第039話 役に立たない
「おい、てめぇ! この期に及んで日和ってんじゃねぇぞ!」
懸命に呼びかけるも、我が愛刀は錆び付いたままだ。
どうなってんだよ。
昨日は隣で眠るリィナに我慢できなかったというのに。
「ルカ? ひょっとして、その状態は……」
流石にリィナも理解したらしい。
この辺りは婆やの洗脳教育があってのことかも。どう考えても力ない俺の相棒は、その実力を発揮できないと見透かされている。
「私……魅力ない?」
そんな悲しそうな顔をすんなって!
俺は滅茶苦茶に興奮しているというのに、どうしてか愛剣がウンともスンともいわないんだよ!
「本当に綺麗だ。でも、美しすぎるのかもしれない。俺の相棒が耐えられる許容範囲をリィナは軽く越えてしまっているんだ。ちょっと今日は無理かも……」
力なく頭を垂れる俺をリィナは優しく撫でてくれた。
どれだけ情けないのだろう。好きな女性が待っているというのに、どうして俺は……。
「困ったわねぇ。その辺りは婆やに聞きそびれてたし」
「いや、何とかする! 毎日トライさせてくれ! リィナの美しさに慣れてきたら、俺の相棒もきっと……。たぶん恥ずかしがり屋なんだよ!」
何とか取り繕う俺にリィナは笑みを浮かべている。
ベッドに裸の男女。やることは一つしかないってのに、俺たちは何もできなかった。
「そういえば錬金術士に会うのよね? 精力剤とか錬成してもらおうよ。できるだけ早く産みたいし……」
聞いてるか、相棒?
てめぇは精力剤でドーピングしたら何とかなるってのか?
絶対に復活しろ。
これは命令だ! 二度とリィナに気を遣わせてんじゃねぇぞ、コラ!
「ピクリともしねぇ……」
「まま、出会って二日だし。もう少しゆっくりと歩みましょうか?」
「てか、リィナは全然落ち着いてるのな?」
まともに視線を向けられない俺に対し、リィナはマジマジと相棒を見ている。
度胸は女性の方があるのかもしれん。いざというとき頼りになるのは女性なのかもな。
「そりゃ、二日で三回目だし……。ずっと放り出してるもの」
そういやそうかも。俺が裸族だと勘違いするくらい俺は素っ裸だったな。
じゃあ、俺も三回くらい見たのなら、慣れてくるってことか。
「リィナ、期待しつつ気長に待ってくれ! 俺の愛は不変だ。これまでも、今も、この先の未来もリィナだけだから」
力説する俺に、ようやくリィナは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
やっぱ可愛い。誰にも渡したくない。やはり彼女は俺のものだ……。
「それでルカ、明日から旅立つことになるけど、プランはあるの?」
胸を隠しながらリィナ。俺としては、もう少し放り出してくれて構わないのだけどな。ひょっとしたら遅れて反応するかもしれんし。
「ミリアと会うのは割と厄介だ。何しろ後宮のメイドだからな。勝手に入ることなんかできないし、皇族の誰かに許可をもらう必要がある」
ゲームでも大変だった記憶がある。
特にアルクは他国の下位貴族であるし、フィオナとミリアに取り入るまで時間を要してしまうのだ。
「今回はシリウス殿下が紹介状を書いてくれるから、あとはフィオナ殿下次第だな。彼女に上手く取り入れたのなら、ミリアと会うのはそれほど困難じゃないだろう」
「取り入るってどうするのよ?」
ジト目が俺に突き刺さっている。リィナは早速と嫉妬してくれているようだ。
何だか懐かしい。実際に俺自身がプレイしたわけでもなかったのに、あの記憶を思い出してしまう。
ゲームにおいてリィナと付き合い始めたら、嫉妬の連続だったんだ。
「リィナ、俺の相棒はきっと回復するから……」
「何それ!? 私は別に求めているわけじゃ……」
嫉妬の炎を是非とも燃やし続けてくれ。
それが俺の燃料となる。その力は死火山と化した俺の相棒へと充填され、いずれ大噴火を引き起こすだろう。
「リィナ……」
「ルカ……」
俺たちは再びキスを交わす。ムード満点であったものの、結果は相変わらずだ。
相棒は深い眠りに就いたままだった。




