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第064話 ファイアードラゴンとの戦闘

 ようやくと俺の願いが通じたらしい。フィオナを乗せた馬車が動き始めていた。


「さてと、このトカゲをどうすっかな……」


 何度も斬り付けたけれど、ダメージはしれている。決定的な手傷を負わせるのにはレベルが低すぎた。


 一瞬のあと、ファイアードラゴンが火球を吐く。

 それを喰らえば俺は天に還るはず。確実な死が待っているだけだ。しかし、簡単に失っていい命なんか持ってねぇよ。


「ブレイブシールド!」


 即座にレベル30で覚えたブレイブシールドを使用。

 光の盾は難なく火球を受け止めている。ゲームにおいて、とても使い勝手の良かったこのスキルは現実世界でも効果抜群のようだ。


「どちらも決め手がねぇな? トカゲちゃん、ここは痛み分けってことにしない?」


 問いかけるも無駄なことだった。火球を無効化されたというのに、ドラゴンは大きく咆吼している。


 まいったな。戦意は俺よりも充分らしいぜ。


「ちくしょう!」


 再び斬りかかっていく。

 せめてレベル40になれば攻撃スキルを覚えるというのに、今のレベルは36。バフ効果スキルしか俺は使えない。


「リィナがいたら勝てただろうけど……」


 やはりソロプレイは難易度が高い。しかも弱っちいものだから、ファイアードラゴンに勝てる見込みなどあるはずもなかった。


 ま、現状を嘆いても仕方ない。可能な限りに斬り付けてはドラゴンが去って行くのを待つだけだ。


 単調な攻撃だったマステルにはカウンター攻撃が有効であったけれど、巨大なファイアードラゴンに対して俺は適切な攻撃方法を持っていない。


「そういや、賢者はどうなってんだ?」


 ずっと勇者にしていたけど、俺はここで賢者の中身を見てみることに。

 シリウスは戦闘向きではなかったものの、何かしら戦う手段があるのかもしれない。


「ステータス!」


 走り回りながら、俺は賢者にジョブチェンジしてみる。恐らくは幾らか戦わなければ、今のレベルに見合ったスキルを覚えないはずだ。


「うおっ!?」


 戦闘中だからだろうか。ジョブチェンジをした瞬間に通知が流れ出す。


『スキル【戦いの狼煙】を習得しました』


 確か戦いの狼煙はその場にいる兵たちの攻撃力アップ。序盤で覚えるスキルだが効果範囲の広さと上昇率は優秀だったと思う。


『スキル【守護の陣】を習得しました』


 どうやら現状のレベル分のスキルを一度に獲得できるようだ。守護の陣はその名の通り、兵たちの守備力を上昇させるスキル。


『スキル【エリアヒール】を習得しました』


 最後は回復魔法。残念ながら、ファイアードラゴンに有効な攻撃魔法の習得には至らない。


「クソ、とりあえず使うっきゃねぇな!」


 雑兵用のスキルであるが、俺はスキルを実行。範囲スキルであるのだから、俺にも有効だろうと。


 次の瞬間、ファイアードラゴンの尾が襲い来る。ステータス画面に気を取られていた俺は明確に対処が遅れていた。


「ブレイブシールド!」


 咄嗟にブレイブシールドを使用したけれど、汎用スキルじゃない勇者の専用スキルはジョブが賢者では発動しないらしい。俺はまともにその攻撃を受けてしまう。


「ぐぁああああぁっ!!」


 やべえ。骨が折れたかもしれない。なんとか生きているけれど、身体のあちこちに激痛が迸っていた。


「エリアヒール!」


 とりあえず、回復をする。しかし、今もまだ軋むような痛みが身体中にあった。恐らく守護の陣を使用していなければ、俺は死んでいたことだろう。


「あんま効果はねぇな……」


 ヒールじゃ回復しきれない。加えて魔力は何度も使用できる量がないはずだ。動ける程度に回復したのなら、良しとするしかない。


「しっかし、あの呪文は勇者でも使えたのに……」


 よくよく考えると、あの呪文や烈火無双は女神の加護だ。つまり、それは俺に対して与えられたスキルであり、ジョブを介していない。未習得レベルで手に入れたそれは、恐らくジョブに縛られていないのだろう。


「とりま、勇者に戻さねぇと……」


 ドラゴンの様子を見ながら、ステータス画面を触る。

 ジョブをタップしようとしたけれど、慌てていた俺は賢者というジョブ名を触ってしまったらしい。


「くそ、焦っちゃ駄目だ……」


 眼前にはスキルの一覧。今はスキルの確認をしてる場合じゃないってのに。


「あれ……?」


 直ぐさまタッチし直そうとした俺だが、瞬間的に固まっていた。なぜなら確認していないスキルがまだあったからだ。


【一騎当千の鼓舞】


 思わず息を呑んでいた。

 一騎当千の鼓舞は賢者最大のスキル。どうやらシリウスは最高の加護を手に入れていたようだ。


 それは他者の攻撃能力を大幅に向上させる効果がある。自分自身には使えないけれど、攻撃力アップだけで考えると最大級のバフであった。


「俺に使えるだろうか?」


 俺は賢者であり、勇者でもある。賢者自身に効果がないとしても、勇者の攻撃能力をアップさせられはしないかと。


「やるっきゃねぇ!」


 どうせ俺しかいない。一日一回の使用制限も問題ねぇよ。

 死んだらそれまでだ。渋って天に還るくらいなら、使用して無駄だった方が良いに決まっている。


「一騎当千の鼓舞を勇者に!」


 これで駄目なら諦める。しかし、機能したのなら抗うだけ。烈火無双との合わせ技でファイアードラゴンを始末してやるんだ。


 直ぐさま俺はジョブを勇者に変更。再び火球を吐き出そうとするファイアードラゴンに向かって駆け出していた。


「ブレイブシールド!」


 まずは火球を防ぐ。接近したところで、十秒間の無双タイムが始まる。


「烈火無双ォォオオオ!!」


 再び俺の長剣が炎を纏う。この十秒に全てを懸けてやるぜ!


「無効属性とか知ったこっちゃねぇぇよ!!」


 俺はファイアードラゴンに飛びかかっている。全身全霊の一撃を脳天に喰らわせてやるからな。


「でやあぁああああっ!!」


 真紅の太刀筋。炎を上げたそれは、まるで太陽のような輝きをその軌跡に残している。


 愛剣から漏れ出す炎は宙に真円を描いていた。それはつまり途中にあった障害をものともしなかったということ。俺が繰り出した一撃は弾かれることなく振り切れていたんだ。


 手の平に残る感触は充分だった。

 着地した瞬間に頭上を見上げると、ザクリと切り開かれた頭部の隙間から太陽が見えている。


「やったのか……?」


 一瞬のあとドラゴンの体液が飛散し、まるで台風直下であるかの如く、足下にいた俺へと降り注いでいく。


 めちゃくちゃ血生臭い。けれど、降り注ぐ血の雨に俺はどうしてか笑わずにいられなくなった。


「アハハハハ!!」


 降りしきる血の雨を見上げながら、俺は大笑いしている。


 絶対に死ぬと考えていた。そもそも俺は人生で何度も死にかける悲運にある。だからこそ、おかしい。強大な竜種に代行者がソロで勝っちまうなんてさ。


「アハハハ! 俺、無双してんじゃん!!」


 血の雨が降る中で、気が触れたようにも見えたことだろう。だが、どうせ俺しかいないのだ。気が済むまで歓喜の声を上げてやるぜ。


「火を吐くトカゲなんぞ俺の敵じゃねぇよ!!」


 生きるって、やっぱ凄いことだ。

 生を望むのは、やっぱ本能なんだろう。


 俺はこの生を実感している。血の雨を浴びてクールダウンしながら、強敵を倒した事実を改めて噛み締めていた。


 存分に強がりを口にしたあと、ふと脳裏に通知が届く。


『レベル48になりました』

『スキル【セラフィックレイ】を習得しました』


 ここで俺は初めて攻撃魔法を手に入れている。


 セラフィックレイは光属性魔法。ゲームではレーザー光線のようなイメージだった。熟練すれば魔将軍にも絶大なダメージを与えることができる。


「熟練度上げにできるだけ撃っておきたい魔法だな」


 光属性は苦手属性がないため、ファイアードラゴンとのエンカウント前に覚えていたら助かったのに。


 とはいえ、悲劇的なイベントと思われた戦闘の結末はハッピーエンド。既にファイアードラゴンの御霊は天へと還ったあとなのだから。


「結果オーライだな。とりあえず城に戻るか……」


 フィオナは護衛の大半を失っていた。よって彼女が心配になるのだけど、婚約を破棄された俺が皇国に入るなんて憚られるし、追いかけることなどできなかった。


「近衛兵、しっかり守ってくれよ……」


 俺にできることは明確にここまでだ。


 帰路は彼女の側付騎士に任せるしかない。

 このあと俺はファイアードラゴンの亡骸を回収。王都クリステラへと戻っていくのだった。

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