第034話 愛を語る
シエラの降臨が終わるや、俺は目覚めていた。
呆然としつつも、大聖堂に木霊するざわめきを聞いている。
それもそのはず、水晶には【勇者】の文字が浮かんでいたからだ。
「おおぉぉっ……。まさに勇者……」
シルヴェスタ王の声が聞こえた。
ま、その点に関しては問題視してなかったし。ジョブを勇者にしていたのなら、表示されるのは勇者に決まっているのだ。
「陛下、理解していただけましたか? ルカは間違いなく勇者なのです。私が運命を共にすることを誓った意味がお分かりでしょうか?」
「うむ。リィナが伴侶に選んだ意味、とくと見させてもらった。儂は二人の仲を取り持つことにしよう。反対する者は全員ねじ伏せてやるから安心してくれ」
「ありがとうございます。陛下のお墨付きであれば、堂々と交際できるというもの」
あれ? どうなってんの?
二人の仲を取り持つとか、堂々と交際とか……。
「仲睦まじくな。一生涯の伴侶として認める。儚き色の人生を薔薇色に染め上げるのだぞ?」
「もちろんです。私は一生涯をルカに尽くし、幸せになるつもりです!」
「儂も嬉しく思う。まさか、あのリィナに恋人ができようとは……」
えっと、俺とリィナって付き合ってるの?
まだ出会ってから二日しか経っていないんだけど?
「陛下、少しばかりお願いがございます。私とルカの夜については……」
「ああ、心配しなくてもよい。秘密にしておこう。報告するつもりはないぞ」
「感謝いたします。それなら心置きなく励むことができますわ!」
どうやら俺の知らないところで、昨晩の話が尾ヒレを付けまくっているらしい。
その原因は明らかにリィナであり、彼女は俺の弁明など少しも聞いていないのだ。加えて彼女の思い込みの強さを痛感させられる羽目になっている。
「マズい……」
ここは誤解を解消しておかねばならない。
俺は愛のない行為をしたくない。リィナが本当に俺を好きになるまで付き合わないし、関係を持つつもりはないのだと。
「王様、俺は……」
「ルカとやら、リィナをよろしく頼む。リィナは遠縁でな。ずっと不憫に思っていたのだが、其方が運命までもを受け入れてくれて感謝しておる。身分差は気にするな。儂の名において交際を認める。誰にも口出しさせぬから、堂々と付き合いなさい」
「ははは、はい、陛下! 有り難き幸せ!」
ヤバい。外堀どころか中央突破で交際させられちまった。王様ならどのような無理難題も肯定してしまうのだし。
「ルカ、愛してる。あと二年しかないけれど、私はずっと貴方の側にいるわ」
真顔で言われると頷くしかない。
てか、本当にリィナは俺のことを好きなのか? 愛してるって挨拶じゃ使わない台詞だよな。
「えっと……」
俺は選択を迫られていた。
明言されただけでなく、尚且つ身分という障害もなくなっている。
ここで逃げ出すとリィナとの関係は終わりを告げるだろう。
王様に恥を掻かせるような真似が許されるはずもなく、あとで決めますなんて逃げ口上を述べるわけにはならない。
「やっぱ運命なのか……」
この先の未来。俺は二年後にリィナを見捨てるのか、或いは彼女の運命を背負うのか。
俺たちに三年後が残されていないのは明らかであって、リィナを選んだ俺はどちらかを選択しなければならなくなる。
生きたいと願うのは嘘じゃない。けれども、俺が選ぼうとする未来はその思いを否定する。二年間もあれば骨抜きになること間違いなし。俺は最後の最後にリィナを助けるだろう。
シエラには釘を刺されていたけれど、俺は運命を受け入れることにした。
「リィナ、俺も愛している――」




