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第023話 その理由は……

「俺にも価値があるといいな……」


 この人は何を絶望しているのだろう。

 彼の返答に私はそんな疑念を抱いている。


「貴方は勇者よ? 疑問の余地なんかないと思うけれど?」


「弟のジョブだ。もしも俺に価値があるのなら、それは弟から奪った価値だ」


 それは言い返せないな。

 確かにその通りだもの。彼が語ったように、元々の彼は役に立たなかったのかもしれない。


「でも貴方は悲運の女神と武運の女神に愛されている。過程はともかく、価値がないなんて思えない」


「たとえ偽物の価値であったとしても、俺だって生きたいと願っている。だからこそ、君に会いたくなかった。君の幸運に抗えず出会ってしまったけど、ここは見逃して欲しいと思うよ」


 見逃すとか、まるで私が敵みたいじゃない?

 てか、彼には目的があるのかしら?


「私と別れてどうするつもりなの? 使命は同じでしょ? 魔国の侵略から人類を守ること……」


「君と行動を共にすれば、俺は君に感情移入し同じ道を辿るだろう。そしたら、この世界線でも俺は男女交際すら知らないままに死んでしまう。自分の事ながら流石に不憫でな。女神様にもその話をしている」


 え? 彼の心残りってそういうの?


 いや、男の子は総じてそういうことが好きなのは婆やに聞いていたけれど、ルカもその口だっていうつもり?


「信じらんない。勇者になってまで、そういうこと考えるんだ?」


「だから、ここは見逃して欲しい。でも、美の女神の使徒に会ったあと、俺は再び君の前に現れる。それは約束するから」


「美の女神の使徒? 知ってる人なの?」


 また異世界線とやらの話に繋がるのでしょう。

 ルカは何でも知っているのね。私だけでなく、この世界のことを。


「異世界線で会っている。今のところ、俺の心残りを解消してくれるのは美の女神の使徒しかいないそうだ」


「それって、もしかして女性……?」


 意図せず口先が尖る。

 別に嫉妬したわけじゃない。だけど、たった今、私のことを好きだって言った。その女性で心残りを解消って馬鹿にしてない?


「フィオナという精霊術士なんだ。シエラ曰く、簡単にヤれるって……」


 流石にバツの悪そうな顔をしています。

 まあ、当然よね? 私は気が多い男性とか好きじゃないのよ。


「私のこと、そんなに好きじゃなかったのね?」


「俺は最初から最後までリィナが好きだった。ただ君と一緒にいると……」


「たく、どうしようもないわね? 私は貴方より上位の貴族だけど三女だし、そこまで身分を気にしないわ。運命ではあと二年。必死で口説いてみたらどう?」


 これが私の譲歩案だ。

 間違っても嫉妬じゃない。彼を取られると思ったわけじゃないからね?


「俺がリィナを口説くとか考えたこともなかった……」


「呆れるわね? しっかりしてよ。セラ様に話を聞いてから、私は貴方のことが気になっていたのに……」


「俺のことが気になっていたのか?」


「二度と言わないから、よく聞きなさい」


 長く生きられるとは思っていなかった。だから私もルカと同じよ。


 素敵な人が現れることなく、この世を去って行く。本で読むような美しい恋物語を知ることなく死ぬの。やっぱ、それって寂しいことよ。婆やの話だけでなく、本当の愛を知ってから私は死にたかった。


「真実の愛があるのなら、私は応える用意がある」


 恥ずかしがっていたら、お堅い感じになってしまった。しかも何だか命令口調だし。


 だけど、それは私の本心。セラ様に話を聞いてから、私は貴方のことが気になっていた。恋を夢見る乙女のように、貴方が現れることを待っていたの。


「俺がリィナと……?」


 ちょっと、顔を赤くしないでったら! 私まで恥ずかしくなるじゃないのよ。


 ルカは真っ直ぐに私の目を見つめながら続けるのでした。


「分かった。俺はこの人生の全てを懸けてリィナを口説くよ……」


 私は息を呑んでいます。

 それって告白と考えて良いの? 人生の全てを懸けるって、そういうことでしょ?


 処理能力オーバーにて煙を上げつつある私の思考は、彼の言葉を整理できずに中途半端な返答を選択してしまう。


「あわわ、私は別にその無理にとは……」


 私ってば何言ってんだろ。


 素直にお願いしますといえば、私にも彼氏ができたかもしれないのに。余命幾ばくもない私のことを好きになってくれる人が他にいるはずもなかったというのに。


「いやでも、彼氏なら……」


 一瞬のあと、私は平静を取り戻していた。


 そういえば言っておきたいことがあるわ。無条件で貴方の愛を受け入れると決めたわけじゃないの。


「どうして素っ裸なのよ?」


 ホントそれだけ。私が気になるのはそこだけよ。いやでも、気になるといっても、ぶらぶらしてるものが気になっているわけじゃなくて……。


「あわっ、そうだった!」


 問いかけた私の話に、彼は大きな声を上げた。


 どうやら、素っ裸であったのは意図したものではないみたいね。湯浴みでもしていたのかしら?


「腰布を巻いていたんだけど、駆け付けたときに飛んでいってしまったらしい」


「腰布? 湯浴みしてたのね?」


「いや、腰布は普段着だ……」


 えっと、前言撤回します。

 普段着って何? 南部の貴族が裸族だなんて初めて聞いたけど。


「服……着ないの?」


「いや、元々は着てたんだ。割と立派なのを。でも、暴漢に襲われて身ぐるみ剥がされたんだよ……」


「暴漢? あんなに強いのに信じられないわ。きっと趣味で裸なんでしょ? 気にするけど気にしないから正直に話して!」


 普段から裸族ならば私の王子様は失格。文明人であることが最低条件だわ。


「本当だって。王都に来た初日でさ。俺は意図せず神職者のジョブを奪ってしまって、それを勇者に戻すのを忘れてたんだ。だから、長剣が使いこなせず、良いようにやられてしまった」


 ああ、ジョブによって力の強さって変わるらしいからね。神職者なら納得かもしれない。


「じゃあ、服……着てくれるの?」


 私は何を質問しているのだろう。

 恋人に願うように上目遣いまでして。しかも、それは恋人に聞くような内容じゃないわ。


「俺だって服が着たいさ。だけど、お金がない……」


「それくらい買ってあげる。とりあえず、私の外套でも……」


 アイテムボックスから外套を取り出す。流石に真っ裸の男性と買い物とか誤解されかねないし。


 早速とルカは羽織ってくれる。

 これでとりあえずは安心ね。彼が露出狂でも裸族でもないのなら。


 まあでも、彼は直接羽織ってるのよね。私の外套を……。


 それって何となく恥ずかしいわ……。

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