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第071話 知らされる現実

 俺とリィナは入学までの期間をレベル上げに勤しんだ。とてもハードな毎日であったが、夜の営みがあったおかげで乗り切れている。


 現在のレベルは俺が55であり、リィナが46。レベル50から上がりにくくなるのはゲームと同じらしい。それでも、騎士学校に入る前としては充分な強さを得ていた。


 旅立ちを前に俺たちはクリステラ大聖堂で祈りを捧げている。一応は女神たちの意見を聞いておこうと。


 隣り合う二人の脳裏に女神が降臨しているなんて誰にも想像できないことだろう。間違いなくリィナの脳裏にもセラ様が降臨しているはずだ。


「久しぶりね、ルカ……」


 意外な女神様の登場だった。

 現れたのはシエラ。言わずと知れた悲運の女神である。


「お前、存在してたのかよ?」


「ルカがいつも朝に祈るからでしょう? 失礼しちゃうわ……」


 女神が朝に弱いって話からして間違っているけどな。俺のせいにするんじゃない。


「ま、誰でも良かったんだがな。とりあえず俺は騎士学校に入る。異論はねぇな?」


「当然ですわ。私とて原初の三女神ですもの。世界が滅ぶなんてことは容認できません」


 まるで俺が騎士学校へ入るだけで世界が救われるように話している。

 俺だって世界救済を考えているけれど、現状は不安要素の方が多いというのに。


「なら、お前はあの呪文の使用についてどう考えている?」


 ディヴィニタス・アルマを俺に与えた張本人。せっかくなので悲運の女神シエラがどう考えているのかを知りたい。


「それはこれまでのこと? それともこれからのこと?」


「これからのことだ。お前は俺に協力する気があるのか聞きたい」


 俺がディヴィニタス・アルマを使用すれば世界が歪む。現状からの改変は辻褄が合わなくなる可能性が高いと聞いたのだ。


「言ったでしょう? 私は世界の崩壊を容認できないと。このままであれば世界は闇に呑まれる。魔神が生み出した魔王という闇は全てを呑み込もうとするわ。闇は光から生み出されるけれど、闇は何も生み出さない。女神が闇に呑み込まれるだなんて我慢ならないわ」


「世界が滅びたら、お前たちはどうなる?」


「心配してくれるの? 嬉しいわ。じゃあ、特別に教えてあげる……」


 さっさと言えよ。別に心配したわけじゃないし。

 薄い目をして見ていた俺だが、思わぬ話を聞かされてしまう。


「光が失われた時点で女神は消失する」


 えっと、マジか。

 女神と魔神の戦いって滅びるまでするものだっけ?


「いや、魔王を倒しても魔神は死なないんじゃなかったか?」


「既に聞いたはずよ? 闇は何も生み出さないと。光がある限り、闇は生み出される。その逆は存在しないのよ」


 まあ、納得の答えだ。光が生み出した闇。闇から光が生まれることなどないってことな。


「じゃあ、反対か? 知ってると思うが、最後に俺はあの呪文を唱えようと考えている」


「無駄よ。私が見てるもの。ルカがディヴィニタス・アルマを唱えたとしても、指定対象を変更するわ。あの娘の運命を背負わせはしない」


 その返答に俺は絶句していた。


 そういえば、シエラはあの呪文に介入できる。アルクのジョブだけを奪ったように、人生を丸ごと奪わないようにもできたんだ。


 同じようにリィナの悲運だけを選ぶこともできるし、悲運だけを背負わないようにもできるらしい。


「やめてくれよ……。俺は決めているんだ」


「私も一応は女神なのよ。申し訳ないけれど、ルカの話は世界を崩壊に導く。尊き青の使徒だとしても、容認できるはずがない」


「いや、世界を救ったあとのことだぞ? 俺は先に魔王を討伐しようと考えている」


 俺だって優先順位を付けている。

 世界を救ったあと、リィナも救うのだと。勇者としての使命を全うしてから、愛する人を生かすのだと。


「無駄よ……」


 ところが、シエラは許してくれないようだ。世界を救ったあとでさえ、俺はあの呪文の使用を禁じられてしまう。


 しかし、シエラの話は俺の予想と異なる。彼女は呪文の行使が無駄だと言ったのではなく、単に期間的な問題でそう言っただけであった。


「リィナはもう一年と生きられないから……」

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