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第077話 四人の使徒

 準備を済ませたフィオナたちとロビーで合流。俺たちはレザルの街をあとにし、国境付近にある黒山へと馬を走らせていた。


「フィオナ、馬に乗れたんだな?」


「わたくしは戦うと決めてから全てに取り組みましたの。戦場にて必要なことを精一杯にこなしてきました」


 俺が死んだものと考えていたフィオナは必要と思われる全てに努力してきたらしい。


 正直に助かっている。もしも彼女が馬に乗れなければ、誰かが後ろに乗せる必要があり、それは俺である可能性が高かったからだ。


 美女にしがみつかれることは男冥利に尽きるけれど、リィナの嫉妬をその身に浴びるのは生きた心地がしないだろうし。


「あとミリア、初めまして。君は戦闘に長けていないだろうけど、有能な加護を持つ者だ。申し訳ないけれど、強くなってもらう」


 異なる世界線で会っていたけれど、フィオナとも初対面となっていたのだし、恐らく矛盾を生まぬように改変されているはずだ。


「ルカ殿下、初めまして。あたしはただのメイドだったのですが、女神様に加護を授かっていたみたいです。世界を救う使命があるのだとか……」


 まあ困惑するだろう。

 一応は貴族であるはずなのだが、ミリアは洗礼も祝福も受けていない。三女であったことも原因なのだろうな。


「戸惑うだろうけど、俺は君が優秀な錬金術士になれると聞いている。期待しているぞ?」


「ははは、はい殿下!?」


 他にも気になる話が俺にはあった。

 どうせ一時間は馬を走らせる必要がある。この機会に聞いておこうか。


「それでフィオナ、フィンはどうなっている?」


 祝福を受けたフィオナであれば何か知っているだろう。

 皇国側最後の英雄。時空術士フィン・ニルス・クロノリアはやはり騎士学校に入学していない。


「ニルス様の使徒でしょうか? しかし、イリア様は教えてくれなかったのです。なので、騎士学校にはミリアだけを連れております」


 まあそうだろうな。女神たちは同じ目的を持っているというのに、協力し合っているという様子はないのだし。


「ただニルス様はルカ様を狙っていると聞きました。お気を付けください」


「ありがとう。忠告感謝する……」


 美の女神イリア様も警戒してるってことだな。


 俺の魂を欲しているという悠久の女神ニルス。できれば女神たちで話し合って欲しいところだが、生憎と彼女たちはお互いの干渉を避けているような節がある。ニルス様を天界側でどうこうできるようにはならないのだと思う。


「現状の戦力を底上げし、戦う土壌を作っていくしかない」


 もう黒山は目と鼻の先だ。


 まずは二人がどれくらい戦えるのかを見ておこうか。その上でパワーレベリングをし、新たな力を手に入れてもらうだけだ。


 世界はここにいる四人の使徒によって救われるのだと信じて。



 ◇ ◇ ◇



 俺たち四人は黒山と呼ばれる狩り場に到着していた。


 名前の由来は濛々と立ち上る黒煙らしい。火山は今も活動中であり、近付きすぎると有毒ガスを吸う危険性もあるのだとか。


「二人のレベルは幾つなんだ?」


 改めて皇国の英雄二人の実力を聞く。覚悟を決めたというのだから、それなりに強くなっているだろうと。


「わたくしはレベル26ですわ」


「あたしはレベル20です。フィオナ様に手伝ってもらったのですけれど、なかなかトドメを刺せなくて……」


 やはりフィオナはアタッカーだと思う。パワーレベリングなしに、二十を超えるなんて流石である。


 一方でミリアの方は前衛でも後衛でもない錬金術士だ。戦うスキルを覚えない彼女のレベルは上がりにくいだろうな。


「充分だ。ミリアのレベリングは俺が請け負う。フィオナとリィナがペアを組んでくれ」


「ええ? 別れて戦うのでしょうか?」


「四人で戦うと効率が悪くなってしまうだろ? 俺は適切に戦力を強化していきたいんだ」


 もはや安全とか考えている暇はない。ツーマンセルで戦い、時間を短縮していくべきだ。


 特にミリアのレベル上げは必須。リィナを治療する唯一の手段ともいえるミリアのレベルは最強スキルを覚える100に到達させなくてはならない。


「承知しましたわ。わたくしとしてはご一緒したかったのですけれど、ミリアのレベリングに最適なスキルがわたくしにはございませんので……」


「私も大丈夫です。フィオナ殿下はとても良くしてくださる。ミリアさんの強化に専念してください」


 リィナは自信満々だった。

 まあレベル40超えは近衛騎士でも到達していない高みだと思う。フライリザード程度なら、ソロでも余裕で討伐できるだろう。


「じゃあ、進むぞ。マップにある八合目で合流。何かあれば発信弾を撃ってくれ。俺は直ぐさま駆けつけるから」


 銃弾型の発信弾は実際に軍でも使用しているものだ。

 本来なら色分けにて要件を設定しておくのだが、今回は赤色の発信弾のみ。緊急の救援を求める合図に他ならない。


「リィナ、無理をするなと言いたいところだが、限界まで戦え。俺はそれを望んでいる」


「殿下、私は実をいうと思い残すことなどないのです。このあとの人生は殿下が望むがままに生きたい。どれだけ時間があるのか分かりませんが、世界を救うという最大目標に向かって頑張るだけです」


 やはりリィナは真っ直ぐな性格だな。

 俺の意図を分かった上で、行動してくれる。駄々をこねたり、泣き言を漏らすような女性ではない。


 女神曰く、一年と耐えられないという話。俺はそれが真実だと考えている。


 しかし、逆に考えれば、半年くらいなら問題ないのではないかと思う。そのような勝手な解釈はリィナに無茶を強いる理由となっていた。


 あとで後悔しないように。限界までレベルを上げて魔国との戦いに備える。


 俺はそれだけで世界が平穏を手に入れると考えていたんだ。

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