第069話 強い生き方
私は朝を迎えていました。
婆や曰く、朝チュンと呼ばれるものです。
本当に私は女としての使命を果たしてしまったらしい。
「凄すぎた……」
昨夜は想像を絶する戦いだったのです。
聞いてはいましたが、苦痛というよりも幸せを感じました。私は愛する殿下に寵愛を受けたのですから。
「毎晩、求められるかもしれない……」
私の身体が持つのかどうか不安。いや、ベッドの上で死んでこそ真の女だと婆やが言っていたもの。望まれる全てを受け入れてこそ、女ってものよ。
「リィナ……?」
殿下も目覚めたみたい。
寝ぼけ眼の殿下はとても可愛らしい。凛々しいお顔も良いけれど、こんな寝ぼけた殿下も最高よね。
まだ眠そうだというのに、殿下は私の髪に触れる。それはもう優しく誘うように。
「殿下、今晩もだなんて……」
「俺、そんなこと言った!?」
急に飛び起きるルカ殿下。ああ、裸体をあまり見せつけないでくださいまし!
私、まだ目のやり場に困ってしまうのです。
「リィナ、俺は君のことを愛している。だから、無茶をするつもりはない。君の体調が良いときに少しで構わないんだ……」
「あれが少しなのですか!? だったら目一杯はどうなってしまうのですか!?」
頭がパンクしそう。もし仮に昨夜が殿下にとって、物足りない夜であったのなら。
恐ろしいわ。やはり男性は夜に豹変するのね。
まるで魔物と対峙しているような感じだった。最低でも危険度三等級はあったのに、あれ以上があるだなんて信じられないわ。
「落ち着けって。俺は……」
「落ち着いてないのは、殿下の股間ですわ!」
朝から求められるなんて……。
でも、私は既に殿下の愛人と化したのよ。いつでも如何なる時でもお求めに従うだけ。
「どうぞ……」
「いやいや、これは朝だからだよ! まあ、体調が良いなら今晩も頼めるか……?」
ほらね?
殿下は何だかんだ言って、私を求めているのよ。
大人しい魔物だって人の味を覚えたのなら、好んで人を襲うようになる。
殿下はまさに味をしめた魔物。対する私は捕食されるだけ。さしずめ私は銅級冒険者ね。食べられるために戦うしかない愛の冒険者よ。
「よろこんで。殿下のこと益々好きになりました」
私の返答に殿下は顔を赤らめています。
病弱な私を愛してくれる人。王子殿下だから、幾らでも相手を選べるというのに、敢えて私を選択した人。
「大好きです――――」
私たちの物語は明確に終わりが決まっている。
だからこそ、この一瞬を輝かせたい。片意地張る必要はなく、ただ愛されたいの。
世界にこの営みの記憶は残らないことでしょう。
私と殿下だけの記憶。だけど、それで構わない。最後の最後まで私はこの愛にしがみつきたいと思う。
「殿下、そのうち私は全てを失うでしょう。楽しかった思い出や、頑張った記憶。この命が果てる際に、全部失ってしまうの……」
大好きな人へ届くように。私の想いは運命になど左右されないのだと。
「でも、この愛だけは決して失わない」
初めての朝は私に勇気を与えていました。
前だけを向く強い生き方を。




