第067話 愛の結末
「騎士はリィナ・セラ・サンクティアに……」
俺の希望はそれだけだ。ゴツい大男なんかを付けられてたまるかっての。
「いやお前、リィナは……」
「父上、どうせお目付役でしょう? リィナは発作の頻度も高くなっていますし、皆が俺を心配するのと同じで、俺も目を離したくない」
発作が出るたびに薬を呑まなきゃいけない。
人知れず倒れたなんてことにならないように、俺の側に置いておきたいんだ。
嘆息しつつも頷く父上。どうやら俺の希望を汲んでくれるらしい。
「分かった。騎士はリィナに任せよう」
一瞬のあと、全員が拍手をしてくれる。
元より皆が俺たちの気持ちを知っているんだ。既にフィオナとは破談になったし、何の縛りもなくなった。
「陛下、私はそのような大役をお受けできません!」
ところが、一人だけ反対している。もちろん、それはリィナ本人であった。
「リィナ、お主はルカを制止するだけだ。ルカの暴走を止められる人材が他にいるか? 儂は適切な人選だと考えておる」
父上に言われてしまってはリィナも受諾するしかない。断り続ける不敬は彼女も分かっているだろうし。
「承知しました。殿下の安全を第一に考え、職務に邁進したいと存じます」
再び拍手が巻き起こる。
近衛騎士リィナ・セラ・サンクティアの誕生を全員が祝福してくれたらしい。
「さて、全員解散だ。ルカの食事が冷めてしまう。気苦労をかけたな」
父上が手を叩くや、全員が後ろ髪を引かれながらも食堂をあとにしていく。
残されたのは俺とリィナ。恐らく父上は気を利かせてくれたのかもしれない。
「殿下、本当に私で良かったのですか?」
飯を食べ始めた俺にリィナ。もう決まったことだというのに、彼女はまだ葛藤しているのかもしれない。
「脳筋ゴリラに付きまとわれるなんて嫌だからな」
「いやでも、少なからず安全だと思いますけれど……」
「くどい。俺はリィナが良い。俺の側にいろ」
父上だって誰がなっても一緒だと考えている。
部下の手前、屈強な兵士を宛がうつもりだっただけだ。俺の方が強いのは明らかなんだから。
「だけど、私は婚約者でもなくなりましたし、妙な噂が……」
「俺なんか二度も婚約破棄されてんだぞ? ちっとは慰めろ。俺は傷心の王子殿下なんだ」
回数で言うなら俺の勝ちだ。ぶっちゃけ俺は二度も婚約破棄したことで、国際的に評価を落としているだろう。
だから、何も気にする必要はない。今以上に落ちようがない評価を気にするなんて無意味だし。
「頼むから側にいてくれ。俺は今も君を愛している」
長々と続けた俺の返答にリィナは頬を染めた。
偽りない俺の本心。フィオナに魅せられはしたけれど、リィナのことは一番大切に想っている。それこそ大切にしすぎて、婚約破棄に繋がってしまったのだから。
「私も殿下を愛しています」
心に染みる返答をもらった。
やっぱ俺たちは両想いなんだ。妙な改変のせいで元婚約者というレッテルを貼られてしまったけれど、心はいつも同じ方向を向いている。心だけは通じ合っているんだ。
「あっ……」
ここで俺は思い出していた。
そういえばフィオナの胸を見て、相棒が目を覚ましたんだった。
ひょっとすると、今夜ならば俺は大人の階段を駆け上がることができるかもしれない。
「よし、ここは勢いで……」
ちょうど雰囲気も最高潮なんだ。
元婚約者同士ではあったけれど、今は共に相手がいないし、了承してもらえると信じている。
従って俺は勇気を振り絞って伝えるだけだ。
この愛の結末を迎えようと。
「リィナ、あとで俺の寝室に来てくれ……」




