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第031話 リィナと王陛下

 私は謁見の間に呼ばれていました。


 ルカが捕まってしまったというのに、遠縁でもあるからかシルヴェスタ陛下に呼び出されていたのです。


「リィナの話は侯爵から聞いておるぞ。病状の方はどうだ?」


 暢気なものです。私は王子たちと又従兄弟になるのですけれど、割と親身になってくれるので陛下のことは好きだったりします。


 だけど、今はそんな場合じゃないの。ルカを捕まえちゃうってどういうことなの?


「陛下、ご機嫌麗しゅう。私は元気ですわ。でも、それより私の相方が捕らえられてしまったのです。勇者を騙ったとかで……」


「むぅ、聞いておる。何でもルカ・シエラ・アルフィスの名を騙ったそうだな?」


「いや、捕まった彼こそがルカ・シエラ・アルフィスですから!」


 不敬も考えず、私は訴えています。捕らえられた者こそが本物の勇者なのだと。


「ルカという勇者には既に会ったぞ? 身分証も持っておったが?」


「違うのです! ルカは王都に着いた折り、悪漢に襲われ身ぐるみ剥がされてしまったのです。それはもうスッポンポ……いえ、肌着すらない状態でして……」


 説明って難しいわ。特に彼はブラブラさせてたし。どこまで話すべきなの?


「勇者だというのに、悪漢に負けたのか?」


「それには事情がありまして。普通ならば負けません。何しろルカは昨日王都を襲ったフライリザードを私の目の前で倒したのですから」


「おお、その話なら知っておるぞ! 何でも真っ二つになって焼かれていたと報告を受けておる!」


「それこそがルカの仕業です。ルカは勇者であり、炎の使い手ですから。包丁一本でフライリザードを一刀両断にしてしまったのですよ」


「包丁で仕留めただとぅ!?」


 何だか武勇伝を語るのって楽しい。まるで私が倒したみたい。

 べべ、別に彼氏が褒められるのが嬉しいとか、そういうのじゃないし。


 てか、まだ正式にお付き合いはしていないの。婆やが言うところの、一夜を共にしただけのワンナイトラバーズなのよ。


「ふぅむ、衛兵が駆け付けたときには誰もいなかったと聞いた。しかし、その様子を見た住人たちは神がかった強さの裸人だと話していたな……」


 ごめんなさい、ルカ。残念だけど、この話は否定できない。


 的を射すぎているもの。貴方はプランプランのスッポンポンだったでしょ?


「陛下、それがルカです。私も見まし……ていませんわ。何も見ていませんが、彼は一糸纏わぬ姿をしておりました。勇者の力まで余すことなく見まし……ていませんわ」


「なるほどの。承知した。ならばルカとやらを教会へ連れて行こう。それで構わないな?」


「お願い致しますわ。ルカは必ずや人類のためになると申し上げておきます」


 それで充分です。

 調べてもらえたら分かること。ルカこそが勇者だもの。色々と知っていたりしたのは祝福の儀で女神様と会話したからに違いないし。


 早速とルカを牢獄から連れてくるようにと指示を出してくれます。これにて一安心といったところで、シルヴェスタ陛下が雑談を始めました。


「それでリィナよ、其方はルカを名で読んでおるが、そういった仲ということでよいのか?」


 そういえば、私はやらかしていたみたい。

 少しばかり熱くなりすぎていたのかもしれないわ。


 だけど、それも否定できないの。既に私は大人への階段を駆け上がったあとだから。


「陛下、ふしだらな娘とお笑いください。私は昨晩、ルカとベッドを共にしてしまいました。できればお父様たちには内緒にしていただけますと……」


「おお、そうであったか! 儂は嬉しく思うぞ。病に苦しむリィナが幸せを掴むこと。結婚まで待てなかったのは理解できる。その相手が勇者のジョブを持つ者ならば、悪くない選択じゃないか!」


 お優しい言葉をいただきました。

 てっきり叱責されるのかと思いきや、私の運命を知る陛下はルカとの仲を認めてくださったみたい。


「ルカとは相思相愛であり、彼との出会いは運命です。だから前を向いていける。私はもう儚い人生だとは思いません」


 決意を述べたところで大扉が開く。どうやらルカが牢獄から連れられて来たようです。儚いだけの人生から私を救ってくれた彼が……。


「む? 勇者はパンツすら穿いていないのか?」


「そこは【儚い】じゃなく穿いてぇぇっ!!」


 そういえば裸族の出身だったわ。

 穿かない人生を送る一族。否定していたけれど、きっと裸族よ。でも、私がちゃんと文明人にしてあげるわ。


「其方がルカ・シエラ・アルフィスか?」


 シルヴェスタ陛下が聞いた。

 頷くルカ。せっかく服を買ってあげたのに、どうして裸に戻ってんのよ?


「陛下、初めまして。身分証を失っていたため、牢獄に捕らえられておりました」


「リィナに感謝することだ。リィナがいなければ、そのまま罰せられていただろう。よいか? 決してリィナを泣かせるような真似はするな。これは王としての命令だ……」


「承知しております。俺もそのつもりですから。それで釈放されるのですよね?」


「教会で確認してからだ。儂は既にジョブ【勇者】を得たという若者に金貨百枚を手渡しておる。容易に信用できないのだ」


 ま、問題はないでしょう。

 全員が納得しているみたいだし、そもそもジョブは勇者で決まってるの。

 私の幸運が巡り合わせた彼はルカ・シエラ・アルフィスで間違いないのだから。


 全員が謁見の間を出て行く。陛下まで付き添われるだなんて思わなかったけど。


 だけど、問題はそこじゃないの。

 私は肝心なことを全員が忘れていることに声を上げるしかありません。


「ルカにパンツをお与えくださいまし!!」

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