔将軍と戦えるレベル50を目指す。
俺は彼女たちに期待をして剣を振るのだった。




