第051話 世界線の終わりを見る
「ふつつか者ですが、末永くご寵愛くださいまし……」
どうしてそうなる!?
俺は精霊術士としての力が借りたいと話したはずなんだけど?
「えっと、ご寵愛……でしょうか?」
「わたくしを欲しておられるのでしょう? わたくしはピンときてしまいましたの。眠れる恋愛感情が叩き起こされてしまいました。美の女神イリア様の使徒として、貴方様の愛に応えるべきだと……」
完全に誤解なんだけど。
そういや俺は戦場とか前線とかアタッカーだとか省略していた。いやだけど、誤解を生むような文脈だったか?
「愛は別に……」
「わたくし、これでも皇国一の美貌だと評判ですのよ? スタイルだって見てくださいな?」
言ってフィオナはガウンを脱ぎ、ナイトウェアのボタンを二つばかり外す。
いけないと思いつつも、俺に眠る男気は目を逸らすことを許さない。リィナよりも確実に実りつつある双山に釘付けとなってしまう。
「殿下、それはおしまいください。俺は精霊術士としての力が欲しいだけ。身体まで求めていませんから……」
「ああ、身分差のことでしょうか? わたくし、お父様と話をしてきます。わたくしは自由なのでしょう? 必ずや了承を得てまいりますので、どうぞよろしくお願いいたしますわ」
フィオナはそういうと部屋を飛び出していった。
思い込みの激しさはリィナと同じかそれ以上。拗らせていた分、リィナよりもたちが悪いと思われる。
「マズいな。俺は天命を遂げる前に、リィナに虐殺されるかもしれん……」
晩餐で会った皇王陛下は気の良い人柄だった。
今までフィオナが自由を願ってこなかっただけであり、娘の願いを叶える度量はあるように感じる。寧ろ、初めて娘が願望を伝えてきたのなら、容易に応えてしまいそうな気がしてしまう。
「まっ、この世界線は続かない。仕切り直す世界線こそ、俺は頑張るべきだ」
ある意味において、俺はこの世界線の終わりを感じていた。
リィナとの蜜月だけでなく、新たに言い寄ってくるフィオナに対しても。
新しい世界線において、俺は王家の一員となるのだ。
兵団を指揮しつつ前線にて戦い、そして世界を救う。
最終的な目標はリィナを生かすことだ。
これまで何もできなかったけれど、俺は身体を合わせてくれた彼女に感謝をし、代行者として彼女の悲運を全て引き受けるだけ。よって後悔なんてものは微塵も残っていない。
「女性関係についてはもう充分だ。それよりもリィナとの生活はもう二週間くらいしか残っていない」
覚悟は決めている。
俺のことを好きだと言ったリィナを失うこと。新しい世界線で彼女の立ち位置が分からないし、俺がすべきことはシリウスの代わりとなって、前線で指揮を執ることなのだ。
「リィナのために死ぬだけだった人生。でも、今の俺は充実してるよな? 救世主になるんだ。名を残せるだけでも、生きてきた甲斐がある」
女性関係は自重すべきかもしれん。
この世界線が終わったのなら、俺は救世主として戦うだけだ。それがこの世界線のリィナに対する礼儀であり、フィオナに対しての償いでもある。
「俄然やる気が出てきたぜ。溢れる精力を全て魔国との戦いにぶつけてやる!」
俺は決意を新たにしていた。大戦に勝利を収め、世界にしばらくの安寧をもたらすこと。
相変わらず、俺の愛刀は錆び付いたままなのだし、それこそが正解なのだろう。




