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第072話 最後の覚悟

「リィナはもう一年と生きられないから……」


 俺は愕然としていた。

 いや、あと二年あったはず。リィナ自身も二年あるとセラ様に聞いていたんだ。


「何があった? それは俺が引き起こした改変と関係のある話か?」


「ほぼ関連しないわ。あの娘が早く動いただけだもの」


 まるで分からない。セラ様が早く動けと話したから、リィナは俺との邂逅を果たしたはず。


「セラ様にも分からなかったのか?」


「最初はそうかもね。運命は二年後で固定されたと思われていたから。しかし、明確に動き出したの。ルカを基軸として、運命は足早に動いていますわ」


 やっぱ俺が原因じゃねぇか。ほぼどころか完璧に俺のせいだ。


「どうすれば元に戻る?」


「それは魔力循環不全という病気に問題があります。どうやら、あの娘は魔力を使用すると、魔管が太くなる。改変された世界の記憶によると、退魔封滅陣だけでなく回復系の魔法も多く使用したことになっています。魔管が太くなると体内の魔力圧が低下し、臓器に行き渡る量が減るみたいですの」


 マジかよ。

 魔管ってのは以前に聞いたけれど、使うたびに太くなるのなら絶望的じゃないか。


「リィナは戦えないのか……?」


 聖女の魔法が身を削っていたなんて知らなかった。


 そうとも知らず、俺はリィナに魔法を使わせていた。熟練度が上がると、効果も上昇するのだと言って。


「魔法を使わなければ、一年くらいは生きられるでしょう。しかし、今のペースで使用すれば、確実に一年と持たない」


「それは今になってから判明した話じゃねぇだろ!? お前たちは知ってたんじゃねぇのか!?」


 シエラはともかく、セラ様は知っていたのではないだろうか。最大値が二年であることしか、伝えていないのではないかと思う。


「使徒の状態なら何でも知っていますの」


 俺は呆然と顔を振っている。

 やはり、セラ様は知っていた。リィナを救おうとしている体で、実のところは世界を優先していたらしい。


「許せねぇよ、そんなの……」


「許す許さないの問題ではありませんわ。考えてもみなさい。そもそもセラの計画を破綻させたのは私ですの。ルカの命を使用し、あの娘を助ける。それが叶わなくなった今、優先すべき使徒が誰であるのかセラは分かっているのです」


 なら、やっぱ俺のせいじゃん。

 俺が生き延びることは、俺が辿るはずだった運命をそのままリィナに押し付けることだ。セラ様はリィナを上手く使うしかなかったらしい。


「あの娘はもう詰んでいるの。ディヴィニタス・アルマに期待できないし、戦う以外の価値もないからですわ」


 価値ならあるよ。少なくとも俺にとっては……。

 だけど、俺があの呪文を行使しようとしても、シエラに邪魔されてしまう。


「シエラ、俺はリィナを助けたいんだよ! 何とかしてくれ……」


「ルカがあの娘の運命を背負うと世界が滅びますのよ? それは確定的な未来。世界が滅びたのなら、あの娘もまた失われることになる」


「そこは何とかしろよ! リィナが世界を救うかもしれないだろ!?」


「無駄よ。魔王は勇者にしか倒せない。並行世界の記憶を持つルカならば分かるでしょう?」


 ま、確かに。

 魔将軍クラスならレベル次第で何とかなるだろう。しかし、魔王は勇者の力がなければダメージを与えられない。


「ルカが戦わなければ世界はあと三年で滅びます。世界は闇に呑まれ、女神は消失。エクシリア世界は神の領域から外れていくだけよ」


 この祈りはただの確認だった。けれど、俺は想像もしていない話を聞かされている。


 絶望するために祈ったわけではなかったというのに。


「なぁ、自己満足かもしれないけど、俺はあの呪文を使いたい。たとえ世界が滅びようとも、俺はリィナを助けたいんだ……」


 もう充分に理解したはずだが、俺は懇願していた。シエラは既に邪魔をすると宣言していたけれど。


 小さく顔を振るシエラ。その表情から受諾は難しいと思われる。


「私は原初の三女神。良からぬ策を講じるけれど、世界を第一に考えねばならない柱です。だから、私はルカがディヴィニタス・アルマを唱えるのなら、作用しないように細工しなければなりませんわ。私は常に監視していますの……」


 やはり無駄なことだった。シエラとて世界の柱なんだ。破滅を願うはずもない。しかし、俺は聞かされている。


「早朝以外は――」


 俺は息を呑んでいた。

 シエラはどうしてか、折れたような話を続けていたんだ。


 朝が弱いのは知っている。起きている時間は監視しているとも聞いた。しかし、それには例外があるのだと。


「良いのか……?」


 確かめておかねばならない。女神が許可したのであれば、俺を止めるものは何もなくなる。


「眠っている時間まで監視できないだけですわ。面倒なんですもの」


 やはりシエラは世界にとって悪い女神のよう。たった一人の女性を救うために、世界を天秤にかけた使徒を容認しているのだから。


「構わないのかと聞いている」


「ルカ、永遠なんて事象は存在しないの。危うさの中でバランスを取っているだけよ。私は今、未来を見ました。それは滅びの運命。世界も人も女神も等しく失われるものです。しかし、それもまた一興。世界中に悲運が降り注ぐ。さぞ面白いものが見られることでしょう」


 そっか、悪いな。

 お前だから容認されたと思うよ。他の女神様じゃこうはいかなかっただろうな。


「それにルカならば何とかできるかもしれない。そんな気もしているのですわ。悲運の青が導く先。そこへ案内してくださいな……」


 言って、シエラの身体が淡く消えていく。

 最後の最後に世界を裏切ったようなシエラだが、まだ俺に期待しているような話もしていた。


 俺は懸命に戦うだけ。最後の覚悟はもう決めたんだ……。

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